新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会環境の悪化によって、自殺者の増加や生活窮乏などの問題が深刻さを増している。政府は坂本哲志・1億総活躍担当相に「孤独・孤立」対策の担当を兼務させ、内閣官房に担当室も新設。各省庁職員らによる横断的な取り組みをスタートさせた。
状況が悪化する中、縦割り行政ではなく、政府一体で対策を推進する姿勢は評価できる。だが、ようやく本腰を入れ始めた感は否めず、具体策も2022年度予算案に盛り込むことを念頭に検討している。これ以上困難に直面した人をなくすためには、一日も早く実効性のある政策に着手すべきだ。
警察庁によると、20年の自殺者は2万1077人。前年より908人増えた。年々減り続けていたが、前年を上回るのは09年以来だ。男性が11年連続で減少した半面、女性は増加に転じ、7025人と過去5年で最多だった。熊本県内の自殺者も前年より多い296人だった。
自殺の背景の一つに、雇用の不安定さが増していることが挙げられる。厚生労働省の調べでは、20年の有効求人倍率は前年比0・42ポイント減の1・18倍で、1975年以来45年ぶりの大きな下げ幅だった。企業の先行き懸念が強まり、求人を大きく縮小したことなどが影響した。
このため、毎年増え続け2千万人を超えていた非正規労働者が昨年減少に転じた。特に女性が深刻で、1月の労働力調査によると非正規の女性は前年同月比68万人減の1407万人。減少幅は男性の3倍超で、休業者数も136万人と男性の1・3倍に当たる。内閣府の有識者研究会が「女性不況の様相」と指摘するほどである。
企業業績が悪化する中で、正社員数はほぼ変動していないため、非正規労働者が雇用の調整弁になっているとみられる。休業や失業で家に閉じこもったり、収入の落ち込みで追い詰められたりすれば、孤立につながりかねない。年度末に人員整理に踏み切る企業も予想され、解雇や雇い止めはさらに増える恐れがある。
このほかドメスティックバイオレンス(DV)や、ひとり親の困窮も深刻で、児童虐待につながる可能性もあるため看過できない状況だ。親の失業やアルバイト先の閉店などによって経済的苦境に陥った学生も県内をはじめ全国で増えている。1月に熊本市で行われた食料配布会には370人が列をなした。コロナ禍で顕在化した問題は互いに関連している点も少なくなく、既存の政策を見直した上で、抜本的かつ包括的な対策につなげてもらいたい。
政府は、野党の提案を丸のみする形で対策に乗り出した。秋までに実施される衆院選に向けて争点をつぶし、看板政策にしようとの思惑が透けて見える。国民の反発を招いた首相の「公助の前に自助」発言の影響を払拭[ふっしょく]したいとの思いもあるだろう。しかし、まずは国民の痛切な声に耳を傾けることが先決である。
からの記事と詳細 ( 孤独・孤立対策 早期に実効性ある政策を | 熊本日日新聞社 - 熊本日日新聞 )
https://ift.tt/3bnleUj
No comments:
Post a Comment