「ホイス」という酒の割り材がある。焼酎を炭酸水と合わせて割る琥珀(こはく)色の飲料だが、小売りされておらず、大衆酒場など一部でしか口にできないため、「幻の酒」と名高い。レシピは一子相伝で作り手は1人のみ。終戦後、「飲食店を元気にするために作った」という創始者の思いを継ぎ、ひっそりと作られている。酒場でしか飲めない謎多き「ホイス」。その秘密に迫った。(永井大輔)
ホイスが生み出されるのは、東京・白金にある「後藤商店」。同社の代表、後藤竜馬さん(40)が祖父の代からレシピを継承し、3代目として幻の味を調合している。
「調合室で私1人が作っています。レシピも部屋の中も全て企業秘密です」と後藤さん。仕込みタンクは2つだけで、多くても1日約720リットルの製造が限界。このため、古くから付き合いのある飲食店など、限られた取引先にしか販売していない。
後藤さんいわく、ホイスの味は「例えようのない味」だ。「癖が強い」「癖がない」「甘い」「すっきりしている」…。飲み手によって千差万別の感想が後藤さんの耳に届く。
口に含んでみると、確かに形容しがたい。薬草、かんきつ系の風味…。カラッとしたジンジャーエールのような味がすると思えば、梅酒のような風味ものぞく。
後藤さんは「原料は企業秘密ですが、数十種類の材料を合わせており、ホイスの味は例えようがないんです。『ホイス味』というのが適切ですね」と笑う。
推奨される割り方は「ホイス2:焼酎3:炭酸水5」。そんな黄金比で作られ、炭酸がはじける琥珀色のグラスには、幻と呼ぶにふさわしい風格すら漂う。
ただ、材料は企業秘密の上、小売りもされていない。後藤さんは「インターネットで何でも買える時代だからこそ、自分の足で飲める店を探す楽しみ、飲んで素材を想像する楽しみを味わってほしい」と話す。
そんなホイスは昭和24年、後藤さんの祖父、武夫さんの「飲食店を元気にしたい」という思いから生まれた。
終戦後、焼け野原となった東京。物資が乏しく、酒も粗悪品で味の悪いものばかり。飲食店から少しでも活力を生み出すために武夫さんは「割り材でおいしいお酒にしよう」と考えた。
戦前から酒屋を営み、海外も訪れていた武夫さんは、ヨーロッパで飲んだ洋酒を参考に、当時の日本では普及していなかったハイボールに似た味を求めてホイスを作った。
後藤さんは「ウイスキー(whisky)からホイスと名付けたんでしょう」と由来を説明する。
誕生から半世紀以上たつホイス。今では全国の飲食店に広がっているが、少量生産のため、出回る数は限られる。後藤さんは昔からの取引先を大切にしており、新規の取引は断ることもしばしばだ。
そのため過度な宣伝は控え、取材も断ってきた。今回、応じたのは「新型コロナウイルスという未曽有の危機に苦しむ飲食店を助けたい」という思いからだ。
後藤さんは「昔から助け合ってきた飲食店の売り上げ向上に、ホイスのPRが少しでも役立ってくれればうれしい」と力を込める。祖父の代から続く「飲食店の元気のため」という信条は健在だ。
個人への小売りは徹底して行っていないため、「家飲み」はできない。新型コロナの影響で落ち込む飲食店を思い、感染対策を徹底して、幻の酒を探しに街に出てはいかがだろう。
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