リストラが吹き荒れた2019年、続く2020年代は「脱会社化」が進みそうだ。
撮影:今村拓馬
富士通、東芝、アステラス製薬にキリンビール ——。かつては「この会社に入れば生涯安定」と言われたような大企業で、2019年は早期退職募集のニュースが相次いだ。生涯1社に勤めるような日本型雇用は、大手であっても崩壊しつつある今、2020年代は会社と個人の新たな関係に注目が集まりそうだ。
副業禁止とは真逆の「専業禁止」、社員を辞めても会社で働くなど、新しい「会社」をめぐる動きはすでに起きている。「脱会社時代」を予感させる、3つのケースをみてみよう。
専業禁止!会社にいるだけでは身につかないこと
専業禁止の結果、エンファクトリー社員が始めたパグの洋服ビジネス。
提供:エンファクトリー
「会社の仕事だけする専業禁止、いつでも他の仕事もしていい会社だと社員に宣言しています」
そう話すのはIT企業エンファクトリーの加藤健太社長。オンラインショッピングや専門家マッチングサービスを手がける同社には35人の社員がいるが、2011年の創業時から「専業禁止‼︎」を掲げている。
副業をしないと絶対にダメということではもちろんなく、積極的に副業を推進するというスタンスだ。現在、社員の2人に1人はエンファクトリー以外の仕事をしている。専業禁止を掲げる理由を加藤社長自ら、こう説明する。
「企業が終身雇用を維持できない社会になり、生涯学び続けることが大事です。実際、ずっと同じ仕事ばかりだと行き詰まっていく。大きな変化の中で生きる力は、会社にいるだけでは身につかない」
エンファクトリーは定時のない裁量労働制もしくはコアタイムなしのフレックス制。成果が出ていれば何時に仕事を始めても終えても自由だ。その中で各社員が、時間を捻出して「複業」をしているという。
「複業」の内容は実にさまざまで、ハリネズミカフェの経営にパグの洋服の製造販売、ミンダナオ島でコーヒー事業 ——。
「ミニ経営者としての感覚が養われ、プロ意識の高い人材を会社は得ることができています」(加藤社長)
複業するのにたった一つのルールとは
エンファクトリーの加藤健太社長。「専業禁止」による副業の推奨には、人的関係資産をつくる目的がある。
撮影:滝川麻衣子
複数の調査結果から、日本企業の6〜7割程度は副業を禁止している。その理由は「過重労働になるのでは」と、社員の負担を気にしたものも多い。この点について加藤社長は、こういう。
「自分で工夫して仕事をするようになるので、複業している人の残業はむしろ減る傾向で、成果も出ています」
ちなみにエンファクトリーでは、社員が複業するにあたり、一つだけルールを設けている。それは「複業の内容やそこで得たことを会社にオープンにすること」。半年に一度、社員が複業の様子を社内で発表するイベントを開催し、複業で得たノウハウや気づきを会社で共有する場にしているという。
ただし、複業が本業になり、結果的に会社を辞める人ももちろんいる。このことについても同社は極めてオープンだ。
「会社を辞める人の半分は独立です。それでも中の人ではなくなるだけで、会社の外に人的関連資産が増えていくという感覚」
そう話す加藤社長がみる、これからの会社の形はこうだ。
「会社はやがて、独立した個人がチームで働く、フリーランサーならぬチームランサーの集合体になる」(エンファクトリー加藤社長)
希望する社員は個人事業主として独立
撮影:今村拓馬
「社員が個人事業主として独立するのを支援します」
こんな制度を2017年に打ち出して話題を呼んだのは、健康器具メーカーのタニタだ。同社は、谷田千里社長自らの発案で、希望する社員はいったん退職をして、個人事業主になり、業務委託で会社の仕事を請け負うことができる。
社員時代の給与・賞与をベースに基本報酬を決められ、会社員時代の福利厚生や交通費、社会保険料も含んだものを受け取ることができる。当然、働き方は大きく変わる。主なポイントをみてみよう。
- 社員ではないので就業時間がない
- 基本業務以外の仕事は「追加業務」として受注するので報酬に上乗せされる
- タニタ以外の仕事を請け負うのも自由
- 確定申告にはサポートを用意
「社員」ではなく独立した個人として、タニタの仕事に関わる形だ。タニタによると、現在、社員1200人中17人が個人事業主化している。30代から60代まで年代はさまざまだ。平均収入は、取り組み初年度から独立した社員で、独立前から28.6%増加しているそう。
タニタ広報担当者は、「個人事業主化」の目的をこう話す。
「 (会社員だと)仮に会社の業績が悪化して賞与や給与を下げたりしなければならない状況になると、家族を守るために退職や転職が起こり得る。良い人材が会社が流出してしまうリスクがあります。 また、働き手がその能力を発揮するためには、やる気の出る仕掛けが必要です 」
その対策が「個人事業主化」というワケだ。新卒採用でも起業家マインドを持った人を採用するといい、この流れが加速する見通しだ。タニタから見えてくる、今後の個人と会社の関係はこうだ。
「会社が個人を抱え込むのではなく、会社と個人が雇用とは違う別の契約の下で、信頼関係を構築していく。 長くタニタの仕事を続けてもらえる関係性を築けると考えています 」(タニタ)
社員でも出資でもつながる形態なんでもいい
ガイアックス採用マネージャーの流拓巳さん。ガイアックスは「採用」も個人に合わせてカスタマイズしている。
撮影:滝川麻衣子
「働ける時間やカルチャー的なことも含めて、この人は正社員が合うな、と思えば正社員。カルチャーが合わないがスキルは欲しいと言うケースは、例えば業務委託。起業向きだな、となれば会社から出資することもあります」
そう話すのは、ソーシャルメディアやシェアリングエコノミーサービスを提供するIT企業、ガイアックス採用マネージャーの流(ながれ)拓巳さんだ。
同社は新卒や中途といった区分を設けずに、通年採用をしている。その「採用」ですら、希望や適性に応じて、フルタイムだったり週2〜3日勤務だったり業務委託で複業だったり、そもそも「正社員」がデフォルトですらない。
“社員”の通常業務以外の能力や稼働には、対価が支払われる意識が強いのも特徴だ。
「例えば、会社のイベントで機材の得意な社員が『副業』として出向くなど、他部署の仕事をする時は『副業』扱いとなり報酬を支払っています」(広報担当者)
その結果、ガイアックスは退職後の社員(新卒採用)のうち6割が起業する「起業家輩出企業」としても知られる。「生涯1社」のつもりで滅私奉公するスタイルとはほど遠いタイプの社員が育っているのは間違いない。
こうした柔軟な「採用」が目指すものは何か。
「将来的に、企業と働き手の関係として描いているのは、ガイアックスに関わる人たちのコミュニティーのような人材のプール(蓄え)ができるイメージです」(ガイアックス)
2019年はリストラ時代の始まりだった?
GettyImages
専業禁止、個人事業主として会社の仕事をする、雇用形態は希望と適正に応じてさまざま ——。
ここまでみてきた3つのケースは、自由で多様な働き方に見える一方で、 決して生易しいものではない。複数の仕事のタイムマネジメントや、成果がなければ仕事を失うリスクも伴うなど、働き手にも厳しい「自律」が求められる。定年まで働くことを前提に、年功序列で昇給していく組織に比べ、社員は自分自身の仕事の仕方やキャリアと否が応でも向き合うことになる。
「だったら自分はこれまでどおりの日本型雇用でいいや」
そう思う人も少なくないかもしれない。しかしその「これまで通り」すら、もはや簡単ではない。
業績堅調な企業も始まるリストラ
東京商工リサーチの調査では、2019年1〜9月に希望早期退職者を募集した上場企業は27社。対象人数は1万342人と、6年ぶりに1万人を超えた。
リストラの嵐はリーマン・ショック直後の2009年など、過去にもっと大きく吹き荒れたこともある。しかし、調査では2019年の特徴として「アステラス製薬やカシオ計算機、キリンホールディングスなど業績が堅調な企業が先を見据えた『先行型』の募集も目立つ」と分析する。
2019年は業績好調の中でも人員削減に踏み切るなど、組織が新陳代謝を求め、終身雇用に年功序列といった従来の日本型雇用を抜け出そうとしている様子が、浮き彫りになった。
2020年代が幕を開けた。経済が低迷期に入りこんだ2000年代、日本型雇用が大きく揺らいだ2010年代。そして次の10年は、いよいよ企業と個人の新たな関係性を、個人も会社も、それぞれが模索する時代となりそうだ。
(文・滝川麻衣子)
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January 02, 2020 at 06:15AM
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