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Tuesday, June 23, 2020

「法制度」の観点から考える、電力のレジリエンス ①法改正の狙いと意味 - 経済産業省

再生可能エネルギー資源や燃料を基にして電気をつくり、家やオフィス、工場などへと届ける電力インフラ・システムは、私たちの日常や仕事の基盤を支える、とても大事なものです。しかし、近年増加している自然災害によって被災し、電力の供給がおびやかされるケースが発生しています。そこで今、電力インフラ・システムを強靱にすること(電力レジリエンス)が重要となっています。これを法制度の面でも促進しようと、2020年6月に国会で可決・成立したのが、「エネルギー供給強靱化法」です。このシリーズでは、法改正の狙いと、各法制度のポイントを紹介しましょう。

電気の供給体制を強く持続的なものにする「エネルギー供給強靱化法」

「エネルギー供給強靱化法」とは、正式名称を「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」と言います。

「電気事業法等」とあるように、電気事業などに関するルールをさだめた「電気事業法」と呼ばれる法律のほか、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ特措法)」と「独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法(JOGMEC法)」の改正も含まれています。

現行の再エネ特措法は、再エネで発電された電気をあらかじめ決められた価格で買い取るよう、電力会社に義務付ける、いわゆる「固定価格買取制度(FIT)」をさだめた法律であることから、「FIT法」とも呼ばれています(「FIT法改正で私たちの生活はどうなる?」参照)。JOGMEC法とは、海外における資源開発をになう独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)について、その役割や事業内容をさだめた法律です。

これら3つの法律をいちどに改正することになった背景には、日本の電力インフラ・システムが直面している、以下のような3つの大きな課題がありました。

日本の電力インフラ・システムが抱える3つの課題

自然災害の頻発

近年、自然災害は甚大化しており、被災の範囲も広域化しています。中でも電力インフラ・システムが被災し大きな影響が生じたものとしては、2018年の北海道胆振東部地震をきっかけに発生した北海道全域の停電(ブラックアウト)、2019年の台風15号・台風19号によって起こった長期間の停電があげられます。

写真

実際の被害の写真。なぎ倒された電柱(左)、電柱にかぶさる倒壊した家屋(右)

今後も大きな自然災害が発生する恐れがあることを考えると、災害に強い電力インフラ・システムを早急に構築することが求められます。

再エネの主力電源化に向けた課題

太陽光発電や風力発電などの再エネは、2018年に発表となった、日本のエネルギー政策の指針「第5次エネルギー基本計画」において、「主力電源化をめざす」ことが打ち出されました。

再エネは、CO2削減だけでなく、エネルギー自給率の向上、さらには分散型エネルギーシステムの拡大にも役立ちます。ここでいう分散型エネルギーシステムとは、電源(電気をつくる方法)が分散して設置され連携している状態で、災害に強いと考えられています。そのため、強靱な電気の供給体制をつくるには、再エネの導入拡大も重要と考えられます。

しかし、日本における再エネは、「低コスト化」「電力市場への統合」「事業規律」「電力系統」「発電量の不安定さ」という課題を抱えています。

①低コスト化
FIT制度による再エネ電気の買取費用の一部は、再エネ賦課金として電気料金を通じて国民が広く負担しています。しかし再エネの発電コストはまだまだ高く、この高コストのままでは、国民負担は想定より増えてしまうおそれがあります。そのため、できるだけ早く低コスト化することが求められます。

②電力市場への統合
電力システムでは、需要と供給が常に一致していないと不安定となり、究極的には停電してしまいます。このため、発電事業者には、需給の状況を反映した電力市場の動向にあわせて、必要な電力を供給することが期待されます。

一方、FIT制度は「再エネの発電量を増やす」ことに重点を置く制度であるために、需給の状況を反映した電力市場の動向がどのようになっているかに関わらず、再エネで発電した電気は固定価格で電力会社が買い取るという構図になっていました。今後再エネが主力電源となっていくためには、ほかの電源と同じように需給に応じた発電をおこなうことにより、電力市場への統合をはかっていくことが求められています。

電力の需要と供給(需要>供給となった時)
需要>供給となり、電力需給バランスが崩れたときのようすを天秤を使った絵で示しています。需給バランスが壊れると、大停電の可能性もあります

(出典)電力需給緊急対策本部(平成23年3月25日)の参考資料を元に資源エネルギー庁が作成

大きい画像で見る

③事業規律
さまざまな地域に設置される再エネ発電設備には、安全を確保し、地域との共生をはかることが求められます。たとえば、事業終了後の発電設備の適切な廃棄や、自然災害によって被災した発電設備が事故を起こすリスクについても、対策をうっておくことが求められます。

④電力系統
電力系統に余裕がないことで、再エネでつくった電気を電線につないで流すことができない「系統制約」が生じています。これを解決するためには、送電網を効率よく使うことや、増強することなどが必要となります。

⑤発電量の不安定さ
再エネは自然のエネルギーであり、発電量が不安定になります。もし、発電しすぎて余った電気を不足している地域へと送電するといった、広域的な電力調達ができれば、発電量の調整に役立つでしょう。それには、地域間をつなぐ送電網(地域間連系線)の増強が必要です。

地政学的リスクの変化

「地政学的リスク」とは、地理的な位置関係によって起こる政治や社会のリスクのことです。

石油などの資源にとぼしい日本は、エネルギーを海外からの輸入に頼っています。中でも石油は、中東諸国からの輸入が高い率を占めています。しかし、中東情勢は刻々と変化しており、地政学的リスクも高まっています。2019年6月には、中東のホルムズ海峡近くのオマーン湾で、日本関係船舶などが攻撃される事件が起こりました。

日本の原油輸入先の割合を円グラフで示しています。主な順にサウジアラビアが38.6%、続いてアラブ首長国連邦が25.4%、カタールが7.9%です。

一方で、世界のエネルギー事情はいま大きく変わりつつあります。中国を始めとする新興国のエネルギー利用は、経済成長とともに増加しています。また、エネルギーの供給国についても、2000年代後半の「シェール革命」以降、米国が世界最大の産油国になるなど、大きな変化が起こっています。世界におけるエネルギー需要と供給の構造が、以前とは異なってきているのです。

こうした地政学的リスクは、電気の燃料となるエネルギー資源の供給網に影響を与えるため、このような変化を織り込みながら、供給網の強靱化に取り組む必要があります。

3つの法を改正して電力の課題を解決する

こうした背景を考え合わせると、強靱でかつ持続可能な電気の供給体制をつくるためには、電気事業に関連する法律、再エネに関連する法律、資源開発に関連する法律の3つの改正が必要だったことがわかります。次回からは、それぞれの法制度について、改正のポイントと目的などをご紹介しましょう。

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