“フランス最大の知性”ともよばれる歴史人口学者エマニュエル・トッド氏は、日本における「能力主義」は他国とその性質が異なると指摘する。その理由とは?トッド氏の最新刊『大分断 教育がもたらす新たな階級化社会』(訳:大野 舞)から一部を抜粋して紹介する。 【この記事の画像を見る】 ● 日本における「能力主義」 他国と異なる特徴とは? アメリカやフランスのような平等主義の社会では、能力主義は平等という理想の歪んだ形として表出してしまいました。最初は、誰もが学業をするべきで、教育は皆のものだと言われました。しかし、マイケル・ヤングが気づいたのは、大衆層の中の優秀な人たちが進学すると、社会は再び階級化するだろうということでした。そして上層には、上層にいると考える人たちによって新たなグループが形成されるのです。 フランスなどでは能力主義のコンセプトは常にポジティブに評価されてきました。人々は、能力主義は民主主義から生まれたものだと捉えているのです。多くの人は、これが実は教育の民主化の悲惨な二次的影響であり、結局は自己破壊に陥ってしまうものであることを理解していません。この民主化プロセスは最終段階(100%の人が高等教育を受ける段階)まで行き着けないものなのですから。 戦後の日本においてもこの能力主義という考え方は非常に根強かったのではないでしょうか。ただ、日本の特殊な点は、直系家族構造における不平等を受け入れる価値観と、江戸時代の非常に特殊なヒエラルキーの考え方、この二つをベースにしながら、それと同時に能力主義の考え方があったという点です。一方でフランスでは、能力主義とは人類の平等と強く結びついた観念であることを先ほど述べました。この違いがあるため、二つの国の結果は異なるのです。
基本的に直系家族を基盤とする日本のような社会は、そもそもが身分制の社会です。ここでは長男が重要とされてきました。それは徐々に男性全体が特権を持つ、つまり男性優位社会へと変化していきました。日本でももちろん、戦後には能力主義の発展が見られましたが、そこにはフランスで見られるような、平等に対する強いこだわりがないのです。日本にも奥深いところで、巧妙な形での平等主義が存在するとは思います。例えば、あるレベルにおいてはどの仕事も高尚であり、正しく為されるべき、といった考え方です。「馬鹿な人はいても馬鹿げた仕事はない」ということです。そしてきちんと為された仕事はそれがどんな仕事であれ評価されます。それぞれがある身分に属していて、そこで自分の仕事をきちんとこなすという社会です。 もちろん、日本にも高等教育を受けたエリートが存在しますが、他国と異なるのは、人々がその身分の序列を認めているという点です。ここでは上層部の下層部に対する軽蔑、あるいは下層部の上層部に対する憎しみというものはないのです。 ● なぜ日本では ポピュリズムが力を持たないか 日本における高等教育の発展というのは、フランスよりもさらに突き詰められたもので、例えば大学入学の際に非常に激しい競争プロセスが存在します。また、大学もレベルによって明確に序列化されています。しかしこの能力主義的なプロセスは、日本の根本にある文化とは矛盾しないのです。 また、もう一つ重要なことは、日本にはポピュリズムがないということです。私が言うポピュリズムというのは、エリート主義を批判することで政治システムに入ってくる政党のことです。このような形は日本ではうまくいかないでしょう。もちろん、東大法学部出身者はフランスのENA出身者と同様の立場にいるでしょう。しかし、繰り返しになりますが、日本ではフランスに比べて、身分に対して傲慢な感情がないのです。 これらを踏まえた上で、日本社会の矛盾とは、身分制が色濃い社会であるにもかかわらず非常に踏み込んだ教育促進のプロセスがあり、能力主義化も進められたということではないでしょうか。日本は身分制の社会ですが、明治の頃からすでに教育の重要性を認識してきました。私が思うにこれもまた、国家が生き延びるためだったのだろうということです。日本人であると感じることや、西洋からの脅威に対抗し生き延びるために、日本社会は自分たちの価値観を超越し、階級化したシステムを残したままで大規模な民主化へ進んでいったのだと思うのです。
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September 10, 2020 at 04:06AM
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「グローバル化は日本を縮小させる」フランス人歴史学者が断言するワケ(ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース
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