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Monday, October 26, 2020

行列必至、魅惑の「小山ロール」を生んだ祖母の味 - 産経ニュース

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ふんわりしっとりとした生地が特徴の小山ロール
ふんわりしっとりとした生地が特徴の小山ロール
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 ふんわりした生地に包み込まれた生クリームと濃厚なカスタードクリーム。その隙間からころっと顔を出すほくほくの栗が、絶妙のアクセントを加える。兵庫県三田市の有名スイーツ店「パティシエ エス コヤマ」の看板商品「小山ロール」。2000年代のロールケーキブームの火付け役で、全国的にも名の知られたその味には、どこか懐かしさが漂う。1時間待ちの行列も珍しくない魅惑のお菓子に包まれているのは、世界的パティシエ、小山進さん(56)の「人々の記憶を超える一番の味を」という確固たる思いだ。

(中井芳野)

ファンは飛行機でも

 六甲山系の山々に囲まれた田園や静かな住宅街を車で走ると、なだらかな丘の上に「パティシエ エス コヤマ」の店舗が現れた。約1500坪の敷地には、ケーキを販売する本店に加え、ショコラやマカロン、チーズケーキなどの専門店、カフェ、お菓子教室などが配置されている。手入れされた庭ではカブトムシやキリギリスの銅人形が来訪者を出迎え、すべての店構えに心弾ませるかわいらしさがある。「お菓子のテーマパーク」と言われるゆえんだ。

 10月上旬、雨が降る平日の朝も行列が絶えない。北海道から飛行機で訪れるファンもいるといい、駐車場も県外ナンバーが目立つ。お目当てはもちろん小山ロールだ。

「小山ロールの1番のファンでいたい」と語る小山進さん=兵庫県三田市
「小山ロールの1番のファンでいたい」と語る小山進さん=兵庫県三田市
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 一口味わって驚くのが、ふわふわの生地の食感。包丁で切ろうとしても、あまりの柔らかさにうまく入らないほど。一方で、しっとりもしていて、ほど良い甘さの生クリームと鹿児島県種子島産サトウキビで作ったカスタードクリームがよくなじむ。食べ進めると顔を出すほくほくの栗もうれしい。

 小山さんの「目の届くところで丁寧に商品をお渡ししたい」との思いから、ネット販売はせず、扱うのは本店のみ。毎日1200~1600本が売れていく。

ブームの火付け役

 スポンジ生地にクリームや果物をのせて包むロールケーキ。どの洋菓子店にも並ぶ定番デザートは、どのように広まっていったのだろうか。

 発祥については諸説あるものの、お菓子の歴史研究家、猫井登さんの『お菓子の由来物語』(幻冬舎)によると、スイスのデザート「ルーラート」が起源で、ヨーロッパ各地に広まったとされる。国内には16世紀半ば、ポルトガル人がカステラとともに、スポンジ生地にジャムやシロップを巻いたルーラートを長崎に伝えたという。

 その後、あんこを巻いた愛媛県の名物「タルト」などに形を変えながら各地域に広がったが、各家庭に普及したのは戦後になってから。大手製パン会社が生地にバタークリームを塗った「スイスロール」を販売し、その形状から次第にロールケーキとして定番おやつになった。

 2000年代に入ると、小山ロールをはじめ、大阪の「堂島ロール」などが人気を博し、各地にロールケーキ専門店が誕生。大手コンビニエンスストアもヒット商品を開発するほど、ロールケーキの時代が到来した。

甘露煮がヒント

 「おばあちゃんが家族のために作るような、どこか懐かしい味。だけど、その親しみのある記憶を超える味」

小山ロールを求め、1時間待ちの行列ができるという「パティシエ エス コヤマ」
小山ロールを求め、1時間待ちの行列ができるという「パティシエ エス コヤマ」
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 小山さんは自身が追求した小山ロールの味をそう評する。「懐かしさ」を目指したのは、以前修行していた洋菓子店での経験からだという。

 当時使おうとした栗の甘露煮は、長期間保存できるよう大量の砂糖を使い、さらに短時間で煮詰めていたため、驚くほど固く、甘すぎた。その時思い出したのが幼い自分に祖母が作ってくれた優しい甘露煮の味だった。「家族のために、少ない砂糖でゆっくり時間をかけて煮詰めてくれた。手間もかかるし、保存もきかないけど、お菓子づくりで大切にすべきことだと気が付いた」

 洋菓子職人の父親の影響でこの道に。独立後の平成13年にテレビ番組のケーキ選手権で優勝した。2年後にエスコヤマを開業。幼いころの夢は昆虫博士で、同店も「自然豊かで昆虫が集まる場所」との思いから三田を選んだ。いまでも店のスタッフを連れて昆虫採取に出かける。少年のような旺盛な探究心が、お菓子作りの原動力になっている。

 以来、小山ロールに限らず、ショコラやプリン、バウムクーヘンなども手がけ、2012年にはフランスで最も権威あるショコラ愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の最高評価を受賞し、大きな話題を呼んだ。年間100種近くの新製品を開発しており、店頭には約800種の商品が並ぶ。それでも小山さんは「小山ロールが店の柱」と説明し、こう笑った。

 「包まれていると外から中身が見えにくいから、食べた瞬間の驚きも増すでしょう。そんなおいしい驚きの姿を、見たいんだと思います」

 包むことで食の楽しみ、喜びは幾重にも広がっていく。

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October 27, 2020 at 08:30AM
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