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Monday, November 9, 2020

19歳久保建英、本格ブレイクの予感 - GQ JAPAN

7月3日、マジョルカは敵地で強豪アトレティコ・マドリードと対戦。チームは3-0の完敗を喫したが、久保は堅守を誇るアトレティコ守備陣を翻弄した。

最初に断言しよう。9月11日開幕のスペイン1部リーグで2シーズン目を迎える久保建英は、2019-2020シーズンを上回るインパクトを残す!

久保は世界のサッカー界に君臨するレアル・マドリードと、2019年6月に24年までの6年契約を結んだ。もっとも、超が付くほどのスーパースターが勢揃いするクラブであり、すぐに出場機会を得るのは難しい。南米やアジアなどのEU圏外の選手には登録人数の制限もあるため、当時18歳の日本人アタッカーは、同じスペインのマジョルカへ1年間の期限付きでレンタル移籍することになった。

2部から昇格してきたばかりのマジョルカは1部残留がターゲットの小クラブだ。誰もが知る有名選手はいない。攻撃力で相手を圧倒するのではなく、守備を固めて少ないチャンスを生かすのが彼らのたたかい方だ。

攻撃力が特徴の久保も守備の感覚を研ぎ澄ませていった。昨シーズンの飛躍はここに鍵がある。自陣深くまで戻ってディフェンダーを助け、素早く攻撃へ切り替えるタスクは、じつは強豪クラブでも問われるものだ。ビッグクラブは国内リーグならアウェイでも主導権を握るサッカーができるが、いっぽうで、ヨーロッパナンバー1のクラブチームを決めるチャンピオンズリーグ(CL)では、レアル・マドリードでさえ守備重視のたたかいを覚悟する試合がある。久保がマジョルカで身につけた守備力は、上位クラブへのステップアップに必要なスキルなのだ。

昨シーズンの久保は、守備の局面でチームのために汗を流しながら、リーグ戦35試合に出場して4得点4アシストの記録を残した。1年目としてはまずまずで、外国人選手としては少し物足りない数字かもしれないが、所属元のレアル、レアルと並ぶビッグクラブのバルセロナとの試合でチーム最高と言っていいプレーを披露した。とくにリーグ3位のアトレティコ・マドリード戦では、堅守で知られる守備陣をキレのあるドリブルで翻弄。地元紙やジャーナリストたちは孤軍奮闘する久保のパフォーマンスを称賛した。

ビジャレアルに移籍した久保は、レアル・ソシエダとのプレシーズンマッチに先発出場。2-0の快勝に貢献した。

監督からの信頼は揺るぎないものとなり、チャンスメイクを全面的に託されるようになる。味方にパスを出してシュートを打たせることに注力することになり、その結果として得点数は伸びなかったというわけである。

アシストの少なさも、チーム事情に理由がある。久保が演出した好機がしっかり得点に結びついていれば、2ケタに達していただろう。残念ながらマジョルカは2部に降格してしまったが、背番号26を着けた「TAKE」はチームで群を抜く存在感を示した。

シーズン後にはスペイン国内はもちろんヨーロッパ各国から30を超える獲得オファーが届いたようで、そのなかにはつい先日CLを制したバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、同準優勝のパリ・サンジェルマン(フランス)も含まれていたと言われている。日本人が思う以上に久保が高い評価を得ている証拠だ。

久保の成長を評価するレアル・マドリードは、新シーズンも引き続き他クラブで経験を積ませる方針を早くから表明していた。そんななか、2020-2021年シーズンに久保がチョイスしたのは、昨シーズンのスペインリーグで5位に食い込んだビジャレアルである。

スペイン北部バレンシア州カスティリョン県にホームを置くビジャレアルは、リーグ優勝の経験こそないものの、ヨーロッパ各国リーグの上位クラブが集うヨーロッパリーグ(EL)の常連だ。

ビジャレアルのスタイルは攻撃的だ。昨シーズンのリーグでは、バルセロナとレアル・マドリードに次いでリーグ3位の得点を記録した。チームには新旧のスペイン代表と南米、アフリカの代表選手が集う。リーグ戦とELをたたかい抜くために、どのポジションにも2人以上の実力者を揃えている強豪だ。

ポジション争いは激しい。それでも久保はチーム内の競争に参加できている。マジョルカでときに苦闘した日々を経て、スペインならではの守備に馴染んだのは大きい。ディフェンダーがボールを奪い取ろうとするアクションが、スペインは日本より激しくて深い。Jリーグでプレイしていた当時なら相手をかわせる距離感で、足が伸びてきてボールを失うことがあったのだ。しかし、久保は試合を重ねることによって彼我の違いにアジャストし、1対1はもちろん1対2の局面でも相手をかわせるようになっていった。守備力の向上だけでなく攻撃においても、ビジャレアルのような強豪で定位置を争う準備は整ったと言っていい。

ビジャレアルで昨シーズン以上の成績を残せば、いよいよレアル・マドリード復帰が現実味を帯びてくる。今シーズンはキャリアを左右するぐらいに重要で、それだけに、19歳の野心溢れるチャレンジが楽しみなのだ。

Kei Totsuka

1968年、神奈川県生まれ。法政大学法学部卒業。サッカー専門誌記者を経て1998年からフリーランスに。『Sports Graphic Number』(文藝春秋)をはじめとして、雑誌やウェブ媒体にサッカー、ラグビーランニング、バドミントンなどの記事を寄稿する。著書には『日本サッカー代表監督総論』(双葉社)などがある。

Pablo Morano / アフロ

Words 戸塚 啓 Kei Totsuka

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