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Monday, December 28, 2020

新型ニッサン フェアレディZのキーマンに訊く! ZがZであるために不可欠な「スピリット」とは? - GENROQ Web(ゲンロク ウェブ)

フェアレディZという伝説の輪廻転生

2020年9月、ニッサンは次期型「フェアレディZ」のプロトタイプを世界に向けて初公開し、業界内外の話題をさらった。量産化が実現した場合、初代から数えて7代目という記念碑的なモデルが誕生することになる。

フェアレディZは、ダットサン フェアレディシリーズの後継として1969年10月に初代(S30型)がデビュー。手頃な価格帯で買えて日常的に使える魅力的なスタイリングのスポーツカーとして、とりわけ北米では“ズィーカー”の愛称で圧倒的な人気を得た。

ニッサン フェアレディZの次期型プロトタイプと田村宏志CPS

2020年9月16日、「フェアレディ Z プロトタイプ」のオンライン発表イベントに登壇した田村宏志チーフプロダクトスペシャリスト。

ニッサンのキーマンに聞くZの本質

伝説の誕生から半世紀を迎えたいま、世間にはスポーツカーにとっていささか息苦しい空気が蔓延しつつある。6代目となる現行Z34型は12年のモデルサイクルを数え、7代目の誕生を危ぶむ声も当然のように聞こえてきた。そんな折りに放たれた次世代プロトタイプ発表のニュースは、万雷の拍手をもって迎えられた。とりわけ日本と北米で。

次期型Zの可能性に沸きたつ北米ニッサンでは、チーフプロダクトスペシャリスト(CPS)の田村宏志氏へインタビューを敢行した。田村氏は1984年4月にニッサンへ入社、オーテックジャパン出向時には桜井眞一郎氏師事のもとオーテック ザガート ステルビオの開発にも従事。ニッサン復帰後は、2006年に商品企画部門のCPSに就任、2012年4月以降はGT-R及びZのCPSを担当し、ニッサンのスポーツカーづくりのキーマンとして活躍している。以下、北米ニッサンと田村氏による一問一答をご紹介したい。

ニッサン フェアレディZの次期型プロトタイプと初代Z

ニッサン フェアレディZの次期型プロトタイプは、誰もがひと目見て「Z」と分かるデザインを採用。初代Z(S30)のシルエットを現代的に再解釈している。

機械と人間を繋ぐ絆として

北米ニッサン:まず知りたいのは、一体「Z-ness」とは何なのかということ。そこから教えてください。

田村宏志氏(以下、田村):私にとって「Z-ness」というのはニッサンのスピリットそのものです。究極の“運転する歓び”を与えるべく、ドライバーの心と身体、そして魂をクルマと結びつけるための存在。機械と人間が出合い、ドライバーとクルマの間に真の一体感と絆が生まれる場所、それがZなのです。ひと目で見るものを惹きつけ、ずっと共に過ごしたいと思わせる。それこそがZが本来もつべき個性といえるでしょう。

日産フェアレディZの次期型プロトタイプ。サイドビュー

ロングノーズから流れるように上昇するルーフライン。その先にある垂直に切り立つテールエンド。そしてフロントフェンダーよりわずかに低く、なだらかに傾斜していくリヤのデザイン。初代Zのデザインキューを忠実に採り入れながら、Zプロトタイプはいまあるべきスポーツカーのカタチを提案する。

相性ぴったりのダンスパートナー

北米ニッサン:「心と身体、そして魂」は、どのようにしてZと結びつくのでしょうか?

田村:優れたダイナミック性能を備えたクルマは世の中にたくさんあります。でもZなら、感情そのものでクルマと繋がることができる。だからパフォーマンスを実感しやすいんです。ドライバーの心の機微に反応するZだからこそ、物言わぬ感情と心の奥底で結びつくんですね。まるで、相性ぴったりなダンスパートナーに出会ったときみたいに。

同時に、「Z-ness」というのは自分自身の人生を楽しみ、謳歌することでもあります。ひとりきりで積極的に運転を楽しむ人にとっても、数多くの「Zエンスージアスト」が集うコミュニティの一員でありたい人にとっても。

ニッサン フェアレディZの次期型プロトタイプ。コクピット

ドライバーとクルマとの一体感を重視するZは、プロトタイプにも6速MTを採用。心臓部にはV6ツインターボを搭載する構想だ。

“多くの人々”のための夢のクルマ

北米ニッサン:ニッサンのモデルラインナップにおけるZの役割とは?

田村:前述したように、Zはニッサンのスピリットです。そして「NISSAN NEXT」(ニッサンの事業構造改革案)に従いニッサンが変わろうとしているいま、とても重要な存在でもあります。Zはすべてのプロダクトに刺激を注入し、ニッサンに関わるすべての人々、顧客のみなさま、そしてファンの方々の感情を揺さぶる存在なのです。

Zは人の記憶に残るクルマです。ニッサン車ならではのパワーとデザインのバランスが大元にあるのはもちろん、多くの顧客にとって手の届きやすい存在であることもすごく大切。沢山の人が楽しむことのできる夢のクルマ、それがZなんです。

いつの時代も、Zは“枠組み”に挑み、ものごとを革新しようとする我々の情熱が生み出してきました。「情熱と革新、挑戦」という三つの言葉は、Zそのものを定義すると同時に、ニッサンのDNAにとって不可欠なもの。だからこそZは文化そのものに浸透し、ニッサンの独自性を体現するクルマであり続けているんです。

日産フェアレディZの次期型プロトタイプ。テールランプ

次期型フェアレディZのプロトタイプに装着したテールランプの2段横長グラフィックは、300ZX(Z32)に通じる意匠。

次期型Zの開発で第一に据えるべきこと

北米ニッサン:根強いファン層を築きあげてきたZですが、誕生から50年を超えた今後もその人気は変わらないと思いますか?

田村:独自のスタイルと身近な存在感を兼ね備えたZは、時を超える存在です。じつに数百万の人々が、このクルマとの特別な繋がりを共有しています。身近な友人や家族の方にZのことを聞いてくだされば、きっととても好意的な答えや笑顔が返ってくるはずです。これこそがZのスピリットを今に継承するものであり、それは益々強さを増していくことでしょう。

北米ニッサン:次期型Zの開発にあたっては、どんなことを念頭に置かれていますか?

田村:CPSとしての私の仕事は、顧客の声となること。Zを愛する理由は人それぞれです。見た目だったり、パフォーマンスだったり、かつてZと作った素敵な思い出だという方もいるでしょう。だから、新しいZを作るというのはとてもチャレンジングな仕事といえます。

まず第一に考えるべきは、お客様が何を望んでいるかということと、そして皆様の幸せです。スタイルとパワーとテクノロジーがすべてバランスされ、かつ手の届きやすいZこそが私の目指すもの。Zらしく動き、Zらしく見え、お客様に笑顔にするものでなくてはいけないのです。

日産フェアレディZの次期型プロトタイプと歴代Z

スポーツカーを操る楽しさを多くの人に与えてきた歴代Z。次期型プロトタイプのスペック詳細は明らかにされていないが、純粋なスポーツカースピリットを継承することだけは間違いない。

GT-RとZが変えた人生

北米ニッサン:Zにまつわる個人的な思い出はありますか?

田村:私は子供の頃から根っからのニッサン車好きでした。とくに若い頃はGT-RとZの大ファンで、いつかニッサン、そしてニッサンのスポーツカーづくりに携わりたいと考えていました。GT-Rの力強さとレースでの活躍は忘れられませんし、フェアレディZの美しさも記憶に刻み込まれています。この2台は私の人生を変えました。

自分のZ、そしてGT-Rと共に過ごした幸せな思い出は数えきれません。そしていま、それらの責任者という立場に身を置いているのですから、言葉では言い表すことのできない想いを抱いています。いつか一冊の本にまとめなければいけませんね!

日産フェアレディZの次期型プロトタイプ。エンブレム

フェアレディZの精神を、これからの新しい時代に繋げていく。次期型モデルの担う役割はとても大きい。7代目Zは、夢の続きを我々に見せてくれるだろうか。

240ZGとZ31から学んだもの

北米ニッサン:歴代モデルのうち、所有していたのはどのモデルですか?

田村:いわゆる“Gノーズ”の240ZGを中古で手に入れたのが最初です。さらなるパフォーマンスを追求するべく、すぐさまチューニングしたのは言うまでもありません。240ZGの佇まいが大好きで、個人的には新幹線のようだと思っていました。空気を切り裂いて走るような、とても滑らかな空力ボディ。低く堂々としたスタンスにロングノーズ、短いリヤデッキ、そしてボルト留めのオーバーフェンダー。日本の自動車メーカーがこんなデザインを作り出せるということにびっくりしましたね。

ターボを搭載したZ31も持っていました。このクルマでは本当に多くのトライ&エラーを繰り返して、チューニングについて色々なことを学んだ。当時はチューニングシーンが大変盛り上がっていて、アフターパーツも安く出回っていたんです。冷却系やブレーキなど、細かな点にも注目しました。大変な思いをしてようやく分かったこともあり、とても素晴らしいクルマに仕上がりました。

北米ニッサン:次期型Zに最も期待していることは何でしょうか?

田村:次のZを運転したときに、新しいダンスパートナーに出会えたと感じてもらえたら嬉しいですね。ニッサンのスポーツカースピリットを新しい時代に伝える次期型Zが、ニッサンファミリーやクルマを愛する人々、そしてZエンスージアストの皆様に再び幸せな思い出を作ってくれることを願っています。

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