「新しい味」は昆布に隠れていた
1936年の今日(5月3日)、うま味成分のL-グルタミン酸ナトリウムを発見した池田菊苗(いけだ・きくなえ、1864-1936)が亡くなりました。 幕末という激動の時代に生まれた池田は、西洋の学識を学んで日本を盛り立てようという機運に乗り、英語や化学(当時は「舎密(せいみ)と呼ばれていました)の知識を貪欲に吸収していきました。化学をもっと学びたいと家出同然に上京した彼は東京大学理科大学(現・東大理学部)に入学し、英国帰りの若き化学教授・桜井錠二(さくらい・じょうじ、1858-1939)に師事しました。 理論化学を学ぶかたわらで、池田は応用化学への興味をも育み続けました。ドイツ留学時代には硝酸の工業的製法を発見したオストワルトの薫陶を受け、化学で社会に貢献するという道を学びました。そして帰国後、彼は人の味覚を化学で満足させる研究に打ち込んだのです。 当時、人が感じられる味覚には甘味、辛味、酸味、苦味の4種類があると考えられていました。池田はこの他にもう1種類、例えば鰹節や昆布だしが「うまい」と感じられるような味の種類があると考えました。彼は昆布を対象にうま味成分の抽出実験を繰り返し、昆布の浸出液から塩分やマンニトールを除去することで有機酸を得ることに成功しました。 濃厚な“うま味”が感じられるこの有機酸の結晶の正体は、「L-グルタミン酸ナトリウム」という物質でした。池田はこの物質を使った調味料を開発し、顔なじみの実業家を通じて「味の素」の名で売り出しました。「栄養のある食べ物を、化学の力でおいしく変えたい」という夢が現実になったのです。彼が発見した新たな味覚は、外国でもそのまま「umami」と呼ばれています。 その後も池田は、東京帝大での授業や理科学研究所の設立といった公務をこなしつつ、死の直前まで研究を続けました。彼は最後の研究で、箱根の湯河原温泉のお湯が切り傷を治すのはなぜか解明しようと試み、死の2日前も現地調査に行っていたそうです。
ブルーバックス編集部(科学シリーズ)
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