コロナ禍需要 「家庭用キッチン高品質提供」
新型コロナウイルス感染拡大の影響で飲食店の時短営業が続く中、金沢市中央通町のイタリア料理店「ジブンチ」が、家庭に出向いて料理を作るサービスに乗りだし、人気を集めている。県の時短要請期間に合わせ、13日までを予定していたが、既に予約はいっぱい。店主の山本啓介さん(33)は「レストランを家に持ってくるイメージ。家なら料理と一緒にお酒も楽しめる」と話す。 (郷司駿成)
出張サービスでは、牛肉のステーキやパスタなどのコース料理を予算に合わせて提供する。料金は一人五千〜八千円。一緒に酒類も味わいたい場合は、利用者が個人で用意する。
各家庭には山本さんと従業員一人が出向く。事前に店で仕込んだ食材や皿、調理器具などを持ち込み、その場で調理。食器洗いは店に持ち帰って済ませるので、利用者の負担はほぼないという。
飲食店への時短要請で、ジブンチも打撃を受けた。週末の客が一日一組だけのこともあった。料理は酒に合うように味付けしているため、酒類を提供できないのも、もどかしかった。
「レストランに来られないのなら、こっちから行こう」。逆転の発想で出張サービスを考え、先月二十三日に会員制交流サイト(SNS)で告知。夜の営業はやめ、二十六日からサービスを始めると、十三日までの予約があっという間に全て埋まった。
これまで夫婦の食事や友人同士で集う場を訪れ、料理を振る舞ってきた。中には、コロナ禍で苦しい業界で働く恋人を励ますために依頼した若い女性もいた。喜ぶ二人の姿を見て、山本さんは「食の大切さ、レストラン文化はなくてはならないものだと改めて感じた」。五月の売り上げは、モーニングやランチを始めたことも奏功し、時短要請前の四月を上回った。
コロナ禍で新たな需要をつかんだ山本さんは、自身の料理の腕を上げる好機とも捉える。店以外の環境で店の味を再現するためだ。「家庭用キッチンでも質を下げずに料理を提供したい」と力を込める。十四日以降も出張サービスを続けるかどうか検討している。
事業環境も社会も大きく変わった昨年来、山本さんは料理人としてのあり方を考え続けてきた。「これからも災害など何があるか分からない。どんな場所でも活躍できる“死なない料理人”になりたい」
関連キーワード
からの記事と詳細 ( わが家でプロの味 人気 金沢の山本さん 出張レストラン - 中日新聞 )
https://ift.tt/34WTt0V
No comments:
Post a Comment