筆者(ナショナル ジオグラフィックの科学編集者Victoria Jaggard)は「宇宙に行きたくないタイプの宇宙オタク」だ。高所恐怖症なうえに閉所恐怖症でもあるため、宇宙を訪れるために必要なことを知れば知るほど、魅力を感じなくなっている。
しかし、成層圏の外にぜひ出てみたいという冒険好きがいるのもわかる。その特権を手に入れるためであれば喜んで大金を出す億万長者までいるほどだ。
アマゾンと米国の宇宙企業ブルーオリジンの創業者であるジェフ・ベゾス氏は2021年6月7日、7月後半に予定されているブルーオリジンのロケット、ニューシェパード初の有人飛行に自ら参加し、宇宙を目指すことを発表した。ニューシェパードの発射システムは弾道飛行で、高度100キロの「カーマンライン」(宇宙空間との境界とされる基準の一つ)のすぐ上までクルーカプセルを運ぶ。(参考記事:「アマゾン創業者も参入、月面計画に各国が殺到」)
カーマンラインは宇宙の始まりを意味する仮想の線だ。カプセルがパラシュートで地球に帰還するまでの数分間、参加者は無重力状態を体験することになる。すべてが計画通りに進めば、ブルーオリジンは一生に一度のスリルを味わえる「宇宙旅行」を多くの人に提供したいと考えている。
宇宙旅行の料金は明らかにされていないが、ベゾス氏は7月のテスト飛行の1座席をオークションにかけている。最高入札額は400万ドル(約4億4000万円)に達している。
宇宙旅行は決して新しい概念ではなく、過去には国際宇宙ステーション(ISS)まで行った人もいる。初めて自費で宇宙旅行をしたのは投資管理業界の大物デニス・チトー氏で、2000万ドル(約22億円)を支払い、宇宙飛行士2人とロシアの宇宙船ソユーズに搭乗した。(参考記事:「2007年10月号 スプートニクから50年 宇宙開発 次の一手」)
当時、スリルのためだけに民間人を地球周回軌道へ送り込むことは、「道楽であり、大富豪にしかできないぜいたく」という批判を呼んだ。しかし、ソユーズの座席代を支払う人が誰であろうと、1960年代から有人宇宙飛行に貢献し続けるソユーズの運用コストを補う助けになっていることもまた事実だ。
参考ギャラリー:スペースX宇宙船が帰還、宇宙飛行士が見た景観 写真17点(画像クリックでギャラリーページへ)
スペースX社の宇宙船クルードラゴン(右)が国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングしている。2020年7月1日撮影。クルードラゴンはNASAの宇宙飛行士ダグラス・ハーリー氏とロバート・ベンケン氏を乗せて米東部時間2020年5月30日に打ち上げられた。米国からの有人宇宙船の打ち上げは2011年以来。両氏は63日間のISS滞在中、NASAの宇宙飛行士クリストファー・キャシディ氏およびロシアの宇宙飛行士アナトーリ・イワニシン氏とイワン・ワグナー氏とともに、仕事中の飛行士や地球の写真を数多く撮影した。(PHOTOGRAPH BY CHRIS CASSIDY)
からの記事と詳細 ( ベゾス氏が宇宙旅行へ なぜ大富豪は宇宙を目指す? - ナショナル ジオグラフィック日本版 )
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