パナソニックは1日、現行の社内カンパニー制を廃止し、来年4月の持ち株会社制への移行に向け組織を大きく再編する。持ち株会社では8つの事業会社に権限を委譲し、経営判断を早めることによる競争力の強化を目指す。事業会社の独立性を強めつつ互いの連携も保ち、これまで生み出せなかった「収益の柱」を創出できるか注目される。
「専鋭化」狙う「対峙(たいじ)すべき競合他社の姿がはっきりしてきた」
1日の組織再編に伴う大幅な人事異動の内示を受けたパナソニックの社員は、新たな職場で働く心境を緊張した表情でこう語った。
組織再編では5つの事業軸と2つの地域軸で分けていた社内カンパニーを8つの事業部門に分け、来年4月の持ち株会社制移行で事業会社とする。
家電や空調、中国地域などを統括する事業会社がパナソニックの名称を引き継ぎ、売上高は事業会社の中で最大の4兆円規模となる。登記は現本社がある大阪府門真市に置きながら、経営陣や間接部門を東京に集約。脱大阪で顧客の多い東京だけでなく海外との接点も増やしグローバル展開の強化を狙う。
組織再編の狙いとして楠見雄規(くすみゆうき)社長らは事業の「専鋭化」という言葉を繰り返し強調してきた。事業領域を絞り、各業界で専業メーカーと戦う競争力を磨き上げる-とする造語だ。楠見社長は「2年間は競争力の強化に集中する」とし、当面は事業会社の将来性を見極める期間とする。
そのため持ち株会社「パナソニックホールディングス」が会社全体を統括しながら、人事や賃金制度、投資などの権限は各事業会社へ委譲し、経営判断を迅速化。社内からは「施策の決裁印を延々ともらいに回るスタンプラリーが短くなるだけでも事業のスピードが上がる」と期待の声が上がる。
連携もカギ一方、組織再編には痛みも伴う。キャリアの変更を迫られる社員向けには割増退職金を加算する早期希望退職制度を実施し、千名超が会社を去る。新型コロナウイルス禍で営業がままならないショールーム「パナソニックセンター大阪」(大阪市北区)は来年2月までに順次、閉館や移転を進める。
痛みに耐えながらも組織改革を進めるのは収益の柱となる事業を育てるためだ。令和3年3月期は減収減益で、新型コロナ禍でも好調なソニーなど競合他社に比べ業績悪化が目立った。数千億円を投じ2017年1月に稼働した米電気自動車(EV)大手テスラ向けの北米電池工場はようやく黒字化。今後は8633億円で今年9月に全株式を取得した米ソフトウエア会社「ブルーヨンダー」との相乗効果も求められる。
持ち株会社制に移行し独立性の高い事業会社が複数できることで、これまで可能だったパナソニック全体での連携が難しくなる恐れもある。たとえば共通で使える技術に関し、事業会社同士が重複して開発作業を進めるなどの無駄を防ぐため、持ち株会社がしっかり手綱を握る必要がある。
今回の組織再編について流通科学大の長田貴仁特任教授(経営学)は「事業会社の責任をはっきりさせる合理的な改革で市場の評価は高まるだろう」と評価する。一方で、「これまでの改革では大型投資での失敗が目立ち、収益の柱となる事業が育っていない。これを繰り返せば人心は離れていく」とも指摘した。(山本考志)
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