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Friday, September 3, 2021

飲食店シェフ「裏切られた」・会社員「接種は自治体任せにするな」…迷走1年、首相退陣 - 読売新聞

 菅首相(自民党総裁)が3日、退陣する意向を突然表明した。「国民のために働く内閣」を掲げてから1年。新型コロナウイルス対策を「最優先」としたが、対応は遅れがちで、思うように感染を抑え込めなかった。協力してきた飲食店や旅行業者、最前線で患者に対応する医療従事者らの失望は深い。

 「この状況では仕方がない」。3日夜、東京都中央区の飲食店オーナーシェフの男性(41)は、菅首相の総裁選不出馬表明を伝えるニュースをネットで見て、冷淡に言った。

 この日の客は2人のみ。午後8時、緊急事態宣言下の東京都の要請に従い、店じまいした。

 菅首相の官房長官時代の働きぶりを見て、コロナ禍の課題も迅速に解決してくれると期待した。東京五輪・パラリンピックが開催される頃には、来日客らでにぎわうだろうと大型テレビを設置することも考えた。

 だが、感染者の急増で、年明けから3度にわたり、緊急事態宣言が発令された。4月からは営業時間の短縮に加えて酒も出せなくなり、客足はコロナ禍前の3分の1以下に。「裏切られた」と、つい思ってしまう。

 男性は「『今度こそ』と信じて要請に応じてきたが、収束の見通しは見えない。次の首相には思い切った打開策を実現できる人になってほしい」と求めた。

 昨年9月16日に発足した菅内閣。感染の拡大防止に加え経済再生も進めるとして、10月には肝いりの観光支援策「Go To トラベル」事業の対象に東京を追加したが、感染が拡大した12月、全国で一斉に停止する事態に追い込まれた。

 「事業停止後の売り上げは、ほぼゼロ。生活費もままならない状況だ」。東京都足立区の旅行会社代表取締役の男性(63)は、こぼす。「菅政権には、十分な支援策も用意してほしかった」と嘆く。

 菅首相が感染対策の切り札に挙げたワクチン。東京・大手町の自衛隊による大規模接種センターには3日も、多くの人が訪れていた。

 接種は自治体が主体となって行う計画だったが、菅首相は5月7日の記者会見で、「1日100万回」を目指すと表明。同センターでの接種は、同月24日からスタートした経緯がある。

 3日に2回目の接種を終えた東京都練馬区の会社員(36)は「接種は各国に比べて遅く、国は自治体任せにすべきではなかった」と指摘した。

 接種の加速化を進める一方、7月にはワクチン供給が追いつかなくなり、混乱を招いた。千葉県柏市の60歳代の男性医師は、自身のクリニックでワクチン接種に協力しているが、7月は予約を約50件断ったという。男性は、首相が「コロナ対策に専念したいから総裁選に出ない」と説明したことを、「理由になっていない」と憤った。

 今夏の「第5波」では、若者らの感染者が急増し医療提供体制が 逼迫ひっぱく した。軽症・中等症の患者を受け入れる東京曳舟病院(東京都墨田区)の三浦邦久副院長は「コロナは『見えない災害』。若者らに危機感が伝わるよう、もう少し上手に発信すべきだった」と指摘する。

 政府対策分科会の尾身茂会長は3日の会議後、記者団に「一生懸命やろうという感じは受け取っていた」と述べた。東京都の小池百合子知事は、この日の定例記者会見で「コロナ対策は各省庁をまたぐ。まとめるのは本当に大変だったと思う」と語り、自民党の次期総裁にふさわしい人物を問われると「自民党の中でお決めになること」とだけ答えた。

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