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昭和期の食通の文豪といえば、開高健の名を外すわけにはいくまい。開高健は多数の食に関するエッセーや小説を残しており、今回はその中から『新しい天体』を取り上げたい。
『新しい天体』という題名自体もブリア‐サヴァランの『美味礼讃』の一節から取られており、新しい御馳走のことを指す。まさに食に貫き通されている一冊である。
主人公となる官僚の「友人」は、上司に「相対的景気調査官」という役職に任命され、各地を食べ歩き、食物の値段を調査することとなる。
その調査対象は多岐に渡り、たこ焼きやモツの煮込み、おでんのようなその土地に密着した食材から、懐石やフレンチなど贅を尽くした料理まで、食べ回ることが仕事というのだから、一度は体験してみたい役職だ。
「友人」は全国津々浦々を巡り、ありとあらゆる食事を堪能するのではないかというほど美食が溢れる作品だが、その中でも「和井内ホテル」の晩餐には一度味わってみたい魅力がある。
前菜として出てくる山菜はしつこい味付けもなく淡泊で匂いや味も消えやすく、山の風味をそのままというところだ。
そして、メインとして出てくるのは薪で焼かれたヒメマスの姿焼きである。全国を巡り、数々の美食を味わい品評してきた「友人」が、このヒメマスのその素晴らしさに思わず、「うまい」「絶品だ」という平凡な言葉を口に出してしまう。そのこと自体が逆にヒメマスの非凡さを強調しているのだ。
読む美食体験会とも言える『新しい天体』、美食の秋に相応しいのではないだろうか。(将棋棋士 糸谷哲郎八段)
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