ヒトは喫食時に、食品から口腔内に放出される味とにおいに寄与する成分を味覚・嗅覚(化学感覚)情報として一斉検知することで、風味を認知し、おいしさを評価しています。しかしながら、ヒトが口腔内で検知しているような味やにおいを同時に解析する技術は存在せず、味とにおいを一元化した食品の風味(おいしさ)を定量的に評価することは不可能でした。従来の食品風味成分分析では、味成分は液体クロマトグラフィー(LC)、におい成分はガスクロマトグラフィー(GC)というように、分析対象とする成分の化学的特性に合わせて分析法を選択する必要がありました。さらには、分析を行う前段階として成分抽出など、煩雑な前処理を必要とするため、ヒトの知覚している味とにおいに寄与する風味成分を食品そのままの状態で評価することは不可能でした。
今回、九州大学大学院農学研究院食品分析学分野の田中 充准教授らの研究グループは、揮発/不揮発性化合物に対する吸着能を有するグラファイトカーボンブラックナノ粒子(GCB)に着目しました。そして、GCBをレーザー脱離イオン化質量分析(LDI-MS)(※1)のイオン化支援剤として利用することで、味成分(アミノ酸、核酸、糖など)とにおい成分(エステル、アルコール、アルデヒドなど)の同時検出に成功しました。本研究で開発した新たな分析法であるGCB-LDI-MS法は、煩雑な前処理の必要が無く、食品をそのまま分析することが可能です。そのため、食品や農作物の風味・品質の評価に広く活用できる新規の迅速かつ簡便な分析法として期待されます。
本成果により、食品本来の味とにおいに寄与する風味成分情報を一元化したデジタル情報へ変換することが可能になり、従来数値として表現することが困難であった食品風味・品質の評価、さらにはおいしさの客観的評価・理解に大いに役立つと期待されます。
本研究成果は、2022年1月25日(火)10時(日本時間)に米国科学誌「ACS Applied Nano Materials」に掲載されました。なお、本研究は学術変革領域研究(A)「深奥質感」(JP21H05828)および日本学術振興会科学研究費(JP21K19089)等の支援を受けました。
からの記事と詳細 ( 味とにおいに寄与する成分を同時に検出可能な新たな分析法を開発 | 研究成果 - 九州大学 )
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