会社役員が訴訟リスクに備える「会社役員賠償責任保険(D&O保険)」の注目度が高まっている。2021年度の大手4社合計契約件数は約1万件となり、17年度に比べて2割増加した。大企業に加え、中小企業や学校法人などにも加入のすそ野が広がる。損保大手は割引制度を導入するなど、一段の需要喚起を狙う。(大城麻木乃)
D&O保険は、株主代表訴訟などで会社役員が訴えられた際に、損害賠償金や訴訟費用を補償する。大手4社の21年度の契約件数は1万472件で、17年度の8660件から1812件増えた。収入保険料は約166億円と、17年度の約128億円から3割増となった。
「非上場企業でも顧客や消費者から訴えられるケースは増えている」。東京海上日動火災保険企業商品業務部の柴田薫課長代理は明かす。大企業の不祥事ほど大きく報道されないだけで、消費者の権利意識の高まりなどから中小企業でも訴訟リスクは高まっているという。
東京電力の旧経営陣が福島第一原発事故をめぐる株主代表訴訟で裁判所に約13兆円の支払いを命じられるなど役員賠償責任を問われたことが話題となった。こうしたことから中小企業の間でも役員の訴訟リスクへの関心が高まっているとの声が聞こえるようになった。
日本損害保険協会が21年度に実施した中小企業のリスク意識に関する調査によると、D&O保険について「詳しい内容まで知っている」「聞いたことはある」と答えた企業の割合は41・3%と、サイバー保険(36・6%)を上回った。D&O保険について「とても関心がある」「やや関心がある」と答えた企業の割合は30・8%と、こちらもサイバー保険(28・6%)を上回り、D&O保険は一定の認知度があることがうかがえる。
中小企業にとどまらず、学校法人などでもD&O保険への注目は高まっている。20年4月の私立学校法の改正では学校法人の役員の責任が明確化され、理事らは善管注意義務を負うことになった。職責を果たさず善管注意義務を怠ると訴えられるリスクが高まる。学校法人でも役員の訴訟に備える保険加入の動きが相次ぐ。
こうした需要の高まりを追い風に、損保大手は商品の魅力を高めながら販売攻勢をかける。東京海上は今春、企業のESG(環境・社会・企業統治)への取り組みをD&O保険の保険料へ反映する制度を導入。温室効果ガス削減目標が国際環境団体「SBT」の認定を受けているなどすれば、最大10%保険料を割り引く。
損害保険ジャパンは海外グループ会社などと連携し、海外に出向する役員もカバーするグローバルプログラムを展開。三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は中小企業庁の事業継続力強化計画に認定された中小企業は保険料を5%割り引く仕組みを設けている。各社の取り組みもあいまって、今後もD&O保険は伸び続けそうだ。
日刊工業新聞 2022年10月27日
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