“子どもも大人も食べられる”を目指し「辛くないカレー」として誕生
カレーは幕末から明治にかけてイギリスから伝来し、以後、日本国内で独自の進化を遂げてきた。戦後の1950年には日本初の板状固形カレールウ『ベルカレールウ』が登場。続いて1960年にハウス食品が固形ルウ『ハウス印度カレー』を発売し、カレー製品全体の売上でシェアトップへと成長する。そして1963年には『バーモントカレー』が発売された。
「開発当時、“カレーは辛くて大人の食べ物”とされていましたが、高度成長期に家庭の食卓は子どもが中心となっていることに着目し、『子どもも大人も食べられるマイルドなカレーを作ろう』という全く新しい発想で開発されたのがバーモントカレーです。りんご酢とはちみつを使った米国バーモント州に伝わる民間療法“バーモント健康法”にちなんで名付けられました」(食品事業一部 ルウ担当・清水華さん)
『バーモントカレー』の開発にあたっては、まず「カレー最大の特徴である“辛味”ではなく、もっと新鮮な味、それも“スイートでマイルドな味”を織り込みたい」という方向性が決められた。そして辛さを抑えるために、バナナやみかんなど様々な果物や果物エキスを組合せて何度も試作品が作られたという。
「辛味以外に、子どもから大人まで美味しく食べられるように、まろやかでコクのある味わいにこだわっています。辛味が弱いカレーは味づくりが非常に難しいのですが、甘味・辛味・香りの絶妙なバランスにこだわり、口に入れた瞬間はまず甘みを感じ、カレーの風味が口中で広がり、ほどよい辛味と一体となって後まで押し寄せてくる味にしています」(清水さん)
要望が高かったレトルト化 一方でそれぞれが思い描く“家庭の味”の再現に苦労
ターゲットは、『バーモントカレー』を簡単に楽しみたいという人。具体的には子どもが独立し、カレーを鍋では作る機会は減ったが「味は好きだ」と感じている50〜60代の2人世帯をメインにしている。
「さらに子どもと親でバーモントカレーを二鍋作り分けている子ありファミリー世帯、一人前を求める単身者など、さまざまな方々に楽しんでいただけると考えています」(食品事業二部 レトルト担当・三島誠さん)
“ルウでの味わい=家庭の味”として定着している同ブランド。それゆえに、レトルトで各家庭の思い出の味わいを再現するのに困難を極めたそうだ。レトルト製品はルウとは製法が異なること、誰もが『バーモントカレー』だと思ってもらえる味に仕上げることが最も苦労した点だと三島さんは語る。
「試作品を評価いただいたお客様の声から、バーモントカレーの味わいは『スパイスが複雑に絡まりあった一体感のあるスパイス感』が必要だということに気づかされました。それを元に、スパイスを調味料とともに焙煎する製法を導入し、ようやくレトルトでもバーモントカレーと呼べる味わいが実現できました」(三島さん)
また当初はルウのレシピを目標に置いていたが、調査を重ねる中で、消費者が思い描くバーモントカレーの味わいはレシピよりもとろみが強く、味わいも濃いものであるとわかったという。味覚開発では500回以上の試作を行ない、誰が食べても自信を持って『バーモントカレー』と呼べる味わいにたどり着いた。通常商品の味覚開発は半年くらいかかるところ、今回は2年を要したことも、苦労が伺える。
レトルト市場の伸長の要因は「意識の変化」 薄れる“抵抗感”と高まる“クオリティ維持”
「確かに不安がなかったわけではありません。しかし、今回のレトルト化は、『バーモントカレー』を食べたいと思っているけれど食べられていない方にとっての“助け舟”になるのでは、と考えています」(三島さん)
そして「レトルトがより美味しくなった今だからこそ、バーモントカレーがレトルトでも提供できる時代が来たとも言えます」と自信をのぞかせる。このレトルト化を通して、ルウよりも味のクオリティが劣る、というイメージを払拭できるチャンスととらえているという。
「実際、お客様のレトルトカレーに対する抵抗感は年々薄れてきていると感じています。直近10年でレトルトカレー市場が大きく伸長している要因は、お客様のレトルトに対する意識の変化だと思います。ハウス食品でもお客様に『レトルトでいい』から『レトルトがいい』へマインドチェンジしてもらえるように製品施策、プロモーションを行なっています」
からの記事と詳細 ( 60年にわたり“家庭の味”築いた『バーモントカレー』、初のレトルト市場参入の意図を聞く - ORICON NEWS )
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