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Tuesday, May 30, 2023

焦点:韓国が武器製造でポーランドと大型提携、巨大軍産複合体 ... - ロイター (Reuters Japan)

[ソウル 29日 ロイター] - 韓国は、同国史上最大となるポーランドとの137億ドルの武器契約を活用し、巨大軍産複合体の基礎を築こうとしている。両国の軍需企業が期待するのは、遠い将来にわたって欧州の武器需要を満たすことだ。

 5月29日、 韓国は、同国史上最大となるポーランドとの137億ドルの武器契約を活用し、巨大軍産複合体の基礎を築こうとしている。写真は昌原市のハンファ・エアロスペース工場に置かれたK9自走榴弾砲。3月撮影(2023年 ロイター/Kim Hong-Ji)

韓国の国防省によると、同国の昨年の武器売却額は前年の72億5000万ドルから170億ドル以上に急増した。昨年は西側諸国がウクライナへの武器供与に奔走し、北朝鮮や南シナ海などでも緊張が高まったという背景がある。

<韓国、りゅう弾砲シェアが68%に>

北大西洋条約機構(NATO)の主要メンバーであるポーランドとの昨年の武器取引には、多連装ロケット砲「チョンム(Chunmoo)」、K2戦車、K9自走榴(りゅう)弾砲、FA―50戦闘機など併せて数百基・両が含まれていた。その金額と数は、世界屈指の防衛産業の中でも際立っていた。

韓国とポーランドの当局者らは、両国の提携はウクライナ戦争後も欧州の武器市場を制覇することにつながると言う。韓国が高品質の武器を他国より迅速に提供し、ポーランドが製造能力と欧州への販売パイプを提供する形だ。

ロイターは、この取引に直接関与した人々を含む企業幹部と政府関係者13人に話を聞いた。両国の提携は、国際的な官民パートナーシップとコンソーシアムを利用して韓国の輸出市場を広げ、世界屈指の武器供給国になる野望に向けた青写真になる、と関係者らは語った。

ポーランドとの取引に関わった韓国航空宇宙大手ハンファ・エアロスペースのオ・カイワン取締役は「チェコ、ルーマニア、スロバキア、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニアなどは、防衛装備品を欧州だけから購入しようと考えていたが、今では韓国企業から低価格で購入でき、迅速に納入してもらえることが周知されている」と述べた。

韓国企業は、武器の単価を公表していない。

NHリサーチ&セキュリティーズの調査によると、ハンファ・エアロスペースは既に世界の榴弾砲市場で55%のシェアを握っており、ポーランドとの取引でこれが68%に拡大すると推計される。

ポーランド国営軍需グループPGZの輸出プロジェクト室長であるルカシュ・コモレク氏は、今回の提携によって韓国とポーランドの企業はコンソーシアムを組み、兵器の製造、戦闘機の保守、そして最終的に他の欧州諸国へ供給するための枠組みができると語った。

両国の関係者によれば、提携内容にはポーランドで韓国の武器をライセンス生産することも含まれる見通し。計画では、2026年から戦車820両のうち500両、榴弾砲672両のうち300両をポーランドの工場で製造する予定だ。

「われわれは、単に下請け、技術移転業者、購入元としての役割を果たすことを望んでいるのではない。シナジーを生み出すとともに、欧州市場を制覇するため、わが社の経験を生かすことができる」とコモレク氏は述べた。

英国に本社を置くエージェンシー・パートナーズの防衛・航空宇宙アナリスト、サシュ・トゥサ氏は、両国の長期的な計画には困難が伴うだろうと言う。政治情勢が変化し、榴弾砲や戦車の需要が減少する可能性もあるからだ。

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トゥサ氏によると、生産と需要が維持できたとしても、欧州諸国はポーランドのように自ら韓国と提携することを望むかもしれない。共同生産合意を結べば、雇用創出と産業活性化につながるという。

<迅速な納入>

韓国の南海岸にあるハンファ・エアロスペースの工場では、巨大な自動化ロボット6台と生産労働者150人以上が、ポーランド向けに47トンのK9自走榴弾砲を製造している。

チャ・ヨンス製造部長は、需要に対応するため、50人程度の増員と生産ラインの増設を見込んでいると明かした。「基本的には、どんな注文にも応えられる」という。

ポーランド当局者らは、韓国がどの国よりも迅速な武器納入を提案したことが、選考の決め手になったと語る。K2(10両)とK9(24両)の初出荷分は、契約締結からわずか数カ月後の昨年12月にポーランドに到着し、その後、少なくとも戦車5両と榴弾砲12両が追加納入された。

これに対し、やはり武器製造大国であるドイツは、ハンガリーが2018年に発注した新型戦車レオパルト44両をまだ1両も納入していないと、ポーランド国際問題研究所のシニアアナリスト、オスカル・ピエトレビッチ氏は言う。

「この地域の主要な武器提供国であるドイツの生産能力が限られていることを考えると、韓国のオファーに対する各国の関心は、高まる一方かもしれない」と同氏は述べた。

韓国の武器産業の幹部らも、納入の迅速さが将来の顧客に対するセールスポイントになるだろうと述べている。

韓国の軍と軍需産業は密接な関係にあるため、国内の受注を調整して輸出用の生産能力を確保することができる、と関係者は言う。

欧州の防衛産業幹部は「韓国は、われわれが何年もかかるようなことを数週間から数カ月間でまとめてしまう」と語った。

航空機メーカー、韓国航空宇宙産業のグローバルビジネス&ストラテジー担当バイスプレジデントであるチョー・ウーラエ氏は、韓国は北朝鮮との緊張が絶えないため、軍事生産ラインは強いプレッシャーの下に稼働し続け、武器の開発、試験、アップグレードが繰り返されてきたと説明した。

韓国防衛事業庁(DAPA)のキム・ヒョン・チョル次長は、韓国はウクライナ戦争前からポーランドに武器を売り込んでいたが、ロシアの侵攻によってポーランドの関心が高まったと述べた。

韓国の武器が、米国やNATOのシステムと互換性を持たせる設計になっている点もセールスポイントだ。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、韓国はNATOとその加盟国に対する第3位の武器供給国であり、購入額の4.9%を占めている。

ただ、米国の65%、フランスの8.6%には遠く及ばない。

<共同生産>

韓国当局者はロイターに対し、欧州の顧客に納入しやすくするため、武器の現地生産をポーランドに働きかけたと語った。

韓国国防省は、声明で「韓国政府は軍事外交と防衛協力を推進しており、購入国との関係が単なる売り手と買い手の関係を超えた様々なパートナーシップに発展できるようにしている」とした。

ポーランドの国防省は、書面によるコメント要請には応じなかった。

<他の国なら10年>

韓国はこの1年間で初の国産宇宙ロケットを打ち上げ、国産の次世代戦闘機の初飛行を見届け、何十億ドルもの武器取引を発表した。

欧州の防衛企業の幹部は、ロイターに「他のほとんどの国にとって、これは10年間を要する課題だ」とし「われわれは長い間、韓国を過小評価してきた」と語った。

SIPRIによると、2018年から22年にかけて、韓国の武器輸出の63%を占めたのはアジア向けだ。この地域では安全保障上の懸念や米中対立が高まり、軍備が増強されている。

韓国のある外交官は「全てのアジア諸国が緊張の高まりに備えようと努めており、わが国を防衛取引において非常に魅力的なパートナーとして見ている」と指摘。「わが国は米国の同盟国ではあるが、米国ではない」と自国の位置付けを説明した。

(Joyce Lee記者、Josh Smith記者)

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