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Thursday, June 1, 2023

アンドロイド研究の石黒教授が描く「未来の生産工場」、意外 ... - ビジネス+IT

Seizo Trend創刊記念インタビュー

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バブルが弾けてから長い暗闇の「失われた30年」を経て、モノづくり大国と言われた日本のメーカーは未だに低迷し、明るい兆しが見えないままだ。これから日本の製造業はどこへ向かうべきなのか。未来の製造業の姿について、人間そっくりなロボット(アンドロイド)開発の第一人者として知られる、大阪大学大学院 基礎工学研究科 システム創成専攻教授で、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)フェローの石黒浩氏に話を聞いた。

聞き手:井内亨、執筆:井上猛雄、写真:粟飯原正晴

聞き手:井内亨、執筆:井上猛雄、写真:粟飯原正晴

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大阪大学
大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 (豊中キャンパス) 教授
兼 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)フェロー
石黒 浩 氏

大阪大学基礎工学研究科教授、ATR石黒浩特別研究所客員所長、大阪関西万博テーマ事業プロデューサー、AVITA代表取締役。アバター、知能ロボット、芸術、哲学に興味を持つロボット学の研究者。著書に「ロボットとは何か」(講談社現代新書)など

未来の工場はどうあるべきか?

 高度経済成長期以前の日本人は、生きていくことだけで精一杯であり、食べるために働くという人が多かったように思います。しかし、高度経済成長を経て、技術進歩とともに生活水準が上がり、今では生活も豊かになりました。

 そうなると、労働は以前のように単に“生きるため”といったような、豊かさを獲得するための手段ではなくなります。そうした時代において、労働とは、「人間とは何か」「生きる意味とは何か」といった問いと一緒に考えるべき、人間の生きがいに関わる問題になると考えています。

 人と関わること・遊ぶこと・学ぶことと同じように、人間が労働から喜びややりがいを感じるには、労働の中にいくつかの要素が必要になるでしょう。

 たとえば、どんな職種であれ、人間として自分の仕事に何か発見があったり、工夫する余地があったりすれば、仕事にやりがいを感じることができるでしょう。また、人とのコミュニケーションがあれば、仕事は楽しいわけです。つまり、これからの工場には、働く人にやりがいや生きがいを感じさせてくれる“仕掛け”が必要になると考えています。

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未来の工場について語る石黒氏

未来の工場ロボットに欠かせない“ある要素”

 それでは、具体的にどのようなロボットがあると良いのか。忘れてはいけないポイントがあります。それが「何も話をしない」「感情表現もない」ような無味乾燥なロボットと一緒に仕事をしても楽しくないということです。

 人間同士で働く現場であれば、「工場の機械の調子がおかしいので注意してね」と声をかければ、「わかった」と答えてくれる人がいます。そういう自然な対話があれば、人とのつながりを感じることができ、仕事の中に喜びや楽しさを感じることができます。

 つまり、人間と一緒に働くロボットにおいては、“人間らしい”ヒューマンインタフェースが重要になるということです。何も反応してくれないメーターの数字と対峙しながら働くよりも、人間が理解しやすい“人間らしい”表現で状況を教えてくれる機械と働くほうが分かりやすいですし、楽しく働けるでしょう。

 これまでも技術の進歩とともに、インターフェースは人間らしくなってきました。日本の場合は、すでに30年前から炊飯器や湯沸かし器などの家電製品に、音声認識や音声合成の機能である「VoiceーInterface技術」が搭載されていました。つまり、Siriのような技術の考え方は最初に日本から出てきたものです。

 こうした技術は、昔は海外では使われていませんでした。一方、日本のほうが人間らしいものに対する受容性が高く、早い段階からアンドロイドも受け入れられてきました。最近ではVTuberといったものも流行っています。

 そうした技術は人間にとって自然なインターフェースであるため、これから必ず世界中で受け入れられていくと私は考えています。人間の脳は人間と関わるためにできており、すべてのインターフェースが人間らしくなるのは自然な流れなのです。 【次ページ】経営者が見落としてはいけない「Z世代の変化」とは

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