組織変革に苦慮する企業は少なくない。だが、組織刷新に着手して6年で売上を約2倍、労働生産性を約3倍にした企業が存在する。遊技事業を中軸とする中堅企業メッセだ。2021年から3年連続で「ベストモチベーションカンパニーアワード」で日本一を獲得し、現在は事業多角化を推進する。同社はいかに「組織のトランスフォーメーション(X)」を成功させたのか。本連載では、『組織X 「エンゲージメント」日本一3連覇企業が語る、24のメソッド✕事例』(宮本茂、白木俊行著/プレジデント社)から、内容の一部を抜粋・再編集。「普通の人が最高の組織をつくる」ための実践的方法論を紹介する。 第4回は、メッセがどのような考えのもとに理念策定を行ったか、その過程を振り返る。 ■ Philosophy(理念策定)の事例 理念を考える上で最初にやってみるべきことは、タイムスイッチを用いて「何のために会社をつくったのか?」と考えることです。 第1章でもお伝えした通り、メッセの場合は創業者である社長・副社長が家族を養うために会社をつくりました。やがて社員が増えると、それが「家族と社員を養うため」となり、そのために借金を返さなくてはならない。すると、「利益を追求するため」の経営へと目的が変化していったのです。 その結果、借金を完済できた一方、利益だけが目的として残ってしまい、「自立支援制度」という名のリストラを実施。これで社内の雰囲気は、急速に悪化してしまいました。 そこで私たちはやっと、真剣に“経営の目的”と向き合うことになります。タイムスイッチを用いて、原点である家族を養うこと、さらにはそれを昇華して、「全従業員の物心両面の幸福」が経営の目的である、と設定したのです。 これが、のちほどご紹介する経営指針の中にもある「家族のように仲間を大切にする(大家族主義)」という考えにもつながっています。 次に、ロールスイッチを用いて、「私たちは何を大切にしているのか」を考えました。すると2つの視点から、答えを出すことができたのです。1つ目は、「お客さま視点」からの答えです。メッセは今でこそ多角化経営をしていますが、もともとは遊技事業のみを行う会社でした。 ロールスイッチで事業を考えたときに、遊技事業以外にもできることがあるのではないかと考えたのです。そこで、私たちなりに遊技事業を因数分解してみると、「射幸心」×「非日常」×「居場所」と捉えることができました。その中で自分たちの特徴にもっとも合っているのは、「居場所」である。そして、小さな子どもから高齢者まで、「居場所」はどんな人にとっても絶対的に必要だと結論づけました。なぜなら、近年は特に“孤独”が社会問題化しており、その解決のカギを握るのは、間違いなく「居場所」の存在だからです。 こうした想いを基に、私たちは「お客さまに居場所を提供すること」を大切にしているのだと気づきました。
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