[ロンドン/ニューヨーク 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] - プライベートエクイティ(PE)会社は2020年、波乱に見舞われようとしている。それは格付けが低い企業への融資をまとめて取引するローン担保証券(CLO)市場の動揺が原因にほかならない。
KKR(KKR.N)やカーライル(CG.O)といったPE会社が手掛ける多くの投資案件はこうしたローンを資金源にしている。しかし、景気悪化によって投資家はCLO購入に慎重となり、銀行はローン自体を抑制せざるを得ないだろう。つまり、PE会社は借り入れコストが跳ね上がり、恐らくディールが減少してしまう。ただし一部の業種やアジアなど特定の地域は、そうした流れに逆らって活況が期待できる。
PE会社がディールの資金を調達するためによく利用するレバレッジドローンの70%余りは、CLOとして証券化されている。そして、幾つかのトランシェに切り分けられ、相対的にリスクの高い部分はより高いリターンを提供する。米国のCLO市場は2012年以降で2倍以上に膨れ上がり、6500億ドル規模を誇る。JPモルガンの見立てでは、20年中に発行残高が1兆ドルを突破するのは間違いない。ただそうした証券化の熱狂的な動きには陰りが見えてきた。
その理由は裁定機能に、つまり裁定が働かないことに尽きる。
CLOは、裏付けとなるローンからのキャッシュフローがCLO保有者への支払いを上回る場合にうまく機能し、最もリスクが大きいトランシェは15%ないしそれ以上の年間リターンと、マネジャーへの手数料を生み出す。ところが米国の景気後退懸念や経済を巡る全般的な不安感を背景に、投資家は一部のCLOに対してもっと高い利回りを要求するようになった。利回りが大幅に上昇すれば、CLOの新規発行はやがて止まってしまう公算が大きい。
格下げも厄介な問題だ。CLOに適用される格付けモデルは、原資産のローンを額面評価することを認めている。ただしCLOに一定比率(通常は7.5%)以上の「CCC」格付け資産が含まれると、マネジャーは時価評価を強いられる。そして普通、時価は額面を大きく下回る。もしCLOの資産評価が目減りするほどに企業の格下げがあったとすれば、ローンからの収入はCLOのシニア部分のトランシェを持つ投資家への返済に回り、リスクの高いトランシェ保有者は何も受け取れなくなる。
足元の状況は既に相当脆弱に見える。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によると、高水準の企業債務と世界経済停滞の組み合わせにより、「CCC」より1段階だけ上の「Bマイナス」の格付けを付与されたローンが米CLOに占める割合は20%近くと、08年の金融危機前の2倍の高さにある。UBSのアナリストチームは、米CLOが抱える「CCC」格付けローンの平均的な割合は、20年に11%に達すると予想する。
これは二重の打撃になりかねない。CLOの高リスクトランシェ保有者は手ひどい損失を被り、新規発行分を買う意欲が失われる。一方、既存CLOは低格付け企業への貸出能力が低下し、調達コストを押し上げる。そうなると、ディールのためレバレッジドローンを活用するという仕組みに、激震が走るリスクが高まることになる。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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