「リーマンショック級か」といわれていた新型コロナ感染症の経済への影響も、当初の想定を上回り、かつてない規模の打撃を世界経済にもたらすことになりそうだ。世界経済のシナリオどころか経済のありかたを根底から覆しかねないコロナショックは英国のEU離脱後の世界にどのような影響を与えるのか。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの土田 陽介研究員のレポートを抜粋して紹介する。 コロナショックに伴う英景気の悪化は、リーマンショックをはるかに上回る。王立経済社会研究の最新4月時点での試算では、4~6月期の経済成長率のマイナス幅は前期比年率で20%を超える見込み。 過去20年間の実質GDPの前期比成長率を見ると、英国が大幅なマイナス成長を記録した局面は、1990年第2四半期(年率4.1%減)と2008年第4四半期(同8.0%減)の2回ある。特に後者は、いわゆるリーマンショックに伴う景気悪化であるが、今回のコロナショックに伴う景気悪化はそれをはるかに上回るものであることが理解できる。 こうした景気の極端な悪化を受けて、EU離脱後の「移行期間」の取り扱いにも変化が生じる模様。こうしたコロナ禍に伴う景気の極端な悪化を受けて、EU離脱後の「移行期間」の取り扱いにも変化が生じると考えられる。 英国は今年1月末で、悲願であった欧州連合(EU)からの離脱を実現した。そして今年の12月末までは、通商環境の激変緩和措置として、通商関係をEU加盟時と同様に保つという「移行期間」を設けることで英欧の双方が合意していた。 仮に年内に締結・発効できたとしても英経済に相応のショックを及ぼすものと考えられる。現在の疲弊した英国経済が、そうしたショックに耐えられるかといえば、かなり厳しいと考えざるを得ない。 交渉の相手となるEUの経済も、英国と同様にコロナウイルスの感染拡大を受けて疲弊しきっている。感染収束までの道筋が依然として不透明であるなかで、両サイドとも人的リソースを将来の通商交渉のために割く余裕はない。通商政策の自主権回復を重視するジョンソン首相とは言え、今年末の移行期間の打ち止めはかなりハードルが高い。 こうして整理すると、移行期間はなし崩し的に延長となる公算が大きい。感染拡大の収束とその後の景気回復のパスが依然として不透明であるため、移行期間の延長が年単位となる可能性は十分に視野に入る。もともと難交渉が予想されていた通商交渉であるが、皮肉なことにコロナウイルスの影響を受けて、移行期間の延期という現実的な解が実現する運びとなりつつある。 政府による巨額の経済対策も中銀の支えがないと実現不可能であるなど、マクロ経済政策の運営も非常事態にある。そのため、移行期間の延長が年単位となる可能性は十分あると予想される。
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April 21, 2020 at 04:06AM
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英国のEU離脱、コロナショックで「移行期間」年単位の延長も|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 - ニュースイッチ Newswitch
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