中国が、香港で反体制的な言動を取り締まる「国家安全法制」の導入に関する決定を採択したことが、香港人が香港を統治する、という原則のもとで運営されてきた「一国二制度」を大きく揺るがせています。 香港が香港であり続けるために、何が必要なのか。北京で知識人が集う場となってきた民営書店「万聖書園」の創業者、劉蘇里(リウ・スーリー)氏は、香港政府に対する激しい抗議行動が続いていた2019年10月のインタビューで、「中国政府は香港人の理性を信じたほうがいい」と呼びかけていました。今年1月に公開したインタビュー記事を改めてお届けします。(聞き手=朝日新聞編集委員・吉岡桂子)
改革開放の逆回転
中国政法大学講師だった劉氏は1989年の天安門事件にかかわり、20カ月間拘束された。釈放後の93年、北京の大学街に「万聖書園」を創業。ノーベル平和賞を受賞した故・劉暁波氏ら、中国政府から弾圧を受けた知識人の支援もしてきた。書店内のカフェで催すセミナーは知識人や市民活動家が集う場になってきたが、強まる統制で近年は開きにくくなっている。 私の書店ではジョージ・オーウェルの(全体主義への批判を隠喩した)『1984』や『動物農場』がよく読まれています。しかし、いつまで出版や販売が許されるのか。心配しています。 大陸ではこの5、6年で言論活動の制限と市民社会への監視が大幅に強まりました。大学の教材の審査が厳しくなり、教室に監視カメラが据えられた。密告が奨励され、知識人のSNSアカウントが閉鎖された。変わったのは香港ではなく、大陸です。間近に見ていれば、高度な自治が認められた一国二制度の期限を2047年に控えて、香港の人々が恐怖を抱かないほうがおかしいと思いませんか。大陸の都市のように改造されて、今ある自由や法治を失うのではないか、と。 ――香港で雨傘運動が起きたのも6年前のことですね。前政権が約束した普通選挙を、現政権が認めないのに怒った香港の市民が街頭を占拠しました。 中国はトウ小平氏が始めた改革開放以来、胡錦濤・前政権の時代まで、共産党の統治の本質は変わらずとも、人々は少しずつ自由になっていっていました。政治的な壁で解決できない問題があっても、社会の開放の度合いは少しずつ広がっていた。その逆回転こそ、香港で起きている問題の根本です。 昨年11月の香港の区議会選挙は民主派が圧勝しましたが、デモ隊への警察の暴力がひどくなるにつれ、若者の行動も暴力性を帯び、心配でした。 激しいぶつかりあいは、香港の人々が、香港という都市を道連れに自殺行為をしようとしているように見えました。香港は国際金融都市として中国経済にとって大事な機能を持っています。現時点では代替できる都市は大陸にはありません。中央政府も分かっている。だから、もろとも死んでやろう、というような。
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May 30, 2020 at 04:04PM
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香港が香港であるために、中国は何を理解すべきか 激しい抗議行動のさなか、北京の本屋が訴えていたこと(GLOBE+) - Yahoo!ニュース
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