いまだに毎年夏になると思い出しては夫をいじめる材料にしているのだけれど、一緒に暮らし始めて最初の夏、彼がいちごをわんさか買ってきた。
まず、フィンランドのいちごの旬は夏である。ハウスものではなく露地栽培なので驚くほど旬が短く、夏至の頃から7月にかけて1ヶ月ほど。あとの季節は全然味の違う南ヨーロッパやアフリカからの輸入ものぐらいしかお目にかかれない。なので旬の時期になるとスーパーマーケットの駐車場や街の広場に他のベリーやキノコと合わせて売る特設テントが立ち並び、みんなそれを夢中になって買っていく。
それにしても、だ。
巨大な箱の中のベリー
明日から2週間のキャンプ旅にスコットランドに出かけるというその日、その荷造りでもっとも忙しい日の夕方をピンポイントで狙って、いちごを2箱も買ってくるのはうちの夫ぐらいだと思いたい。
「今買わないと帰ってくる頃には旬が終わるから……!」
と血相を変えて夫が出て行ったときは、いちご産地の静岡県に実家がある私としては旬が短いなんて気の毒だなぁははん、ぐらいにしか思っておらず、あとはまだ慣れていなかったキャンプ旅行への荷造りをせっせと続けていたのだけれど、いざ戻ってきた夫が手に提げているそのいちごの箱がやけに大きいのに度肝を抜かれた。
日本でいちごが入っている、あの透明なプラスチックの箱なんかは比じゃない。
1箱=5kgなのだ。つまり合計10kgのいちごと、おまけにブルーベリーも10kgやってきた。もちろん冷凍用ではあるのだけれど、冷凍庫が全て埋まる勢いだ。
これが普通の家庭なら夫婦喧嘩に発展するところだろうけど、うちの場合は私が怒って、夫がしゅんとする。以上。というわけで、
「ただ冷凍するにも洗ってヘタ取って柔らかいの取り分けてジャムにしてってしなきゃいけないのに、今日それをするってことよく考えた……?」
とひと通り怒ったあとは、2人で仲良く手を真っ赤に染めながら、狭いキッチンでいちご冷凍工場を運営することとなった。いちごいちごと、大の男が赤い小さな実に心躍らせているのを見ると怒る気も失せる。
夏のベリー仕事
以来毎年ベリーの季節が来ると、あのときのようなことは二度とないようにとしつこいほどに言い聞かせているのだけれど、やってくるベリーの量は減ることなくむしろ毎年増えている。
いちご、ラズベリーに、ブルーベリー。庭で取れるグースベリー、赤すぐりに黒すぐり。
ただしそれらを捌くこちらの手も年々慣れてくるもので、最初の年こそ潰れかかったベリーをちまちまジャムにすることぐらいしか思いつかなかったけれど、今はもっと簡単にドバッと鍋に入れて煮て食べる方法を学んだ。
それがベリーのスープである。
メフケイット(mehukeitto)という名で紙パックでも売られてもいるこの飲み物は、直訳するとジューススープ、とろりと甘く、冷たいままでも温めても飲める。
それよりも更にとろみを強くして器に入れてデザートにしたものがキーッセリ(kiisseli)と呼ばれている。
とろみ付けは片栗粉。たいていのフィンランドの家庭の冷凍庫には、夏にどっさり買ったり摘んだりしたベリーが詰まっているので、あるものですぐ作れる即席ゼリーのような存在のデザートだ。ジャムほど煮込み時間も砂糖もいらずヘルシーな気分になれる冷たいデザートは一年中通してビタミン補給に重宝されている。
デザートにもなるベリーのスープレシピ
【材料】
冷凍ミックスベリー 400g
水 500ml
砂糖 50g
*片栗粉 大さじ2
*水 大さじ2
*は合わせて混ぜておく
【作り方】
1、冷凍ベリー、水、砂糖を鍋に入れて火にかける。
2、煮立ったらベリーが崩れないうちに火から下ろし、水溶き片栗粉を加えよく混ぜる。
3、再び火にかけ、とろみがつくまでざっくり混ぜる。器に移し、食べる前によく冷ます。
4、生クリーム、アイスクリームなどをかけて食べる。
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July 31, 2020 at 04:11AM
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フィンランドの夏の味「ベリーのスープ」レシピ|フィンランドで暮らしてみた|芹澤桂 - gentosha.jp
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