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Tuesday, August 25, 2020

サルサダンスの街で食べた、ホッとする味 コロンビアのタマル - 朝日新聞社

「コロンビアのカリ」と聞いて、すぐにサルサダンスを思い浮かべた人は、よっぽどのファンに違いない。サルサダンス愛好家の間ではキューバと並ぶ聖地として崇(あが)められる、踊りの街だからだ。

■連載「おうちで作る旅先の味」は、ライターの太田瑞穂さんが、旅の思い出をつづりつつ、心に残ったご当地料理を、現地の人に教わったレシピで作って紹介します。

圧巻! 本場のサルサショー

「カリ」という名で親しまれるサンティアゴ・デ・カリは、ボゴタ、メデジンに継ぐ、コロンビア第3の都市。観光を目的に行く街ではないかもしれないが、のんびりと散策してみると、飾らない普段の暮らしを垣間見ることができて趣深い。私自身、訪れたきっかけは知人の結婚式だった。

インターネットの検索では、治安に不安の募る情報ばかり目についたが、実際に来てみると思いのほかのどかである。周りをぐるりと山に囲まれ、郊外には牛たちがのんびりと草をはむ広々とした牧草地が広がっていた。

カリに来たからにはサルサは外せないということで、結婚式のお祝いのひとつとして訪れたのが、郊外の大きなテントで行われるサルサとサーカスのショー「デリリオ」だった。夜の9時過ぎから休憩を挟みながら総勢100名ほどのミュージシャンとダンサーがコロンビア各地のスタイルで華麗に舞うパフォーマンスは、圧巻の一言に尽きる。

サルサダンスの街で食べた、ホッとする味 コロンビアのタマル

サルサの街のプロたちによるパフォーマンス「デリリオ」は、夜半から深夜まで続く圧巻のショーだ

サルサダンスのスタイルは、大きくコロンビア流とキューバ流に分けられるそうだが、スピン(回転)の多いキューバと比べて、カリのサルサは軽妙なフットワークが見所だ。上半身はピタッと動かないのに、足だけ3倍速で見ているようなスピード感。色鮮やかなトロピカルカラーの衣装に身を包んだ男女のダンサーたちは息の合ったステップを次々と繰り出し、筋肉のしっかりとついた体つきが妖艶(ようえん)で、躍動感の中から色気が伝わってくる。

サルサダンスの街で食べた、ホッとする味 コロンビアのタマル

デリリオの会場である大きなテントには、軽食や飲み物を売る屋台も出ていた。柿のように見えるチョンタドゥーロはゆでてあり、クリとサツマイモを足したような味

ショーの合間の休憩時間中にも音楽は流れ続け、「待ってました!」とばかりに今度は観客たちがダンスフロアに繰り出す。音楽が流れると踊らずにはいられないのだろう。エネルギッシュに体を動かす若者の隣で、息のぴったりと合った年配のカップルが体を寄せ合い、しっとりと踊っている。先ほどのショーとはまた違った、日常の延長線上にある踊りが堪能できて、こちらもまた目が離せない。

アラメダ市場で食べたタマルのおいしさ

さて、カリでは結婚式の前後を含めて三日三晩、ごちそうを食べて踊って寝る、というにぎやかな宴の日々が続いた(その後、海辺の街カルタヘナへと移動して祝宴はさらに続く)。

そんななか、記憶に残った料理の一つが、カリ市民の台所「アラメダ市場」で食べたタマル(複数形だとタマレス)だ。市場の端の小さな屋台で、ソーセージの盛り合わせとタマルを注文すると、目の前のカウンターにモクモクとおいしそうな湯気が立ちこめた。

サルサダンスの街で食べた、ホッとする味 コロンビアのタマル

(左)市場の片隅にあるテレサさんの屋台には、ソーセージやタマルなどがずらり並び、カウンターの後ろの鍋で調理されている
(右) タマル(手前)のほか、ルロというかんきつ類のジュースとソーセージの盛り合わせも頼み、友人と2人でおなかいっぱい食べて約700円だった

練ったトウモロコシの粉「マサ」と肉をバナナの葉で包んで蒸したタマルは、疲れた体にしみ入る優しい味わいで、肉はほろほろと崩れるほど柔らかい。お皿いっぱいの山盛りだが、驚くほどあっさりとおなかに収まってしまう。旅先で記憶に残るのは、意外とこういうホッとする味だったりする。

サルサダンスの街で食べた、ホッとする味 コロンビアのタマル

小高い丘の上、サンアントニオ教会のある公園の入り口には、おやつを売る屋台がいくつも出ていた


サルサダンスの街で食べた、ホッとする味 コロンビアのタマル

公園で夕暮れをのんびり楽しむ地元の人たちが見つめていたのは、はるかかなたではためく凧(たこ)。公園には親子連れなどで凧を揚げている人が多い

ダニーさんの義母のレシピは

今回レシピを教えてくれたのは、ボゴタ在住のミュージシャン、ダニーさん。奥様のお母様にわざわざ聞いてくれたそうで、「手間はかかるけど、とってもおいしいレシピ」とのこと。

サルサダンスの街で食べた、ホッとする味 コロンビアのタマル

レシピを紹介してくれたダニーさんはボゴタで活躍するミュージシャン(https://www.fatso.com.co/)。去年来日した際のライブでは、ハスキーで力強い歌声で会場を瞬時にとりこにした

覚悟はしていたものの、やっぱり手間がかかるのか……。コロンビアでは食堂などで食べられる手軽な料理だが、作るのには結構時間がかかるのだ。しかし、当然ながら、もう一度コロンビアに行くよりは家で作った方がずっと早い。思い切って作ってみると、出来立てのタマルは湯気とともにトウモロコシの香りがふわっと立ちこめ、フーフーと冷ましながらほおばる味はやっぱり優しく、自宅で食べてもなんだかホッとするのだった。

<タマル>

サルサダンスの街で食べた、ホッとする味 コロンビアのタマル

タマルの材料

【材料(4個分】
スペアリブ 100g
手羽元 4本
粗びきソーセージ 50g
タマネギ(みじん切り) 1/3個
トマト(みじん切り) 1個
ニンジン(縦に切る) 1/2個
赤ピーマン(縦に切る) 1/4個
ニンニク(みじん切り) 1片
パクチー(軽く刻む) ひとつかみ
クミンパウダー 小さじ1
塩 小さじ 1/4
コショウ 少々
ブイヨンキューブ 1個
酢 大さじ1/2
ひよこ豆(一晩水につけて戻す) 50g

冷やご飯 100g
マサ 100g
水 1/2〜1カップ

バナナの葉(もしくはクッキングシート)
調理用たこ糸

【作り方】
1. 鍋を熱して油を入れ、スペアリブ、手羽元、ソーセージを入れて表面に色がつくまで焼く。
2. 焼いた肉を取り出し、同じ鍋でタマネギとニンニクを炒め、火が通ったらニンジン、赤ピーマン、トマトを入れて炒める。
3. 2にクミン、塩コショウ、酢、パクチーを入れて混ぜ、焼いた肉を戻す。ブイヨンキューブとひたひたになるくらいまで水(分量外)を入れ、アクを取りながら弱火で1時間煮込む。
4. 煮込み終わったら肉、ニンジン、赤ピーマンを取り出して取り置く。残った煮汁にひよこ豆を入れて15分煮る。
5. 別の鍋にマサを入れ、1/2〜1カップの水を少しずつ足してこね、粘土くらいの質感にする。
6. 5にひよこ豆入りの煮汁を少しずつ入れ、木ベラで混ぜ合わせる。
7. 6に冷やご飯を入れて混ぜ、緩いようなら火にかけてもったりするまで混ぜながら水分を飛ばす。
8. バナナの葉は使う前にぬれぶきんなどで表面をふき、30cmほどの長さに切っておく(クッキングシートを使う場合も30cmほどの長さに切る)。
9. 8の真ん中に煮汁を入れて練ったマサを1/4のせ、その上に肉、人参、赤ピーマンをのせる。

サルサダンスの街で食べた、ホッとする味 コロンビアのタマル

練ったマサの上に具材を並べていく

10. バナナの葉の左右の端を合わせ、折りたたみ、上下の余っている部分もたたんで具材を包む。包んだらたこ糸を十字にかけ、しっかりと結ぶ。

サルサダンスの街で食べた、ホッとする味 コロンビアのタマル

包み方(写真はクッキングシート)。左上から時計回りにご覧ください

11. 10を蒸し器で3時間蒸す。途中、30分ごとに水を足して、空だきをしないように注意する。

サルサダンスの街で食べた、ホッとする味 コロンビアのタマル

ボリュームがあるので、少しサラダを添えればこれだけで1食になる。お弁当にも良さそう

12. できあがり! アヒソースを添えてどうぞ。

アヒソース:材料(万能ネギのみじん切り1/2カップ、粗く刻んだパクチー1/2カップ、粗く刻んだ赤唐辛子1本、トマトのみじん切り半個分、ライム果汁1/2個分、塩小さじ1/2、酢小さじ1.5、水小さじ2)をなめらかになるまでミキサーにかける。

*「マサ」はトウモロコシから作られる粉で、タコスの皮の材料にもなる。スーパーでは手に入らなかったため、ネット通販で購入した。今後紹介するタコスでもマサを使うので、余った分はぜひタコスに活用してください。
*バナナの葉は裂けやすい。包んでいるうちに裂けてしまったら、上からクッキングシートで包む。裂けたまま蒸すと中身が出てしまう。
*出来上がったタマルは冷ましてから冷蔵庫で3日ほど保存できる。食べる時は、30分ほど蒸すか電子レンジで温める。

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PROFILE

太田瑞穂

ライター、翻訳&通訳。旅先でその土地の日常的な暮らしやそこに根付く文化を少しだけ体験するのが好き。

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August 26, 2020 at 05:01AM
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