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Tuesday, September 15, 2020

「信用力」のために、スタートアップは事業会社から資金調達すべきか? - Forbes JAPAN

先週の記事では、起業家がシナジーを求めて事業会社/CVCから資金調達するかどうか検討するときに考慮するべきことについて書きました。今週は、事業会社/CVCから資金調達する理由としてよくあげられるもう1つの要素、「信用力」について説明したいと思います。

そもそも、スタートアップとはその定義からして新しい会社であるため、ステージによって異なりますが、認知度がゼロ、もしくは比較的低い状態にあります。そして、業界によっては、この信用力のなさがマーケティングや販売、PR、採用活動など、ビジネスの様々な場面においてボトルネックになりかねません。特にレガシー業界の場合、認知度や信用力の高い企業の名前なしに、潜在的な顧客や取引先から信頼を得るのは難しいかもしれません。採用に関しても、よく聞くブランドの会社のほうが、転職の際に両親や配偶者から理解を得られやすいでしょう。このような理由から、知名度の高い企業から資金調達することで、注目されやすくなるのではないかと、考える起業家もいるかもしれません。

結論から言うと、確かにその可能性はあります。事業会社から資金調達することは、信用力のなさをネックに感じているスタートアップにとって、新たな可能性を広げるきっかけになるかもしれません。また、「シナジー」のための資金調達と違い、信用力を高めるための資金調達では、事業会社/CVCからそれ以上を求める必要がありません。投資責任者に社内で積極的にプロジェクトを進める実力があるかどうか心配する必要もなければ、先週のシナジーの記事で取り上げたその他の考慮事項についても、確認する必要がありません。シナジーがまったく実現しなくても問題はないのです。事業会社が投資し、スタートアップがプレスリリースを出せば、それで目的達成です。事業会社との関係性そのものが、付加価値になるのです。

一方で、ブランド力がマイナスの影響を及ぼす可能性もあります。例えば、同業者間のライバル意識が強い業界で、その中の1社から資金調達した場合、それ以外の会社から今後の取引を拒否されるかもしれません。実際、メガバンクや大手商社、不動産会社などは、同業他社の「色が付いている」企業に対してそのような態度を取る傾向があります。こういったリスクを軽減するために、なんらかの方法で、ライバル関係にある複数の事業会社に同じラウンドで投資してもらうという手段を取るスタートアップもあります。「オール・オア・ナッシング」なアプローチを取ることで、どちらの結果に転んだとしても、中立的な立場を守れます。

ただ、事業会社/CVCから資金調達する目的がブランディングのみであるのなら、他の方法もあるかもしれません。投資に伴う様々な制約を受けずに、事業会社からの信用力を借りるメリットを享受できる方法もあります。例えば、事業会社によっては、アクセラレーター・プログラムなど、投資抜きにスタートアップと提携するプログラムも提供しています。それらのプログラムに参加すれば、メディアで取り上げられ、ホームページやマーケティングでのアピールポイントとして活用できるかもしれません。また、ベンチャー キャピタリストやエンジェル投資家の中にも、同様のメリットを提供できるような高いブランド力や信用力を持つプレイヤーが存在します。

どんな決断においても言えることですが、事業会社/CVCから資金調達する際には、ブランディングなどのメリットだけではなく、デメリットについても考慮する必要があります。タイミングや競争、条件などの要素についても今後の記事で説明する予定ですが、それらについても検討することで、資金調達を総合的に評価することにつながると思います。

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