――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の苦境は広範にわたる巻き添えを生んでいるが、全てがそのせいとは言い切れない。単に成功する価格に設定されていないこともある。実際、今年の日本有数規模の新規株式公開(IPO)も、少しばかり高値に見える。
半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスは28日、東京証券取引所へのIPOを延期すると発表した。IPOでは新株と既存株の売却で合わせて最大30億ドル(約3200億円)ほど調達する予定だった。同社はNAND型フラッシュメモリーで世界2位のメーカーだ。東芝は2年前、原子力発電事業の迷走で経営危機に陥り、キオクシア(当時の東芝メモリホールディングス)をベイン・キャピタル率いるコンソーシアム(企業連合)に売却した。IPOの延期によって、保有するキオクシア株40%の一部を現金化する計画も棚上げになることから、東芝株は28日の取引で3%下落した。
キオクシアは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)と株式市場の不安定な動きを延期の理由に挙げた。同社は顧客企業であるファーウェイに対する米輸出規制の影響を理由に、今月に入り公開価格レンジを引き下げていた。
こうした理由には、特に短期的に見ればある程度の正当性がある。だがパンデミックは実のところ、データセンターに使われる半導体の需要を押し上げた。それにファーウェイ競合の中には、市場シェアを奪って新たな需要を創出する企業もあるかもしれない。
キオクシアのIPO価格の高さは、延期の根源的な理由である公算が大きそうだ。価格レンジの中央値でみた評価額はおよそ160億ドルと、キオクシアが9月に提示価格を引き下げる前の約200億ドルを既に下回っていた。一方、バーンスタインのアナリストは今月、同社の評価額をわずか115億ドルと試算した。
ベインと東芝は多額の資金を得る機会を逸したかもしれないが、IPO延期は他にも悪影響を及ぼす恐れがある。キオクシアは既に約130億ドルもの純負債を抱えていることからも、事業への投資計画を先送りしなければならない可能性がある。競争の激しいメモリーチップ業界では、新たな製造設備への継続的な投資が欠かせない。市場リーダーである韓国サムスン電子の資本投資以外にも、中国が自己技術への依存度引き上げを模索する中、同国の半導体メーカーは投資を拡大している。ライトストリームリサーチの創業者、加藤ミオ氏はスマートカーマの記事で「半導体業界は過小投資で成功できることで知られる業界ではない」と指摘した。
キオクシアは栄光の日を目指して粘るより、目標を引き下げた方がいいかもしれない。
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