品川―名古屋間の2027年の開業が極めて困難になったリニア中央新幹線を巡り、環境への悪影響などを懸念して南アルプストンネル静岡工区の着工を認めていない静岡県の川勝平太知事が品川―甲府間の先行開業を盛んに主張している。先行開業を前提にリニアと在来線、東海道線を乗り継ぐ「富士山周遊コース」による観光振興も提唱する。だが、JR東海は先行開業に否定的だ。【山田英之】
リニアの品川―名古屋間は神奈川(相模原市)、山梨(甲府市)、長野(飯田市)、岐阜(中津川市)の各県に駅が設置される。JR東海は名古屋まで開業した後、37年に大阪への延伸を目指す。建設費(車両費も含む)は約9兆円。しかし、川勝知事は南アルプストンネル静岡工区の工事による大井川の流量減少や南アルプスの自然環境への悪影響を懸念し、これまで着工を認めていない。
「三つの鉄道で富士山周遊コースが実現すれば、リニアの最新技術を体験できる。技術は使わないと停滞する。技術者の士気も衰えかねない。部分開業が重要だ」。8日にあった定例記者会見で、川勝知事は品川―甲府間の先行開業の意義を語った。
川勝知事の提唱する富士山周遊コースは、リニアで品川から甲府まで行き、JR身延線と東海道線を乗り継いで静岡駅へ移動。東海道新幹線で品川まで戻るというイメージだ。東京都、山梨、静岡県を経由して富士山を取り囲むように1周。バスの乗車時間も含め、1周の所要時間を3時間45分と試算する。川勝知事は提唱の理由について「27年の開業は極めて困難。南アルプスのことは、じっくり考えた方がよい。利用できるものは活用する考えを持ってしかるべきだ」と説明した。
6月に実現したJR東海の金子慎社長とのトップ会談の場でも先行開業は提案されていた。川勝知事は「リニアを活用して収入も入る。富士山1周は夢のある話」と持ちかけた。だが、金子社長は「リニアの一番の目的は東海道新幹線のバイパスを造ること。東京と大阪を直結することが大きい。途中だけ造っても、予定にない施設を造らなくてはいけない。運営しがたい」と賛同しなかった。
JR東海は品川―大阪間を最速67分で結ぶことによる経済効果だけでなく、大地震などの自然災害に備えることや東海道新幹線の老朽化対策の観点からも新幹線のバイパスの役割を果たすリニアの早期実現に理解を求めている。
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