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Friday, November 20, 2020

競泳・渡辺一平、「絶対王者」であるために…リレーコラム - スポーツ報知

 絶対王者として、あるべき姿を目指さなくてはいけない。改めてその思いを強くするきっかけとなったのが、10月に行われた日本短水路選手権でした。

 強化の一環として、タイムを求めるより、高強度のレースを何度もこなすことが大きな目的でした。エントリーは100、200メートルの平泳ぎと個人メドレーの4種目。それぞれ予選、決勝があるので、2日間で8レース泳ぐ計画でしたが、初日の100メートル平泳ぎで予選落ちしたのです。

 自分自身に猛烈に腹が立ちました。一瞬でも「個人メドレーも出ているし、仕方ない」と思ってしまった自分、周囲から「1組目だから仕方ないよね」と言われてしまった自分に。「絶対王者」と呼ばれる人なら、甘えや同情を引き起こすレースはしないものだ、と思い直したのです。

 2日目の最後は本命種目でもある200メートル平泳ぎ。就寝前のストレッチから、サプリメントの摂取の仕方、陸上での準備…スイッチを切り替えて臨みました。結果は2分2秒91の自己ベストでの優勝でした。周囲の予想を覆し、どういう状況でも勝てることを見せつけられたのは、五輪に向けていいステップになったと思います。

 僕も少し前までは日本の中でも挑戦者の立場でした。まだ未熟ではありますが、今は200メートル平泳ぎでは「渡辺一平に勝ちたい」と思ってくれる選手も多くいると感じています。練習拠点とする早大では、後輩が「絶対勝つ」という気持ちをむき出しにして普段から挑んできます。僕も、その気持ちを真摯(し)に受け止め、全力で断ち切るくらいの気持ちで泳いでいます。そういう素晴らしい環境で勝負への執着心も自然と磨かれています。

 「絶対王者」と言えば、やはり北島康介さん。思い出されるのは北京五輪の200メートル平泳ぎです。金メダルだったにもかかわらず、世界記録を出せなかったという悔しそうな表情…。あくまで上を見ているからこそで、心から「すごい」と思いました。「こういう人になりたい」と抱いた憧れが、今も僕の競泳人生の根底にあります。

 ◆渡辺 一平(わたなべ・いっぺい)1997年3月18日、大分・津久見市生まれ。23歳。2014年南京ユースオリンピック男子200メートル平泳ぎで優勝。16年リオ五輪で同種目五輪記録、翌年1月の東京都選手権では2分6秒67の世界記録(当時、現在は日本記録)を樹立した。同種目で昨年の日本選手権で初優勝、世界選手権で2大会連続の銅メダル。現在はトヨタ自動車に所属し、スポーツマネジメントをLDH JAPANが行う。193センチ、80キロ。

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