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Sunday, November 29, 2020

コラム:ドル/円相場のカギ握る米金利動向=亀岡裕次氏 - Reuters Japan

[東京 30日] - 米大統領選挙の直後はドルも円も他通貨に対し下落し、ドル安と円安が同時に進んだが、円安よりもドル安の方が大きく、ドル/円は103円台へ反落した。しかし、その後はドル安が鈍化して円安が優勢となり、ドル/円は上昇に転じた。

11月30日、 米大統領選挙の直後はドルも円も他通貨に対し下落し、ドル安と円安が同時に進んだが、円安よりもドル安の方が大きく、ドル/円は103円台へ反落した。写真は米ドル紙幣。2018年2月撮影(2020年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)

リスクオンが円安とドル安に作用するなかで、米長期金利が低下から上昇に転じたため、円安とドル安のバランスが変化し、円安が優勢となったわけだ。同じリスクオンであっても、ドル/円はドル安になったり円安になったりと不安定で、米金利の動きに左右されやすいと言える。

<米金利との相関が高まるドル/円>

ドル/円をクロス円(円に対するドル以外の通貨の為替)とドル為替(円以外の通貨に対するドルの為替)に分解したうえで、その動きの特徴を見てみる。

まず、最近の米株価と為替の相関については「株高(リスクオン)でクロス円上昇(円安)、株安(リスクオフ)でクロス円下落(円高)」となる傾向があり、米株価とクロス円は順相関にある。

一方、「株高でドル安、株安でドル高」となる傾向があり、米株価とドル為替は逆相関にある。このように株価の変動に対して円とドルが同じように動く傾向にあるため、米株価とドル/円は相関が低下している。

ドル/円は、円に左右されるとリスクオンで上昇、リスクオフで下落し、ドルに左右されるとリスクオンで下落、リスクオフで上昇しやすくなる。最近はリスク許容度が変化した場合に、円とドルが同調するように動くため、ドル/円は変動しにくいわけだ。

では、米金利と為替の相関はどうか。「米金利上昇でクロス円上昇(円安)、米金利低下でクロス円下落(円高)」となる傾向があり、米長期金利とクロス円は順相関である。

一方、米長期金利とドル為替は「米金利上昇でドル高、米金利低下でドル安」というように、やはり順相関に傾いている。つまり、米金利上昇では円安とドル高が重なってドル/円が上昇しやすく、米金利低下では円高とドル安が重なってドル/円が下落しやすい。米金利が変動すると、ドル/円は変動しやすいわけだ。

<ドル/円変動のカギを握る日米金利差>

そうなると、リスク許容度を示す株価よりも、米金利の動向がドル/円相場変動のカギを握ることになる。米長期金利は8月に反発し、それ以降、日米長期金利差が拡大している。米大統領選挙前には、バイデン政権になれば財政支出と財政赤字が拡大するとの見方や、米連邦準備理事会(FRB)への追加緩和圧力が後退するとの見方から、米長期金利が上昇した。

その後、上院選で共和党が過半数を維持するとの見方から、財政支出拡大が困難になると見て米長期金利は低下したが、新型コロナウイルスのワクチン開発期待などにより再び上昇した。日米長期金利差の拡大は、ドル/円を上昇しやすくする要因である。

だが、日米金利差が拡大した割にはドル/円の上昇は鈍い。その一因は、米実質金利の低下によるドル安圧力と考えられる。10月以降は米実質金利がやや上昇してドル安圧力が後退し、日米名目金利差の拡大に応じてドル/円が上昇する局面も出てきたが、FRBの緩和長期化期待などを背景に米実質金利の上昇は抑制されている。

日本に比べ米国の名目金利と実質金利が相対的に上昇すれば、円よりドルが買われてドル/円は上昇しやすくなるうえ、リスクオン局面でドルより円が売られてドル/円が上昇しやすくもなるだろう。ただ、米景気回復が進んで金融緩和期待が後退するまでは、米金利とドル/円の上昇は緩やかになりそうだ。

<ねじれ議会ではドル/円の上昇確率が高い>

過去のデータを振り返ると、米議会の上下両院で民主党多数や共和党多数のケースより、両院の多数政党が異なる「ねじれ」のケースの方がドル/円の上昇確率が高い。しかも、米議会がねじれで米大統領が民主党のケースは、共和党のケースよりもドル/円の上昇確率が高い。ねじれ議会で必ずしも財政支出が抑えられ、米金利とドル/円が下落しやすいとは限らないのだ。

米上院の残り2議席を巡るジョージア州の決選投票が2021年1月5日に行われる。共和党が1議席でも獲得すれば上院の過半数を維持するが、市場はほぼ織り込み済みのため、米長期金利とドル/円が下落する可能性は低いだろう。

一方、2議席ともに民主党候補が勝てば、上下両院で民主党多数となるので、財政支出拡大期待から米金利とドル/円が上昇しやすい。トランプ大統領が敗北を認めない中での追加経済対策の遅れが共和党支持率を低下させる可能性もあり、決選投票の結果は予断を許さない。

近年は共和党より民主党の方が保護主義的で、ドル安志向とは言い難い。むしろ、バイデン政権になればトランプ政権より保護主義が弱まり、それがリスクオンの円安や米金利上昇のドル高に働く可能性もある。バイデン政権への移行が進んで政策方針が明らかになるにつれて、ドル/円が上昇に傾くことも考えられる。

<新型コロナ感染拡大がドル/円の下落圧力に>

米長期金利とドル/円に下落圧力が働くとすれば、新型コロナの感染拡大により米景気悪化懸念と追加緩和期待が強まる場合だろう。欧州の新規感染者数は行動規制強化の効果が表れて増勢が鈍化しつつあるが、米国では感染拡大が鈍化していない。ワクチン接種が始まっても、早期に感染拡大が抑制されるとは限らない。

このまま感染拡大が止まらないと、行動規制強化を余儀なくされ、景気悪化を招きやすくなる。米国の景気指標はすでに市場予想に比べて弱まりつつあり、景気指標の悪化が明確になると、リスクオフと米金利低下が円高・ドル安圧力となるだろう。

中長期的にはワクチン効果で感染が抑えられるようになり、世界景気が回復基調をたどるなかで、米金利上昇のドル高とリスクオンの円安により、ドル/円が上昇していくのではないだろうか。ただ、当面は感染拡大が一時的に景気を悪化させるリスクもあり、ドル/円の上昇は緩やかなものとなりそうだ。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*亀岡裕次氏は、大和アセットマネジメントのチーフ為替ストラテジスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て現職。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

編集 田巻一彦

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