情報誌や看板、ウェブサイトなど色々な手段で告知される賃貸住宅の情報。その告知に対する反応は媒体によってどのような違いが生じているのだろうか。賃貸住宅の管理会社による協会「日本賃貸住宅管理協会」の調査「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)」(※)の報告書から、その実情を確認する。
今報告書では「反響効果」と「反響数」がそれぞれ別の項目で掲載されている。「反響効果」は回答者(賃貸住宅業者)の主観的な判断によるところが大きく、あるいは「利用媒体」による結果が直接には結びつきにくいもの(要はリアクションの状況を雰囲気的に答えてもらったもの)。「反響数」は具体的な数字のカウントで比較できるもの、あるいは利用「される(お客から見た場合)」媒体そのもの。
例えば看板設置による「反響効果」は、お客に直接「看板を見てきました」と教えてもらうことで初めて効果のほどが確認できるが、そうでない限り変化があったとの把握はし難い。看板を設置してから来客数が倍増して急に忙しくなれば、そして看板に書かれているキャッチコピーを多くのお客が口にしていれば、明らかに効果があったような実感、「反響効果」があった、増加したと認識できる。また、問い合わせのメール数が5割増しとなれば、それは「反響数」が増加したことになる。
ともあれニュアンスとしてはおおよそ同じであるため、内部で区切りはしたが、同一のグラフにまとめ、状況の把握がしやすいようにした。なおSNSとはソーシャルメディアのこと。
多くの項目でオレンジ色の色塗り部分(減少意見)が少なく、緑色の色塗り部分(増加意見)の多さが目に留まる。特にカタカナ系項目、つまりインターネット関連のメディアの増加が著しい。一方で紙媒体系は「緑色が少ない」「オレンジ色が多い」値を示しており、状況的には軟調である。
・賃貸住宅情報の専門誌「情報誌」や「自社誌」の集客効果は減少。
・サイトやSNS(ソーシャルメディア)、メールなどインターネットによる賃貸物件の情報提供成果は大きく増加している。
・「直接来店」は大きく減少。
各項目間の相対関係としては、ここ数年の動向がほぼ踏襲されている。つまり「検索性・比較性・情報のスピード感の点で、インターネットがベストツールとして選ばれている」「『情報誌』『自社誌』の需要はインターネットに食われた形」となる。なお「直接来店」の大きな減少の動きは、調査期間から推測するに、新型コロナウイルス流行による外出自粛・他人との不用意な接触自粛が少なからず影響したようだ。
それぞれの項目において動きを把握しやすくするため、「増加」から「減少」を引き、いわゆるDI値を算出し、その結果をグラフ化したのが次の図。リリース本文にあるDI値ではなく、今記事作成のために独自に算出している値であることに注意。
メールやポータルサイトでの反響数の増加が著しく、自社ウェブサイトはそれに続くも勢いとしてはやや劣る。SNSも増加してはいるが今一つ。
そして紙媒体が他の媒体と比べて軟調な状況にある、つまり反響効果が思わしくない(と管理会社に認識されている)事実が改めて確認できる。「旧来紙メディアや直接アプローチ=軟調」「新メディアや間接アプローチ=堅調」といった各ツール・ルートが置かれている立場が明確に数字となって表れている。
反響数項目(右側)では「メール」が一番効果が上がっている。そして「電話・FAX」「直接来店」の順と続く(「メール」以外は反響が減っているが)。利用者側の「手間をかけず、時間を拘束されず、確実で自分の需要にあった情報に関して業者へ確認をしたい」との考えが見て取れる。つまり、
・「来店」…時間を多分に必要とする。足を運んでも担当がいない可能性がある。いてもその場で求めていた回答が得られるか確証が無い(大抵の不動産屋へは「一見さん」となるので、その不動産屋の挙動までは分からない)。新型コロナウイルスの流行で不用意な他人との相対は避けたい。
・「電話」…時間は短時間で済み、足を運ぶ必要は無い。しかし担当がいないかもしれない。再度の電話が求められる可能性もある。
・「メール」…時間はかからない。担当の都合に合わせて返事がもらえるはず。ただし望んだレスポンススピードで返事が来るとは限らない。
と解釈できる。
「効率よく条件のよい物件探しをしたい」「購入では無く賃貸なのだから、支払い対価相応のリソースで物件を探したい」といった借り手の視線で考えれば、インターネットの利用は、より適切なツールを選んでいるに過ぎないことが分かる。特に昨今ではスマートフォンやタブレット型端末など、大型の画面を持つ、そして機動性に優れたモバイル端末の普及が進んでいる。映像やマップ機能との連動性を活かした、多方面からの情報提供により、利用者はより確かな品定めをすることが可能な時代である。
それらの特性を活かした、「より適切に情報を得られた」と利用者が満足でき、賃貸契約の具体的な話へと進めたい、と思うようなサービスの提供が求められよう。
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【42.3%の人が望んだのは……住宅メーカーのサイト、どんな情報の充実を望みます?】
※賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)
日本賃貸住宅管理協会会員に対して半年ごとに定期的に行われている調査で、直近は2020年10~11月にインターネットを用いて実施。有効回答数は189社(回収率14.0%)。2020年4月1日から2020年9月30日に関する状況についての回答。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。
からの記事と詳細 ( インターネットは好調…賃貸住宅業者への反応の媒体による違いをさぐる(2020年12月発表版)(不破雷蔵) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース )
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