赤と金色の灯籠や中国語の看板が並ぶチャイナタウンのパンチョラン通り。その一角にある「山東餃子68」は、密かに在留邦人にも人気の中華料理店だ。聞くところによると、サラリーマンが主人公のマンガ「島耕作」シリーズにも登場したことがあるという。これはインドネシアに住む日本人として行っておくべき、と足を運んだ。
うっかりすると通り過ぎてしまいそうなローカル食堂に見えるが、入り口の軒下をのぞき込むと、しっかりロゴの入った看板がある。左側に「山東餃子」そして右側には「餃子王将」という日本人に馴染み深い文字も。看板の下では店員がひたすら餃子を作り、焼いている。その熟練した手さばきから、おいしいに違いないと確信できた。
餃子の焼ける匂いに食欲をそそられながら、店内に入ると、外見のローカルな雰囲気とは違い、店内は清潔に保たれている。メニューを開くと、早速餃子が目に飛び込んできた。焼き餃子と水餃子があるようだ。
注文したのは豆腐と野菜を煮込んだスープ、豚肉と野菜を卵でとじた中華風オムレツ、そして忘れてはならない焼き餃子。飲み物には中国茶の涼茶を選んだ。
レジにいたルシア・ウィグナさん(41)は、この店を1968年に開業したティー・ソン・アンさんの孫にあたる。現在はルシアさんの夫と甥の3人に加え、地元スタッフを数人を雇って店を切り盛りしている。そんな話を聞いている間もひっきりなしにお客さんが店内に入ってくる。店内での食事だけでなく、餃子のテイクアウトも人気があるそうだ。
餃子を焼いているハディ・スギトさんは30年もここに勤めている。「この店は何度も移転を繰り返してきた」と懐かしそうに語り、10年以上前にこの場所に落ち着いたことを教えてくれた。「今の場所に移ってから、日本人のお客さんが増えた」という。
テーブルに運ばれてきた焼きたて餃子は、日本で食べるものより豚肉がしっかり詰まっている。中華料理には欠かせない黒酢でいただいた。豆腐スープや、ふわふわの卵とじも飽きずにどんどん入ってしまう。初めて頼んでみた涼茶は薬膳風味ですっきりしていて、脂っこい中華料理にぴったりだ。
お腹いっぱいで満足し、店を出る際にルシアさんに看板について尋ねた。なぜ「餃子王将」なのだろう。なんでも、常連の日本人が持ち込んだアイデアの名残らしい。
日本人なら誰もが知る「餃子の王将」。もちろん系列店ではないが、餃子王将の味を知る人々が親しんできた「山東餃子68」。その味は華僑などの地元の人からも日本人からも長く愛されてきた。今年の旧正月にはどんな賑わいを見せるのか、また楽しみだ。 (三好由華、写真も)
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