全世界がワクチン確保戦争の真っただ中にいる。特に90%以上の免疫効果が確認された米ファイザー社とモデルナ社のワクチンの確保競争が激烈だ。しかし依然として韓国国内では両社のワクチンを受託生産する企業(CMO、医薬品製造受託機関)がない。政府が自慢してきた、いわゆる「Kバイオ」関連の各企業はなぜ、このワクチンの受託生産すらできないのか。 ■「新型コロナに対する不安」韓国が世界14カ国で1位
従来のワクチンは、毒性をなくしたウイルスや遺伝子組み換えをしたウイルスの一部のたんぱく質を人体に注入し、免疫反応を誘導するという原理だ。しかしファイザーとモデルナのワクチンは、作り方が異なる。ウイルスのたんぱく質ではなく、このたんぱく質形成を誘導する遺伝子(mRNA)によって免疫反応を誘発させる。ほかのワクチンよりも安全だが、製造方法は難しい。 世界的にも、ファイザーとモデルナのワクチン以前に実用化されたmRNAワクチンはなかった。韓国の各企業もmRNAワクチンを大量生産した経験はない。SKバイオサイエンスが受託生産しているノババックス・アストラゼネカのワクチンもmRNAワクチンではない。ノババックスはたんぱく質、アストラゼネカはウイルスを利用したワクチンだ。さらに、国内の代表的な受託生産企業、サムスンバイオロジクスはワクチンを生産したことが全くない。現在は新型コロナウイルス感染症の治療薬だけを生産している。 ワクチンの種類によって生産施設が異なるため、国内でmRNAワクチンを生産するためには新たに設備を作る必要がある。現在、mRNAワクチンの生産設備を備えた企業は韓国には1社もないという。ある受託生産企業の関係者は「今から設備を作って生産に取り掛かるとしても、今年半ばからの生産は不可能」だとして「ワクチンを生産するなら他の医薬品生産をストップしなければならない、という現実的な困難がある」と話した。別の企業の関係者も「設備のある企業であっても、今契約する場合、技術移転を完了させて設備の仕様を整えなければならないため、今年中の生産は不可能」と述べた。 設備を整えたとしても、将来的に活用し続けられるのかも不透明だ。ある企業の関係者は「ウイルスやたんぱく質などを使って開発されるワクチンは多数あるため、コロナ以降も関連設備を活用する可能性は高いが、mRNAワクチンは今後どのようなものが開発されるか分からない状況であるため、企業としては大規模投資は荷が重い」と話した。
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