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Wednesday, February 3, 2021

お腹の膨らみや不正出血など、女性特有のがんで気を付けたい5つの症状を解説(重見大介) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

女性特有のがんは、若い人にも無関係ではない

日本人の死因第一位は「がん」(悪性腫瘍)。

高齢化の進む日本では患者数が年々増加している病気です。

数十年前に比べると検査や治療の進歩は目覚ましく、もし診断されても、早期に発見できれば高い割合で治癒を目指すことも可能になってきました。

しかし、それでもがんはやはり怖い病気。

以下のような特徴があることは紛れもない事実です。

・多くのがんは加齢とともに発症率が高まるが、若い人でもかかることはある

・治療薬の効果がとても薄い「難治性」のタイプがある

・治療(抗がん剤や放射線治療など)による心身への負担が大きい

・治療が長期間に及ぶと経済的負担も大きくなる

このように、若い方でも決して楽観視できない病気であることは間違いありません。

特に、女性特有の「婦人科がん」には20代から見つかるものもあるため注意が必要です。

婦人科がんは主に子宮、卵巣、乳房に発生する

それでは、女性特有のがんとはどんなものがあるのでしょうか。

代表的ながんは以下の通りです。

・子宮頸がん

・子宮体がん

・卵巣がん

・乳がん

(他に絨毛がん、腹膜がんなど稀な病気もあります)

各がんの特徴を簡単に整理しておきます。

(1)子宮頸がん

・子宮の入り口(頸部)にできるがん

・発症は20代後半から増え始め、30代後半〜40代でピーク

HPVワクチンで予防が可能

・公費による子宮がん検診で早期発見の可能性がある(20歳〜)

*詳しくは国立がん研究センターのウェブサイトもご覧ください。

(2)子宮体がん

・子宮の内部にできるがん

・発症は40代から増え始め、60代までにピーク

・公費による定期検診はなく、閉経前後での不正出血が重要なサイン

*詳しくは国立がん研究センターのウェブサイトもご覧ください。

(3)卵巣がん

・子宮の両側にある卵巣にできるがん

・発症は40代から増え始め、50代前半から60代前半でピーク

・公費による定期検診はなく、症状が出にくいため早期発見が難しい

*詳しくは国立がん研究センターのウェブサイトもご覧ください。

(4)乳がん

・乳房にできるがん

・発症は40代から増え始め、40代後半〜60代後半でピーク

・公費による乳がん検診で早期発見の可能性がある(40歳〜)

*詳しくは国立がん研究センターのウェブサイトもご覧ください。

なお、子宮体がんと卵巣がんで公費による定期検診が実施されていない理由は、こちら(産婦人科オンラインジャーナル)をご参照ください。

早期発見のために注意が必要な症状とは?

それでは、婦人科がんの早期発見にも役立つような、気をつけたい症状とはどのようなものがあるのでしょうか。

具体例をいくつか紹介いたします。

(1)生理周期は順調なのに不正出血が続いている/繰り返している

がん細胞は自分自身で増殖していきますが、その組織はとても脆いので、容易に出血しやすいという特徴があります。

つまり、「がん」または「前がん病変」(がんの手前の細胞異常)が子宮に存在すると、その部分から出血しやすくなり、「不正出血」として自覚されます。

生理ではない時期に出血が起こることを「不正出血」と呼びます。

ほとんどの不正出血は「(大きな病気ではない)ホルモン変動によるもの」なのですが、上記の通り、産婦人科医にとってはがんの可能性も必ず考えなければなりません。

特に20-30代の若い女性にとっては子宮頸がんのチェックが重要ですので、「2年に1回の子宮がん検診」を受けていない方は必ず産婦人科を受診していただくことをお勧めいたします。

(2)性交渉のあとに性器出血が起こりやすい

上記の通り、がんができると出血しやすい状態となります。

特に子宮頸部は性交渉の際に物理的な刺激を受けやすいため、「性交渉のあとに性器出血が起こる」というのは注意すべきサインと言えるでしょう。

もちろん、性交渉によって出血してしまう理由は他にもあります。

例えば、

・爪などで腟の壁に傷が付いて出血した(パートナーも気をつけて!)

・排卵に伴う出血が子宮を流れてきた

などの方が頻度としては高いと思います。

しかし、「性交渉のあとに毎回/頻繁に出血してしまう」などの場合にはより心配ですので、早めに産婦人科を受診してください。

*子宮頸がんの詳しい検査法はこちらの記事(産婦人科オンラインジャーナル)をご参照ください。

(3)閉経後に性器出血があった

閉経とは、「生理が自然に止まって1年間出血が起こらなかった状態」と定義されています。

そして、日本人では、閉経になる平均年齢は約50歳です。

その前後5年間ずつを「周閉経期」と呼び、段々と生理が不順になったり更年期症状が出たりする時期に当たります。

閉経前の数年間は生理が不順になりやすいため、性器出血があったときに「病気による不正出血かどうか」を判断するのはかなり難しいというのが正直なところです。

しかし、閉経したあとに突然性器出血があったときは注意が必要です。

子宮頸がんの他に、40代から増え始める子宮体がんの検査もしたほうが良いでしょう。

なお、子宮頸がんと子宮体がんの検査には少し違いがあります。

・子宮頸がん→子宮の入り口をブラシで擦る

・子宮体がん→子宮内部の奥(子宮内膜)をブラシで擦る

このため、子宮体がんの検査は痛みがやや強く、検査後に出血してしまうこともやや多いという特徴があります。ご不安な場合は、事前に病院や医師に手順などを聞いておくと良いかと思います。

(4)皮下脂肪は増えていないのにお腹が膨らんできた

女性は閉経後に太りやすくなる傾向があります。これは、閉経すると体内の女性ホルモン量が減り、脂肪が分解されにくくなるためです。

なので、皮下脂肪とともにお腹周りが出てきてしまうことは珍しいことではありません。

しかし、お腹が「やや張りのある膨らみかたをしてきた」というのは、注意が必要かもしれません。それは、お腹の中に水が溜まってきた(=腹水)可能性があるためで、このときは特に卵巣がんを疑わなければなりません。

卵巣がんは、卵巣にがん細胞が発生して大きく腫れてくるのですが、初期のうちは小さく、痛みや出血などの症状が何も起きないため自分自身で気づくことはほとんどできません。

しかし、徐々に大きく腫れてくると、周囲に水のような液体(腹水)を貯留させるという特徴があるため、骨盤内に腹水が溜まってお腹が張ったように膨らんでくることがあります。

ただし、お腹が膨らむほど腹水が溜まったときはかなりがんが進行している状態と考えられるため、どちらにせよ早期発見は難しいと言わざるを得ません。

それでも、なるべく早く病院を受診した方が良いことには違いありませんので、思い当たる方はなるべく早く受診することをお勧めします(ご家族がそうなっている場合もぜひ教えてあげてください)。

(5)乳房に「しこり」と「えくぼ」ができた

乳房の中には、母乳(乳汁)をつくる乳腺と、それを包む脂肪組織が存在します。

それらは柔らかいのですが、年齢や月経周期、妊娠・授乳などの変化によって、乳房の中にコリッとした「しこり」が発生することがあります。

これ自体は珍しいことではなく、「しこり」ができてもその多くは良性のもの(乳腺症と呼ばれます)です。また、妊娠中〜産後には乳腺が発達するため「しこり」(病気ではないもの)が頻繁にできてしまう方もいます。

そして、これら良性または病気ではない「しこり」が、勝手に悪性の乳がんに変化してしまうことはありません

ところが、乳がんの発症が増えてくる40代からは少し注意が必要です。

乳がんも乳房内に「しこり」を形成しますが、初期のうちは小さく、触るだけでは良性の「しこり」と判断がほぼつきません。

ただ、以下のようなサインがある場合は乳がんの可能性に注意しましょう。

・乳房にえくぼ(凹み)やただれができる

・左右の乳房の形が今までに比べて非対称になる

・乳頭から分泌物(血が混じるなど)が出る

なお、乳がんはセルフチェックが早期発見に有効ながんの1つです。

普段から入浴や着替えのときなどに、ご自身の乳房を見たり触ったりして、上記のような変化がないか、しこりが出現していないかを時々確認してみましょう。

特に40歳以上の女性は、乳がん検診(2年に1回)を受けることが大切です。

ほとんどの市町村では検診費用の多くを補助していますので、自己負担はかなり少なくて済むかと思います。

乳がん検診やマンモグラフィーについては日本乳癌学会のウェブサイトもご覧ください。

*20-30代の女性では、一般的に発症頻度が低いため、定期検診を公費で受けることはできません。しかし、若くても発症する方は一定数いますので知識を持っておくことやセルフチェックをすることは大切です。

若い女性(AYA世代)の乳がんについては日本乳癌学会のウェブサイトをご覧ください。

日頃からがんの予防につながる行動を意識することが大切

ここまで、4つの婦人科がんと、5つの気をつけたい症状をご紹介しました。

最後に、がんの予防法についてまとめておきます。

「完全にがんを予防する方法」は存在しないのですが、将来の発症リスクを低下させることはできます。

そして、その予防法の多くはがん予防以外のメリットも持っていますので、ぜひ積極的に取り入れてみてくださいね。

・HPVワクチン接種

 - HPV感染を予防することで子宮頸がんの発症リスクを大幅に低下させる

 - 17歳までの接種が最も効果的だがそれ以降でもメリットは期待できる(年齢などによって変わります)

 - 尖圭コンジローマという性感染症の予防にも役立つ

*詳しくはみんパピ!ウェブサイトもご覧ください。

・肥満体型にならないよう体重管理する

 - 子宮体がんや乳がん(特に閉経後)の発症リスクを低下させる

 - 他に月経不順、妊娠や出産に関連する合併症、心血管疾患(特に閉経後)などの予防にも有効

・禁煙

 - 子宮頸がんや卵巣がんの発症リスクを低下させる

 - 他に肺がんや胃がん、結腸がんの予防にもつながる

 - 一般的に、早いうちに止めるほど予防効果は高まる

・ご家族や親族のがん情報を知っておく

 - 子宮体がん、卵巣がん、乳がんでは一部の遺伝子情報が発症リスクを高めます

 - 近い親族に上記のがんと診断された方がいる場合には、若いうちの検査が将来の発生予防に役立つ場合があるため医療機関に相談してみましょう

いかがだったでしょうか。

普段なかなか耳にしない情報だったかもしれませんが、若い方でも更年期を過ぎた方でも、注意すべき症状や予防法について知っておくことの大切さが伝わってくれれば嬉しいです。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

参考文献:

厚生労働省. eヘルスネット.

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