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Wednesday, February 24, 2021

今週の気持ち:今週の気持ちは「母の味」 - 毎日新聞

 「女・男の気持ち」(2021年2月18~24日、東京・大阪・西部3本社版計21本)から選んだ「今週の気持ち」は、大阪本社版2月23日掲載の投稿です。

  ◆  ◆

<今週の気持ち>

母の味 滋賀県草津市・浅井順子さん(会社員・63歳)

 1人暮らしの娘から「焼きおにぎり食べた」とメッセージがきた。実家では料理をしたことがなかったが、今は節約のため自炊している。ネットなどでレシピを調べ、料理を楽しんでいる様子だ。

 ところが、自作だと思った焼きおにぎりは、私がよく利用していた冷凍食品を近所で見かけて購入したという。おいしかったと喜んでいたが、少々複雑な気持ちになった。

 私は子供たちが幼い頃からずっと仕事をしている。料理は苦手だが、疲れて帰宅しても子供たちの空腹は待ってくれない。つい簡単な冷凍食品に頼っていた。愛情あるのは手づくり料理と思いながらも、手際よく料理をする器量はなし。やましさを感じつつ利用していたものが母の味になっていたとは。娘はこれが母の味と喜んでいた。

 人一倍人見知りだが、本人の強い希望で上京してバイトしながら勉強の日々。時々、故郷に似た風景を求めて郊外を散歩しているらしい。帰りたいとメッセージがくることもあったが、コロナの感染拡大で1年以上帰省していない。成人しても実家が落ち着ける場所になっていて、冷凍食品の料理でも母を感じているのがいじらしかった。

 冷凍食品で母の味が再現されて、懐かしんで喜んでいるならそれでよいかもしれない。焼きおにぎりを手にした娘の笑顔の写真を見て、手づくり料理へのこだわりは何だったのだろうと思った。

   ◇

<担当記者より>

 じくじたる思いの共感もあれば、こんな母の味も「時代の味」かと納得――。浅井さんの投稿を読んだとき、読者の皆さんもさまざまな感想を持たれるだろうなと思いました。

 それにしても、多くのお母さんたちにとって、日々の料理は結構な負担になっていることは確かでしょう。ジェンダー平等の観点からは、「料理は女性がするもの」と固定化するのもアウト。ちなみに、私が小さかった頃のわが家の食卓を振り返ると、たまーに料理をしたおやじの作るものの方がうまかったのですが……。

 ともあれ、食事にまつわる思い出はいつまでも残っているものですね。浅井さんが遠くで1人暮らしをする娘さんを気遣い、娘さんもお母さんを恋しがっている様子が切々と伝わってきました。

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