
ニューヨークの国連本部で砂漠化や干ばつ対策について検討するハイレベル討議が20日に開催されるのを前に、ボルカン・ボズクル国連総会議長が毎日新聞に寄稿した。 ◇過去10年なかったハイレベル討議を前に 「砂漠化」という言葉を聞いて何を思い浮かべるだろう。豊かな農地をゆっくりと侵食する砂丘だろうか。アフリカとアジアの大地をむしばむサハラ砂漠とゴビ砂漠だろうか。それとも、干上がっていく河川や水路だろうか。いずれも確かに砂漠化の一部ではある。しかし、土地が劣化することこそ、砂漠化がもたらす重要な影響なのだ。もはや生物を育むことができなくなってしまうほど、土壌が大きなダメージを受ける。 土壌には、ただの土である以上の役割がある。地球が健全であるためには、健全な土壌が欠かせない。私たちの足元にある大地には、植物や動物、多くは小さすぎて目に見えないような微生物たちがあふれる秘密の世界がある。しかし、私たちの存亡は、彼らの存在に懸かっている。私たちの農業と食品産業は、この見過ごされてきた生物の宝庫によってまかなわれているのだ。これが温室効果ガスの排出を抑え、植物や動物、人間のたくましさを保っている。 しかし今日、私たちの農地の半分以上を含む、地球の5分の1以上の土地が傷付いている。砂漠化や土地の劣化、干ばつによって毎年1200万ヘクタール以上の土地が失われているのだ。開発途上国の貧しい農村部で暮らす人々を中心として、30億人以上の人々が被害を受けている。また、全体的な環境の健全さを考慮せずに土地を耕作地に転換すると、大気中に炭素と亜酸化窒素が排出される。これによって気候変動が加速し、生物多様性が衰退し、感染症が猛威を振るうことになる。これらはすべて、水の供給や私たちの暮らし、そして私たちが自然災害や異常気象に立ち向かう力を脅かすものだ。 いま私たちが行動しなければ、事態は悪化するだけだ。今後25年間で土地の劣化が進めば、世界の食料の生産性が最大12%低下し、食料価格が30%上昇する恐れがある。私たちが現状を楽観し続ければ、2015年の国連持続可能な開発サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を達成することなど決してできない。 しかし、希望も残されている。私たちが共に達成できることもたくさんあるのだ。新型コロナウイルス感染症のワクチンが急速に開発されたように、意思を持って、資源を投入すれば、人類は実に驚くべき功績を収めることができる。 30年までに3億5000万ヘクタールの劣化した土地を回復すれば、13~26ギガトンの温室効果ガスの排出を抑えることができる。土地を回復するプロジェクトに1ドルを費やすたびに、少なくとも9ドルの経済的利益が期待できる。これは高い技術を必要としない労働集約型のプロジェクトも含む。土地を回復することは、幅広い産業で環境に配慮した分野での雇用を生み出すだけではない。より栄養価の高い食物を育み、きれいな水を安定的に供給し、生物多様性の喪失に対処できるようになる。気候変動を緩和し、そして変動に適応することにもつながる。 一つ明らかなことがある。それは、果物や野菜の定期的な供給を必要とする都市部の住民にも、観光客を引き付けるのにビーチや揺れるヤシの木を必要とする島のホテル経営者にも、自然由来の薬で生き永らえている入院患者にも共通している。それはこの地球上に、大地と結び付いていない人や存在はありえないということだ。 では、大地と土壌を守るために何ができるだろうか。簡単な一歩は、食べ物を無駄にしないことだ。食べない食料を生産するのは、単に土壌を不必要に疲弊させるだけだ。また、都市部に住む人の場合は、地元の自治体職員と協力し、屋上庭園や高層ビルの壁面に樹木を植えた緑化をはじめとする革新的な方法をとれば、より環境に配慮した街をつくることができる。 土地の再生を促進することは国連の重要な仕事だ。リオ3条約と呼ばれる「国連砂漠化対処条約」(UNCCD)、「国連気候変動枠組み条約」(UNFCCC)、「生物多様性条約」(CBD)の進捗(しんちょく)状況を確認するための主要会議が年内に開かれる。同じ年にこれらの会議が全て開かれるのは初めてのことだ。私たちが暮らす地球の健全さについて考え、改善し、私たち自身の存在を守るために何ができるかを考えるユニークな機会となる。 私はといえば、5月20日に長い伝統を誇るニューヨークの国連総会議場で、砂漠化、土地の劣化、干ばつに関するハイレベル討議を主催する。このような協議が開催されるのは、過去10年以上で初めてのことだ。これまで積み重ねてきた成果をもとに、私たちが共に行ってきた取り組みの不十分なところを明らかにしながら、リオ3条約に関連する主要会議に向けて勢いをつけたい。このハイレベル討議は土地の劣化こそが現実的に立ち向かうべき脅威であることを改めて思い起こさせてくれるだろう。気候、生物の多様性、砂漠化という一見異なる三つの問題が本来は関わり合っていることが分かるはずだ。そして、グローバルな行動への熱意も駆り立てるだろう。 国連総会は、193の国連加盟国が対等な存在として顔を合わせる唯一の機関だ。国境を超えて私たち全員に影響を及ぼす問題に取り組むためには、これ以上ふさわしい場はない。私たちの地球、私たちを生き永らえさせている生命を育む土壌のこととなれば、時間を無駄にすることはできない。ハイレベル討議は、一夜にして状況を改善することはないかもしれない。しかし、全員が同じ考えを持っていることを確認し、成功事例を共有し、実際に一緒に行動することで流れを変えることはできる。そして私たちは必ず砂漠化や、土地の劣化、干ばつの流れを反転させる。他に道がないからだ。しかし、そのためには力を合わせる必要がある。変えなくてはならない習慣もあるだろう。国連はあなたの支援を得られることを願っている。【訳・川上珠実】
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