スーパーの煮豆コーナーに「ふるさとの味」というポップが並ぶ。
しょうゆ豆。香川県にこの春に赴任した記者には見慣れなかった。名前の通り、しょっぱいのかと思えば、甘辛で香ばしい。ポロッとした食感が独特だ。
材料となるのは、ソラマメのさやを立ち枯れさせた乾燥ソラマメ。5月下旬、生嶋暹(すすみ)さん(74)が管理するソラマメ畑を訪ねた。立ち枯れて真っ黒になり、乾いたさやを割ると、薄緑色のソラマメが顔を出した。「立ち枯れた後にさやごと収穫して2、3日、むしろの上で干します」と生嶋さん。
しょうゆ豆は、香川の法事やお祝い事では欠かせず、給食に出ることもある。家庭ごとに味付けが異なるという。
独特の歯ごたえと香ばしさは、焙煎(ばいせん)によるもの。高松市の黒川加工食品では、1時間ほど煎るという。
「1分でもタイミングがずれると焦げてしまう。短いと中まで火が通らず、味がしみこまなかったり、香ばしさがなくなったりする」と取締役業務部長の平山雄希さん(32)は話す。
色や香り、水蒸気の量などを人が見て判断するため、熟練の感覚が必要だ。味付けは、唐辛子と三温糖と小豆島特産のしょうゆ。黒川加工食品では、そのタレをつぎ足して使っている。「うまみが残っていて味に深みが出るんです」
煎った豆を温水に一晩つけてアクを抜く。次の日は豆とタレを入れた鍋を温めたまま、もう一晩おいて味付ける。材料や工程はシンプルだが、手間ひまがかかることから、家庭であまり作られなくなっている一方、加工食品としての需要はある。
「スーパーで手に取る人は多く、うどんと同じように、県民に愛されている。県外に出た人も懐かしんでもらえるような味を作っていきたい」と平山さん。国内にとどまらず海外進出を目指すという。「添加物がなく、材料のソラマメは栄養豊富。健康志向の人や食にこだわる人に届けば」
お茶うけやおつまみといった食べ方が一般的だが、福神漬けのようにカレーの付け合わせにしたり、ラーメンに乗せたりしてもおいしいと教えてもらったという。炊き込みごはんや、刻んで卵焼きに入れるのもおすすめだそうだ。
洋菓子のトッピングにもなる。黒川加工食品の近くにあるケーキ店「パティスリーグレース」では、しょうゆ豆を使ったマドレーヌ「マメレエヌ」(税込み280円)を1年半ほど前から製造・販売している。
豆が丸々一粒乗っているのが目を引く。バターの利いた生地に、栗のような食感のしょうゆ豆がアクセントになっている。店長の近藤仁美さん(47)は「しょうゆ豆のすばらしさを広めたいと思って作った。『この豆はなにかしら』と、話題のきっかけになってほしい」。ダックワーズやチョコレートなどの新商品も考案中だという。(紙谷あかり)
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黒川加工食品 会社に併設する店舗の他、県内のスーパー、土産屋でも購入できる。黒豆やピーナツのしょうゆ豆も販売。月~金曜の午前9時~午後5時。通販サイトは、https://www.kurokawashoyumame.com/。高松市出作町428―2。電話0120・19・0367
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パティスリーグレース シュークリーム(税込み160円)やチョコレートケーキ「ヴェルジェ」(同500円)も人気。午前9時半~午後8時。火曜定休。高松市出作町266―6。電話087・899・8301
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