◆高齢者の3割が友達なし…孤独を解消する7つの方法 2021年5月に共同通信などが報じた日本、米国、ドイツ、スウェーデンの高齢者を対象にした内閣府の国際比較調査によると、「日本の高齢者の3割は友達がいない」という衝撃の結果が明らかになった。 日本の風土に深く根ざし、死に至るほど苦しい高齢者の孤独を巡る問題。心の奥底に眠る感情であり、一人ひとり感じ方が違うからこそ難しい問題だが、周囲が手を貸すことも可能だ。 異文化コミュニケーションアドバイザーの石野シャハランさんは「文明の利器」を整えることを提案する。 ◆1.スマホやネットの利用を根気強く教える 「スマホやSNSなどは海外留学の多いイランでは全世代必須のアイテム。使うのを諦めようとするシニアには、若い世代が環境を整えて根気よく教えることが大切です。 『孫が顔を見たいと言っているよ』と誘うのも有効でしょう。環境が整ったら、まめに連絡することも重要です。日本人は『何となく連絡する』ことを嫌がりますが、スマホやネットの利用法は繰り返し使ううちに覚えるものです」(シャハランさん) オンラインの準備ができたら、リアルなコミュニケーションも充実させたい。 ◆2.「デイサービス」で利用者同士の仲を深める 家に閉じこもりがちなシニアが友達をつくる貴重な機会を提供するのが「デイサービス」だ。 特に近年は、従来のようなプログラムに則って、まるで子供の「お遊戯」のような時間を設けるのではなく、利用者主体で交流を大切にする施設も増えている。60代から100才までの利用者が笑顔で触れ合う群馬県で人気の「ココロガーデン」もその1つだ。 「利用者の好きなことや興味のあることをスタッフが事前に把握し、『あの人にはこんな趣味があるんですよ』『この俳句はあの人がつくったんですよ』と、趣味や興味が一致するように利用者間の橋渡しをします。同じ年代の人たちの共通の話題となるクイズを出したり、音楽を流したりして交流を促すこともあります。仲よくなった利用者同士で連絡先を交換し、さらに仲を深める人もいます」(ココロガーデン担当者) ◆3.「手伝います」の一言が孤独を解消する たとえ趣味や話題が一致しなくても、一歩踏み出すことで交流が生まれることもある。 「利用者同士がお互いの病気への理解もあるため、自然に車いすの操作を手伝うなど、ちょっとした手助けがきっかけで仲よくなる人たちも少なくない。やはり、まずは交流の場に出ることが大事だと感じます」(前出・担当者) コミュニケーションの問題や格差社会に詳しい評論家で著述家の真鍋厚さんも困っている人に手を貸すことからコミュニケーションが始まると語る。 「会話が苦手な人は、まずは重そうな荷物を運ぶのを手伝ったり、道案内をすることから人と触れ合う回数を増やして、慣れてきたら興味のあるボランティアなどを始めるといいでしょう」(真鍋さん) ◆4.「デイサービス」は無理強いせず親子で一緒に ただし高齢の親がデイサービスやボランティアを拒否するケースもある。その際、無理強いは禁物だ。 「強制されるのを嫌がる人は多いものです。高齢の親をデイサービスやボランティアなどに連れ出す場合は、まずは『面白そうだから行ってみようよ』と誘って、子供がその場に一緒に行くという手があります。そこで親が気に入れば、自発的に行くようになるかもしれません」(真鍋さん) 娘に連れ出された先で心の交流ができたと語るのは80代の男性だ。 「妻を亡くしてから家に閉じこもりがちでしたが、2年前に娘に『温泉に入れるから』と言われてデイサービスに行ってみました。温泉施設を改装した建物で、大きな温泉が気に入り、何度か通うようになった。ただ、温泉が好きで通っていただけだったため、ほかの利用者との交流はありませんでしたが、一時入院してから2か月ぶりにその施設を訪れたら、ほかの利用者に『おかえり』『やあ、久しぶりですね』と声をかけられて本当にうれしかった。それ以来、少しずつ交流を持つようになりました」 ◆5.気にかけてくれる人の存在が心の支えに 誰かが自分を気にかけてくれる。人はそれだけで孤独を癒せるようだ。 実際、「友達はいらない」と言い続けた脚本家の橋田壽賀子さん(享年95)は、晩年に終の棲家とした静岡・熱海で、仲よしのトレーナーや、行きつけのレストランのシェフとの交流を楽しんでいた。 年を重ねたからこそできる、肩の力が抜けた「大人の友達づきあい」も存在する。 ◆6.庄野真代さん「地域のために活動を」 「いまの友達づきあいがいちばん楽しいの」 そう語るのは、今年歌手活動45周年を迎える庄野真代(66才)。21才でデビューしてから結婚や出産、離婚や入院を経て50代半ばで人生初のひとり暮らしを始めた彼女は、年齢を重ねるにつれて「余裕」ができたと語る。 「若い頃は少し性格が合わないと感じると距離を置こうとすることが多かったけれど、いまは苦手なタイプでも『自分とは違うところが面白いな』と受け入れられるようになった。 若い頃は自分の仕事で手一杯だったけれど、50才を過ぎると肩の力が抜けて、歌手同士のつきあいもより楽しくなってきた。“3人娘”としてコンサートを行ってきた渡辺真知子さんと太田裕美さんは、いまでも、なんでも相談できるよき仲間ですね」(庄野) 仕事に加え、4年前からは「子ども食堂 しもきたキッチン」をオープンし、子供たちと一緒に料理を楽しんでいる。 「地域のために何かをやりたいとひとりで始めたら、自然発生的に人が集まりました。いまはNPO活動やフェイスブックなどを通じて、数えきれない友達がいます。 昨年はコロナで人と会えなくなったので、いまは久しぶりのかたにもできるだけ自分から連絡して接触するようにしています。友達は向こうから来るものと思わず、臆せず自分から向かった方がいい。 友達を維持する秘訣? そうね、誰とでも100%打ち解けるのではなく、少しだけ余白を残しておくと、案外いいクッションになるかも。余白がなくて密着しすぎると、逆にダメじゃないかな」(庄野) ◆7.家族でもお金でもない「横のつながり」が孤独を癒す 孤独格差社会がもたらすのは苦しさだけではない。 「人生100年時代、配偶者や子供がいても最期はひとりになるケースが多い。孤独は一生ついてくる問題ですが、逆に言えば、心地よい人間関係やコミュニティーを構築できれば、人生の最期まで自分らしく幸せに生きることができるはずです」(真鍋さん) 家族の有無やお金の多寡は関係ない。自分の心がけと行動次第で孤独から逃れ、理想の関係性をつくることができるのだ。それこそが、この先の社会を生き抜くための新たな希望ではないか。 2010年に肺がんで他界した芸能リポーター・梨元勝さん(享年65)の妻である玲子さん(74才)も、配偶者の死という大きな悲しみを「横の関係」によって癒すことができたという。長女の麻里奈(41才)が言う。 「ずっと仕事が忙しく、ほとんど夕食を一緒に摂ったことがなかった父と、ひたすら寄り添ってきた母。父の最期を看取るとき、病室で過ごした一家団欒は尊いものでした。あれから10年、ずっと母と暮らしてきましたが、私は母と違って毎日誰かと連絡を取り合うということもない。夜には寂しさも不安も感じるし、孤独は高齢者に限ったテーマじゃないと思うのです」(麻里奈) 私は母がうらやましい──麻里奈は最後にそうつぶやいた。 教えてくれた人 異文化コミュニケーションアドバイザー・石野シャハランさん、評論家・著述家・真鍋厚さん、歌手・庄野真代さん、芸能リポーター・故梨元勝さんの長女・麻里奈さん ※女性セブン2021年6月24日号
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