革新的な技術開発に次々と着手している會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)。3Dプリンターの実用化研究のため、昨年からインフラ整備不要の「自立型トイレ」を生産し、実証実験を開始した。コンクリート業界は二酸化炭素排出量が8%と環境負荷の高い業界だ。「3Dプリンターに転換することで、コンクリートの使用量を6割削減することができる」と同社の會澤祥弘社長は話す。(寺町幸枝)
「脱炭素第一」を掲げて
コンクリートは耐震性、耐火性、遮音性、耐熱性など耐久性に優れている上、寿命も長い。一方で、主原料が石灰石の焼成でつくるセメントであるため、コンクリート産業は世界で排出される二酸化炭素(CO2)の8%に当たる量を排出するほど環境負荷が高い。このため、グローバルセメント・コンクリート協会は昨年、「2050年までにカーボンニュートラルを達成する」という目標を立てている。 こうした状況の中で、會澤高圧コンクリートは現状を打破しようと「脱炭素第一」を掲げ、コンクリート素材と生産技術の両面で最新テクノロジーを導入し、イノベーションカンパニーとして事業刷新に力を入れている。
テクノロジーとして着目した3Dプリンター
同社は海外の大学や研究機関とパートナーシップを組み、これまでにひび割れなどを自動的に修復するバイオコンクリートの「Basilisk(バジリスク)」の開発や、カナダ製の脱炭素コンクリート「CarbonCure(カーボンキュア)」の国内販売といった「コンクリート素材」で、日本国内で積極的に環境対策を意識した製品を扱ってきた。 加えて、産業用ロボットアームを用いることで、3Dプリンターを建築現場に導入する動きを加速させている。未来を見据え、技術を向上させるために「実証実験」は必須だ。そこで同社が目をつけたのが「トイレ」だ。 地震の多い日本では、建築基準法が非常に厳しいため、まだ3Dプリンターで基準に適合した居住用の「家」を作るのは難しい。「ものづくりをするメーカーとして、技術は磨いていかなくてはならない。3Dプリンターの実証実験を進める上で、まずは規制の低い海外をフィールドとして探していた。さらに企業としてSDGsへの具体的な取り組みを検討していた中で、インド向けのトイレの企画を思いついた」と會澤祥弘社長は話す。
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