産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」
IT化の進展やグローバル競争の中で、企業が生き残るために事業の「選択と集中」や能力主義で対処する流れが加速しています。私が産業医を務める企業で、中高年管理職のカウンセリングが増えています。最近、10人の中高年社員の相談を受けましたが、変化への適応がうまく行かない7人の経験を参考に何が妨げになっているのか、その要因を検討します。2人の話を紹介します。
地方の営業所長に異動……実際はリストラ予備軍
産業医 : 産業医の夏目です。怒っていますね。どうしました? 田代さん: 理不尽なことを迫られているんです。50歳なのですが、地方に異動するように言われたんです。 産業医 :そうか。 田代さん:営業部の課長ですが、入社以来、会社のために働いてきました。わが社も海外に営業展開を決め、体力もあり英会話にも強い若者を中心に海外に派遣する。それは仕方がないんだが、中高年は地方の営業所長に出される。 産業医 :う~ん。 田代さん:(険しい表情で)若い時は馬車馬のように働かせ、50歳になれば、使い捨てか。我々の世代は頑張って来たんだ。世の中が変わったと言って、捨てるのか!(怒りで全身がワナワナと震えている) 産業医 :地方の営業所長ですか? 田代さん:40、50歳代の3人は海外に管理職として行く。彼らは語学もITも強い。口もうまい。でも、営業所長で地方回りだと、定年まで会社が雇用してくれる保証はない。現実にはリストラ予備軍なんですよ。 産業医 :う~ん。 田代さん:最近、同期とよく話をするんですが、2人が希望退職の面談を受けていますよ。中高年に会社は冷たい。 産業医 :そうか。 田代さん:妻と相談したんですが、「子どもの教育費もあるから我慢してね」と転職を反対されています。 産業医 :そうか。
会社が「共同体」から「機能体」に変わった
産業医 :長年、産業医をしてきて、よく思います。会社には「共同体」と「機能体」の二つの面がありますね。比重の違いですが。元はドイツから出てきた分類ですが、私が表に整理してみました。 田代さん:(表を見ながら)共同体と機能体は有名な分類ですね。会社を「運命共同体」と思い、会社が伸びれば我々の生活も良くなる。会社第一で働く。以前は、「社員は家族のようなもの」とも言われましたね。 産業医 :なるほど。 田代さん:若い時は安い給与だった。やっとそれなりの給料がもらえるようになった。 産業医 :年功序列型賃金だったからね。大まかに言うと、昭和までは企業は共同体的要素の方が強かった。しかし不況が続き、産業構造も変わってきたので、利益を追求する機能体に変わってきた。 田代さん:会社は変わってきましたね。 産業医 :その流れが止まらない。 彼とは3回面談をしましたが、会社への怒りを語るだけで、受診しなくなりました。怒りの発散(カタルシス)のサポートにはなりましたが……。
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