板橋区の印刷会社「いたばし印刷」(常盤台四)が、動物の親子の絆を色鉛筆で描いた絵本「よろこび」を出版した。文章とイラスト執筆から編集作業まで、社長と社員の四人で手掛けた。読者からは「幸せな気持ちになれた」「当たり前の日常に感謝することを考えさせられた」といった声が寄せられている。(中村真暁)
絵本では、ゾウやキリン、シマウマなどさまざまな動物の親子が、身を寄せ合ったり、抱き締め合ったりする様子を温かく繊細なタッチで表現。「あなたが うまれたとき ようやく あえた よろこび」「あなたが たべたとき おいしいね という よろこび」といった文章を添え、子育ての喜びを伝えている。
絵本製作は、コロナ禍によるテレワークの普及で企業から名刺印刷の受注が大幅に減るなどしたため、新たな収益源確保が狙いだ。代表取締役の柴崎誠さん(53)が企画し、同社所属のイラストレーター、二見隆一さん(64)が作画を手掛けた。一九七〇年代以降、写実的に描く「スーパーリアリズム」を広告業界で実践してきた。十年ほど前に業界を引退後は、ぬくもりある色鉛筆画に魅了され、作品を手掛けていた。三年半前に入社し、ペットの肖像画を手で描く事業を担っている。
絵本では、二見さんのイラストに、社員の坂口麻衣さん(49)が文章を寄せ、今年五月に出版した。坂口さんは社内で何度も話し合い、十回以上文章を書き直したという。「子どもに読み聞かせながら、会話につなげられるよう工夫しました」と振り返る。
九人の孫がいる二見さんは「入学式がなくなるなどコロナ禍で大変な思いをしてきた子どもたちを応援し、子育て中の人の癒やしとなれば」と話す。柴崎さんは「祖父母を含め、幅広い世代に読んでもらいたい」と期待した。
絵本はサイズが縦横二十一センチ、二十四ページ、一冊二千二百円(税込み)。同社の店舗やオンラインショップなどで購入できる。区内全図書館に寄贈しており、十月には原画展が区立中央図書館で開かれる予定。
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