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Saturday, July 31, 2021

江戸の庶民が愛した味 夏バテ防止 ドジョウの「ほねぬき鍋」 - 産経ニュース

程よく脂(あぶら)ののったドジョウに、甘辛い割り下を絡めた「ほねぬき鍋」。夏のごちそうだ(酒巻俊介撮影)
程よく脂(あぶら)ののったドジョウに、甘辛い割り下を絡めた「ほねぬき鍋」。夏のごちそうだ(酒巻俊介撮影)

初夏に旬を迎えるドジョウ。近年は食卓から遠のいているが、昔から「ウナギ1匹、ドジョウ1匹」とうたわれるほど栄養価が高く、夏バテ防止にうってつけの食材だ。江戸の庶民が愛した味を求めて、専門店を訪ねた。

下町情緒が残る東京都台東区の西浅草。新型コロナウイルスの流行以前は多くの観光客でにぎわっていた「国際通り」を西に折れると、「どぜう」と書かれたのれんが見えてくる。2階建てで趣のある和風建築。江戸末期、慶応年間創業の「どぜう飯田屋」だ。

浅草寺と寛永寺の間に位置する飯田屋は、そもそも参拝客向けに簡単な食事を提供する「一膳飯屋」だった。ドジョウ料理専門店になったのは明治35年。以来、受け継がれるその味を愛した著名人は数知れず。中でも「ふらんす物語」などで知られる小説家、永井荷風は、半年間に50回以上通うほどの常連だった。

「ドジョウが丸ごと入った『丸』も人気ですが、初めての方には『ぬき』が食べやすいと評判です」

軒先に季節感が漂う「どぜう飯田屋」(酒巻俊介撮影)
軒先に季節感が漂う「どぜう飯田屋」(酒巻俊介撮影)

5代目店主の飯田唯之(ただゆき)さん(39)の言葉に従い、「ほねぬき鍋」(1950円)を頼む。

南部鉄器の小鍋に、中骨を抜いたドジョウが円形に並ぶ。割り下をさっと一煮立ちさせたら、身をひっくり返し、ネギをたっぷりのせて食べるのが定番。ドジョウの下にはささがきゴボウが敷かれている。

しょうゆベースの甘辛い割り下に絡めてドジョウ、ネギ、ゴボウを一緒に口に運ぶ。程よく脂(あぶら)ののったドジョウに臭みはなく、同じく「泥育ち」のネギとゴボウが風味を引き立てる。一口食べるごとに力が湧くような、滋味あふれるおいしさだ。

実際、ドジョウに含まれるカルシウムはウナギの9倍といわれ、ビタミンDやタンパク質も豊富。江戸時代の料理本に「百病にたたらぬもの」として紹介されているのもうなずける。

味の決め手となる割り下のレシピは門外不出で、歴代の店主にしか引き継がれていない。飯田さんによると都内にあるドジョウ専門店は4店ほどで、いずれも割り下の味が違うそう。「食べ歩いて好みの味を見つけるのも乙です」と話す。

ドジョウは秋田県産の養殖物を使う。以前は天然物にこだわっていたが、近年は水田の減少などに伴い、ドジョウの生息数が減り続けていることから、いずれ天然物だけでは安定的な供給が望めなくなると判断。約10年前から同県の生産者と連携して、養殖事業に取り組んできた。餌としてコケを与えるなど自然に近い環境で育てた結果、天然物と遜色のない味に仕上がっているという。

入荷したドジョウは店の裏手にある井戸水で注文が入るまで生きたまま管理。体内の泥をギリギリまで吐き出させ、泥臭さを抜いている。

本来、7、8月は書き入れ時だったが、新型コロナの感染拡大で客足が激減し、苦しい経営状況が続く。それでも飯田さんは、「うちの店は関東大震災と先の大戦で2度焼けたが復活した。コロナなんかに負けるわけにはいかない」と前を向く。

疫病がはやる異例の夏。先人たちに倣(なら)い、ドジョウで精をつけてもよさそうだ。(竹之内秀介)

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