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Wednesday, August 11, 2021

〈心で味わう郷土料理3〉義母から受け継いだ味 群馬の名もなきうどん - 朝日新聞社

郷土料理はふるさとの味。昔は家庭の中で受け継がれていくものでした。ライフスタイルが変わった今、それを受け継いでいくことが難しくなってきています。ここでは、各地の文化や風土がギュッと詰まった料理を紹介します。毎日の献立に取り入れたり、少しアレンジを加えたりして、いつもの食卓に変化をつけてみませんか。見て、聴いて、嗅いで、触れて、味わって。コロナ禍で、気軽に旅ができない今、郷土料理を通して心の旅に出かけましょう。

みなさんのふるさとの味はどんな味ですか。思い出してどんな気持ちになりますか。

外国の食文化への探究心から、フランスの食文化であるチーズにはまり、チーズ留学までした私が、日本の食文化を追い求めるようになったのは、こんなことがきっかけでした。

九州の壱岐島(いきのしま)出身の両親をもつ私は、育ちは関東だけど、九州の海の料理を食べて育ちました。対して夫は群馬県出身で、慣れ親しんでいるのは関東の料理。食べてきた料理が見事に違います。私にとって、群馬で出会う料理は驚きと興味のかたまり。料理で使われる食材、食べ方、いい伝え、ならわしなどを探っていくと、あぁ、そういうことなんだ!とひもとかれていくところが、何ともおもしろいのです。

夫の実家では、帰省すると必ずうどんが食卓に出ます。人が集まる時も、お正月の三が日も。またうどん?と思っていたし、逆に夫は、私の実家の料理を、また刺し身?と思ったに違いありません。でもこれが、その地でずっと昔から受け継がれてきた食文化なんだなあと遠い昔に思いをはせると、すとんと納得できて、私はこのうどんにほれ込むようになったのです。

群馬県は昔から小麦の生産量が多く「粉食文化」が根付いており、「水沢うどん」「桐生うどん」「館林のうどん」は群馬三大うどんとして有名です。夫の実家で食べられているうどんはこれらとは違い、ゆでて冷水で洗ったうどんをざるに盛り、しょうゆ仕立ての熱々のつゆにつけて食べる、つけ麺スタイル。

盛り付け方がなんともかわいらしく、ざるの上に、ひとくちサイズにちょんちょんと丸めて並べていきます。こうすると麺と麺がくっつかないので、ささっと食べやすいのです。麺は白ではなく薄茶色の細麺で、色といい形状といい、しばしば「そば」と言ってしまいそうになることも。

〈心で味わう郷土料理3〉義母から受け継いだ味 群馬の名もなきうどん

お義母さんから、このうどんのことを聞きました。「昔は、粉を買ってきて麺から家で作ったものよ。小さい頃は、こねたり伸ばしたり、よくお手伝いしたなあ。近くの町からお嫁にきたときに、この茶色いうどんを教えてもらってから、それ以来すごく気に入って、ずっとこれを使っているの。どこで買うかって? (埼玉県の)深谷で買ってくるのよ」

どうやらルーツは深谷にあるようです。そういえば以前、深谷出身の方と結婚した友人に、「うちの夫の実家でも、うどんだよ! つけあわせには、ホウレン草のおひたしと、きんぴらごぼうも一緒に出るでしょ?」と聞かれたことがありました。深谷市は群馬県伊勢崎市と、利根川を挟んで対岸にあります。お隣の県でも同じものが食べられていたり、同じ県でもひと山を越えたら、そこには全く違う食べ物が待っていたり。つくづく、食文化を県で分けるのは難しい、と感じます。

さて、私が魅せられたこの味。電話でお義母さんに聞きながら作ってみることにしました。

きょうの郷土料理

材料(3、4人分)

〈心で味わう郷土料理3〉義母から受け継いだ味 群馬の名もなきうどん

作り方

1.玉ねぎとしいたけは薄切り、ニンジンは短冊切り、豚肉は1cm幅に切る。長ネギは細かく刻んでおく。

2.鍋に玉ねぎ、しいたけ、ニンジン、だし、しょうゆ、酒を入れて、沸騰してきたら、豚肉を散らすように入れる。

〈心で味わう郷土料理3〉義母から受け継いだ味 群馬の名もなきうどん

3.肉に火が通り、野菜が軟らかくなったら、味を調えて火を止める。

4.うどんを記載された通りにゆで、流水でもみ洗いする。うどんを少しずつつまんで、一口サイズに丸めるようにしてざるにのせていく。

〈心で味わう郷土料理3〉義母から受け継いだ味 群馬の名もなきうどん

5.3を吸い物わんに入れ、刻んだネギ、好みで七味唐辛子をふる。

作ってみました

手順はすごく簡単! つゆを作り、麺をゆでるだけ。時間がないときに作って食べるのにちょうどいいですよ。関東風の出汁(だし)は、かつお出汁という概念があったけど、煮干しを使うのはお義母さんの好みなのかもしれません。

私自身、慣れないしょうゆ仕立てのつゆは、こんな味でいいのかなあ、となかなか着地点が決められませんでした。細かなレシピがない味付けをお義母さんに電話でたずね、夫に味を確認してもらいOKが出たものをレシピにしました。

味わってみました

〈心で味わう郷土料理3〉義母から受け継いだ味 群馬の名もなきうどん

うどんがもちもち~。濃いかもしれない、と思っていたつけ汁は、細麺にからまるとちょうどよい味わいに。いりこだしの香りがふくらみます。

玉ねぎとニンジンから出た甘みもあり、多めの野菜の食感ともちもちとしたうどんの食感が、ダブルで楽しめます。ほんの少しだけ入れた豚肉は、肉を食べるというよりは、つけ汁にうまみをプラスして、味に丸みを出すためのものなのでしょう。

生まれ育った国の料理を探ることは、自分の好きな料理は? 自分とは?と、自分を見つめることなのかもしれません。そして「心から味わう」ということは、自分の心と向き合い、心を整えることにもつながっていくと思うのです。

いただきます、ありがとう、ごちそうさま。

〈心で味わう郷土料理3〉義母から受け継いだ味 群馬の名もなきうどん
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PROFILE

かのうかおり

料理研究家・カオリーヌ菓子店店主
フランスのチーズ文化を学ぶために渡仏。農家で修業し、店舗でも販売を学ぶ。帰国後にオープンした「カオリーヌ菓子店」では、バスクチーズケーキが人気に。五感を使った食材の味わい方、生産者と食べ手との関わりの観点から食の持つ力や自然を大切にする心を育む活動をしている。フランスチーズ鑑評騎士、J.S.A.ソムリエ、フードコンシャスネス・インストラクター。1男2女の母。著書に『カオリーヌ菓子店のチーズケーキ』(主婦と生活社)、『チーズの絵本』(mille books)。

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