企業経営では、よく「企業の盛衰は社長(経営者)ですべてが決まる」と言われます。有能な経営者が率いる企業が発展し、無能な経営者が居座る企業が衰退するというのは、私たちがよく目にする光景です。 「年収1億円超」の上場企業役員ランキングTOP500 ところが、世の中には、経営者が明らかに無能なのに順調に事業を続けているという不思議な企業があります。ここで経営者が「無能」というのは、社業に身が入っていない、経営判断が不適切、人望がない、など経営者に必要とされる能力・姿勢が欠落している状態です。
経営者が無能なのにうまく行く企業と無能な経営者とともに沈んでしまう企業では、どういう違いがあるのでしょうか。事例の紹介を通して検討してみましょう(以下の人名はすべて仮名です)。 ■なぜ無能でもうまくいく? 経営者が無能なのに企業がうまく行くというのは、論理的には経営者「以外」に何らかの成功要因があるはずです。経営者「以外」に、次の3つのポイントがあります。 第1のポイントは、その企業が所属する業界です。たとえば以下のようなケースです。
<ケース1:社長がやる気を失ってしまったが…> 大原翔社長は、12年前にITサービスのA社を創業しました。クラウド化の波に乗って、年商10億円を超えるまで一気に業績を拡大させました。ここで大原社長は達成感と心労から社業への意欲を失ってしまい、会社に顔を出さなくなりました。 しかし、その後もIT業界は、クラウド化やシステム更新のニーズが旺盛です。DXなど新たな取り組みも広がり、需要は堅調に推移しています。この2年ほど大原社長はほとんど経営にノータッチですが、需要を取り込むだけでA社は好業績を維持しています。
世の中には、バブル期の不動産業界のように誰が経営しても儲けることができる業界もあれば、国内の石炭業界のようにどんな天才経営者が必死で努力しても儲けることができない業界もあります。 まずどういう業界で事業を展開しているかが、成否の大きな分かれ目です。 第2のポイントが、「事業の仕組み」です。安定的なビジネスモデルを築いていると有利です。 <ケース2:2代目は素人同然だったが…> 建築確認のB社は、殿村正幸社長の父が創業しました。B社は関西の複数の自治体で指定確認検査機関になっており、安定した事業基盤を持っています。それまで別の会社に勤めていた殿村社長は3年前、父親が引退したのに伴い、急きょ社長に就任しました。
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