あっぱれな原点回帰
Sの面白いところは、「安くするためにひたすら省いたモデル」にはあらずということです。上位グレードに対して取り去られたものはトンネルブレースバーと呼ばれるフロア下の補強パネル、リアアンチロールバー、ノンスリ(リミテッドスリップデフ)、遮音材……と、これらで20kgの減量を果たして990kgと、1t切りの車重を実現。その車重に合わせ込んだレートのダンパーや電動パワステのセットアップが施されています。
「ワタナベさん、Sも乗ってみてくださいね。きっと、お好きな感じだと思いますから」
2015年、NDデビュー時の試乗会でそう声をかけてくれたのはマツダの梅津大輔さん。操安性能開発部でNCやNDの開発を手がけ、GVC(G-ベクタリングコントロール)の生みの親でもあるエンジニア……といえば、ご存じの方もいらっしゃることでしょう。どうやら拙が関わっていた媒体を目にしていて、「MGミジェット」に乗っていた過去や、ちったぁ旧車に明るそうだということを存じてくれていたようでした。
勧められるがままに乗ったSの印象はといえば、「上位グレードにも増してよく動くクルマ」というものでした。“動く”というのは多くのスポーツカーが唱える加減速や旋回でのアジリティーを指すのではなく、「踏んだ」「抜いた」だの「切った」「戻した」だのというドライバーの運転所作に応じての逐一の反応を指します。そこらの交差点をそろっと曲がるくらいの話でも、操作のアラがロールやダイブやスクワットとなって逐一現れる。そのあけすけぶりに笑いが込み上げるほどです。
「これをきれいに走らせるのは相当いい練習になりそうですね」と感想を伝えたら、梅津さんいわく、「Sは他グレードよりもNAっぽいテイストを狙ったんですよ」とのこと。なるほど、初代のロードスターって確かによく動くクルマだったよなぁと感心しました。
エンジンパワーの向上に引っ張られるようにタイヤの性能が上がり、そのグリップ力に負けないような体躯(たいく)や骨格を求めるとどうしても車重がかさむのでまたパワーを上乗せしタイヤも頑張り……と、そういうループを繰り返した揚げ句、あまたのスポーツカーは随分と大きく重くなってしまいました。NDはNAの時代を顧みることでこの悪循環を脱することができたのでしょう。ちなみに初代ロードスターの重量はエアコンの有無等の仕様差はあれど、おおむね950kg前後。30年後の990kgは奇跡のような数字ではないでしょうか。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
からの記事と詳細 ( ファンがどよめくFUNな一台 「マツダ・ロードスター990S」は買いなのか? - webCG )
https://ift.tt/3tNG4pR
No comments:
Post a Comment