認知科学をベースに「無理なく人を動かす方法」を語った『チームが自然に生まれ変わる』は、マッキンゼーやネスレ、ほぼ日CFOなどを経て、エール株式会社の取締役として活躍する篠田真貴子さんも絶賛する「新時代のリーダー論」だ。
多くのマネジャーが「従来のリーダーシップでは、もうやっていけない…」と実感しているいま、部下を厳しく管理することなく、それでも圧倒的な成果を上げ続けるには、どんな「発想転換」が求められているのだろうか?
会社への「絶対的な帰依」はまったく無用
1on1の目的は、単なる「振り返り」や「進捗確認」ではなく、メンバーが心からやりたいと願うWant toを探索することである。
それが見えてきたら、今度はそれが組織のパーパスとどう重なるかを考えていく。この「組織のパーパスを自分ごと化させる」プロセスを欠くと、せっかくメンバーの「本音」が顔を出しかけていても、再びHave toにまみれた「熱量の低い日常」というコンフォートゾーンに引き戻されていきかねない。
「自分ごと化」のステップでも、ベースになる場はやはり1on1だ。
組織のパーパスを一緒に振り返りながら、それが本人のWant toにどう関係してきそうかを対話しよう。ここでも、リーダーはあくまでサポート役であり、メンバーに問いかけて相手から答えを引き出すことを意識する。
話題にする「組織のパーパス」は、決して「部署の売上目標」のような現実的なゴールであってはいけない。これでは既存のリアリティに引っ張られた発想しか生まれなくなってしまうからだ。
むしろ、会社の経営理念のような「現状の外側」を志向するゴールを選び、それを互いに解釈していきながら、個人のWant toとの共通点を探っていくようにしよう。
注意してほしいのは、その過程のなかで本人の欲望が「地に足のついた等身大のもの」になってしまわないようにすることだ。
心理的ホメオスタシスの作用をかいくぐるためには、まず個人のWant toを「現状の外側」に飛ばす必要がある。
この段階での遠慮や謙遜は邪魔以外の何ものでもない。メンバー本人のWant toを「これ以上はもう何もいらない!」という極限まで膨らませよう。
そのうえで個人のゴールと呼べそうなものが見つかってきたら、ゴール世界を一発で想起できるような「具体的なフレーズ」に落とし込んでいくのが理想だ。
「パーパスの自分ごと化」とは、個人のWant toと組織のパーパスを「完全に一致させること」ではない。
人を内側から動かすうえで最も大事なことは、「本人が心から実現したいゴール」を設定することだった。よって、組織が目指す方向性から大きく外れてさえいなければ、個人のWant toはどこまでも尊重されるべきだ。
教義への絶対的帰依が求められるカルト教団のような組織は別として、すべてのメンバーが(そしてリーダー自身も)組織のパーパスに100%傾倒している必要などない。
それよりも大切なのは、たとえ部分的であってもいいから、「自分が実現したい未来は、この組織が実現したい未来と重なっている」という確信を、彼らの内側に生み出していくことだ。
ダイバーシティの時代と言われるいま、個人のバックグラウンドが多様化するのに伴って、その根本にある価値観や発想もどんどんユニークになっていく。そういう状況のなかで、「たった1つの目標」に向けて人々をまとめ上げるのはまず不可能だ。
それでも、やはりリーダーはチームや組織を一定の方向に導かねばならない。
そこで残される方法はただ1つだ。なんとか個人の想いと組織の理想とが交わる部分を見出して、ゆるやかにメンバーを組織につなぎとめていくしかない。
また、最後に踏まえておくべきなのが、「個人のゴールは1つとはかぎらない」という点だ。
個人のWant toが1つとはかぎらないからこそ、設定されるゴールも複数であり得る。同じWant toをどう切り取るかによって、1つ以上のゴールが設定されることもあるだろう。
それぞれのゴール世界が整合的であり、没入を妨げ合ったりしないかぎり、ゴールはいくつあってもかまわないのだ。
そうだとすれば、メンバーがたとえ会社のパーパスと関係ないゴールを持っていたとしても、それ自体は問題ない。
そのメンバーが持っている複数のゴールのうち、少なくとも1つに関して、組織のパーパスと(部分的に!)重なり合う部分があれば、それで十分なのである。
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★篠田真貴子さん大絶賛!!(エール株式会社取締役)
「まず個人のwant to があり、それが組織のパーパスと重なっていく。そんなチームだらけの世の中にする本」
指示しない。管理しない。
それでも「成果」がついてくる
新時代のリーダー論。
「やる気・根性・ノルマ」で人はもう動かない。
本音の見えないリモート時代に「最高のチーム」をつくるには?
「組織開発のプロ」と「AI企業の経営者」が語る、
人の認知メカニズムに最適化された「新時代のリーダー」のための思考法!!
◎主な内容◎
はじめに あなたの職場はなぜ「たるんでいる」のか?
第1章 内側から人を動かす
第2章 エフィカシーの認知科学
第3章 リーダーはHave toを捨てよ
第4章 パーパスを「自分ごと化」する
第5章 メンバー全員Want to
第6章 組織のパーパスをつくり、浸透させる
思うように身動きがとれないリーダーの方へ
──著者からのメッセージ
「リーダーの現実はどうにもならないことだらけ。こんなのは理想論だ!」──そんな想いが胸の内で渦巻いている方もいらっしゃるのではないかと思います。
たしかに、リーダーの目の前には膨大なHave to(やらなければならないこと)があります。しかもそれぞれのメンバーは、ロボットでも動物でもありません。バラバラな価値観に従って、各々に行動する独立した人間です。自分だけならまだしも、チーム全員の視線を「現状の外側のゴール」に向けさせていくなんて、そんなことが可能なのか。結局のところ、理想論じゃないのか。そう思われても仕方ないのかもしれません。
しかし、人を動かすのは、やはり「理想」です。これは歴史が証明してきた事実です。
人間の脳には「心理的ホメオスタシス」があり、とにかく「現状」からの変化を嫌がります。それは人類が持っているうちでも最も強固な「本能」の1つであり、「チームの熱量」を保つうえでの最大の障壁です。
だとすれば、そんな脳のクセを“ハック”するしかありません。どうやっても心理的ホメオスタシスに打ち克てないのならば、脳が元に戻ろうとする基準点そのものを「現状の外側」に移してしまえばいい。そうすれば、人の行動はおのずと変化します。既存のものを元にゴールを設定していては、いつまで経っても自分でそれを超えることはできません。ゴールは自らが創造するものなのです。
そして、そのカギになるものが「セルフ・エフィカシー(自己効力感)=ゴールの達成能力に対する自己評価」です。もう少し砕けた言い方をするなら、「自分はそれを達成できる気がする……/できる気しかしない!」といった“手応え”のようなものです。
人や組織は、実際に「いま、ここにないもの」を生み出すことができる存在です。
その意味で、「エフィカシーを駆動力にするリーダーシップ」は、決して理想主義者のためのものではありません。それどころか、組織やチームの変革を心から望んでいる「徹底したリアリストのための方法論」なのです。
私が関わってきた数々の企業では、いつもどこかで「組織の平熱」が高まりはじめる瞬間がありました。「自分たちならこの途方もないゴールを達成できるんじゃないか。いや、必ず達成できるはずだ!」──そんなふうにパーパスとエフィカシーとの折り合いがつき、経営トップから現場メンバーの全員が「その気」になった瞬間がありました。
ぜひその「瞬間」をあなたがつくってください。
自分の人生にオーナーシップを感じられない人間が、他者のリーダーになれるでしょうか?
自分を内面から導けない人が、他者の内面を導けるでしょうか?
そんなはずはありません。まず変わるべきはリーダー自身なのです。
ですから、リーダーとしての現状に疑問を感じたら、何度でも自分にこう問い直してみていただきたいと思います。
「私はいま、自分自身のリーダーであることができているか?」
この記事を読んでくださったリーダーのなかには、イノベーションに向けた変革の渦中にあり、矢面に立たされている人もいるでしょう。チーム・組織の「現状維持」すらも心許ない状況で、「現状の外側」のゴールを思い描くことなんてとてもできそうにない人もいるでしょう。
たしかにリーダーを取り巻く環境は、決して甘いものではありません。しかし、そんな人にこそ「エフィカシー・ドリブン・リーダーシップ」の考え方を知っていただきたいという思いで、『チームが自然に生まれ変わる──「らしさ」を極めるリーダーシップ』という本をしたためました。
他人が求めるHave to に押しつぶされそうなときこそ、あなた自身のWant to に、自分たちのパーパスに目を向けてください。現実のなかに答えはありません。現実を突破するのは、いつだって理想です。
「らしさ」を極めたその先に、「最高のリーダーシップ」を発見していただければと思います。
■執筆者紹介
李 英俊(Lee Youngjun)
マインドセット株式会社代表取締役/コンサルタント/エグゼクティブコーチ
2003年、新卒で外資コンサルティングファームに参画し、官公庁・民間企業向け事業再生・組織変革に従事。その後、インキュベーター企業で新規事業開発のプロフェッショナルとして活躍したほか、戦略人事機能を担当する執行役として同社IPOに貢献する。
2008年より、歴史的文化財の利活用にフォーカスした国内屈指の事業再生企業で、コンサルタント・戦略人事・マーケティング管掌の取締役に。大規模再生案件プロジェクトを推進する傍ら、急成長企業である同社を「働きがいのある会社」ランキング(GPTW)に5年連続で入賞させる。
2016年、マインドセット株式会社を創業。代表取締役を務める。次世代経営リーダーの育成、自己変革に取り組む発達志向型組織へのサポートをするため、組織開発コンサルティングを行うほか、プロフェッショナルコーチ養成機関を主宰。イノベーションと戦略人事機能が交差する領域で、急成長ベンチャーから大企業に至るまで組織の規模を問わず、コーポレートゴールの達成とエフィカシーの高いカルチャー創りを支援している。
トレーナーとして、過去19年間で2400回以上、4万時間以上の指導実績を誇る。また、プロアスリート・運動指導者・起業家・イノベーターに向けた身体開発・操作能力向上の指導も手がける。2021年9月には、最新のウェルネスとAIテクノロジーを掛け合わせた次世代ウェルビーイング複合施設「Yawara」を東京・原宿にオープン。著書に『チームが自然に生まれ変わる』(ダイヤモンド社)がある。
堀田 創(Hotta Hajime, Ph.D.)
株式会社シナモン 執行役員/フューチャリスト
1982年生まれ。学生時代より一貫して、ニューラルネットワークなどの人工知能研究に従事し、25歳で慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了(工学博士)。
2005・2006年、「IPA未踏ソフトウェア創造事業」に採択。2005年よりシリウステクノロジーズに参画し、位置連動型広告配信システムAdLocalの開発を担当。在学中にネイキッドテクノロジーを創業したのち、同社をmixiに売却。
さらに、AI-OCR・音声認識・自然言語処理(NLP)など、人工知能のビジネスソリューションを提供する最注目のAIスタートアップ「シナモンAI」を共同創業。現在は同社のフューチャリストとして活躍し、東南アジアの優秀なエンジニアたちをリードする立場にある。
「イノベーターの味方であり続けること」を信条に、経営者・リーダー層向けのアドバイザリーやコーチングセッションも実施中。認知科学の知見を参照しながら、人・組織のエフィカシーを高める方法論を探究している。マレーシア在住。
著書に『ダブルハーベスト』『チームが自然に生まれ変わる』(以上、ダイヤモンド社)がある。
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からの記事と詳細 ( 「個人のやりたいこと」と「会社が目指す方向」は一致しているべきか? - ダイヤモンド・オンライン )
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