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Sunday, March 6, 2022

次世代に求められるオンリーワン技術。株式会社FJコンポジット くらしごと - kurashigoto.hokkaido.jp

次世代に求められるオンリーワン技術。株式会社FJコンポジット

新千歳空港から出て、レンタカー会社の店舗が並ぶ一画に、世界に発送される部品材料を製造する会社があります。燃料電池、携帯電話基地局、電気自動車など、次世代の社会に欠かせない製品の部品材料を開発・製造する株式会社FJコンポジット。2002年に静岡県富士市で創業し、気候と環境、アクセスの良さから2015年に千歳市に移転しました。北の大地で、世界中から引き合いのあるオンリーワンの技術が生まれています。

燃料電池の部品開発で会社を軌道に

複合材料による電子関係部品の開発・製造を行う株式会社FJコンポジット。北海道出身の津島栄樹社長は、大学卒業後に石油会社の研究所に就職し、炭素繊維の研究開発に従事。10年ほど研究を続けましたが、バブル崩壊の影響で研究所が廃止に。培った技術を事業化するために会社を退職し、前職の事業所があった静岡県富士市でFJコンポジットを創業しました。

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当時はちょうど、燃料電池車が注目され始めた時代。前職から研究していた炭素繊維と樹脂の複合材料による燃料電池セパレータの製品化で軌道に乗り、事業を拡大することになり、工場の建設地として全国各地を検討した結果、現在の千歳市に移転しました。
燃料電池セパレータ、S-CMC半導体ヒートシンク、セラミックス絶縁回路基板(S-DBD)を主力商品とし、2022年に新工場の建設が決まっているなど、成長を続ける企業です。

ものづくり企業としての千歳の優位性

FJコンポジットの本社工場は、本当に新千歳空港の間近にあります。津島社長が移転の地を千歳市にした理由の一つは、そのアクセスの良さです。道外や海外の会社との取り引きが多い同社にとって、空港の近くは絶好の立地。例えば大阪に行く場合、静岡から新幹線で行くより千歳からの方が早く到着できます。アメリカカリフォルニア州のサンディエゴに現地法人があり、そちらに荷物を送る場合、月曜の朝に送れば現地時間で火曜の朝(日本時間で火曜の夕方)には到着し、その優位性が発揮されています。

「自宅も千歳市内なので、出張帰りに飛行機が着陸した時、電源を入れてすぐ妻にLINEを送ると、空港から出るころにちょうど迎えに来てくれるという距離感です」

FJCompojite_5.JPG工業のまち、北海道室蘭市出身の津島栄樹社長

また、さらに大きな優位性として、気候が冷涼であること。

「日本のものづくり工場は、ほとんどエアコンがなく暑い中で作業をしています。前職の静岡県では、真夏は35度から40度の灼熱の中で汗だくで働いていました。千歳なら、夏でも窓を開ければある程度涼しくなりますし、冬は機械の熱が暖房の代わりになります」

北海道の涼しい気候がものづくりにもプラスになるとは、意外ですが聞いて納得。

FJCompojite_7.JPG広々とした工場の中にはたくさんの機械が並んでいました

また、北海道出身である津島社長が、北海道が好きだということも大きな動機となりました。

「首都圏のように満員電車に揺られることもありませんし、周りに自然もあります。学生時代にパウダースノーを目当てによく行っていたニセコは世界中から注目され、もはや当時の面影もないほどにぎわっています。本州の人に、好きなところに住めるならどこがいいか聞いたら北海道が人気ですが、住めない理由は仕事がないから。私は自分で仕事を作ることができたので、住めない理由はありませんでした」

神奈川県出身の奥様にも北海道移転を打診し、快く承諾してくれたことも決め手になりました。千歳に転居してからは、健康のためにランニングを始め、休日は景色を見ながら9キロ走っているとか。バードウォッチングも新たな楽しみとなりました。

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他にない複合材料の技術を世界へ

ところで、話をFJコンポジットで制作している部品に戻します。創業当初から同社の発展を牽引してくれたのは、燃料電池セパレータです。燃料電池は水素と酸素を化学反応させて電気を作りますが、そのためには水素と酸素を隔てておくものが必要で、それが燃料電池セパレータです。
ドイツやアメリカでは金属製が主流ですが、津島社長は、前職で炭素繊維の耐熱構造材料を開発していた経験と知識を活かし、炭素粉末と各種樹脂の複合材料を開発。金属によるプレス圧縮成形により量産を実現させたことで、世界でオンリーワンの技術が生まれました。

自動車1台に約800枚の燃料電池セパレータが必要ですが、ヨーロッパのトラックメーカーからトラック10万台分の注文が来るなど、世界中の大型自動車メーカーから依頼が来るように。中国の自動車メーカーベスト5のうち3社に納品しており、残り2社からも引き合いが来ています。燃料電池の技術に関する雑誌記事では、GM、BMWやトヨタ、ホンダなど名だたる自動車メーカーと肩を並べて紹介されました。

FJCompojite_8.JPG北海道から世界へ。グローバルに事業を展開しています

他の主力製品も、複合材料を独自の技術で実用化させたものです。S-CMC半導体ヒートシンクは、携帯電話の基地局デバイスで電波を増幅させるために使われるもの。熱膨張率が低いモリブデンと熱伝導率の高い銅を、独自の技術で箔にして多層に重ねることで、形状が安定し、伸縮が制御できる理想的な半導体ヒートシンクになりました。2015年にものづくり日本大賞の特別賞に選ばれました。携帯電話の基地局は世界に4,000万カ所あり、これから5Gの時代が来ることで、さらに性能を発揮し年2億から3億個の需要が見込まれています。

セラミック絶縁回路基板(S-DBD)は、電気自動車のパワーコントロールユニットで使われ、バッテリーとモーターの間の直流・交流を変換する周波数変換装置に使われる材料です。銅板とセラミックを新技術により接合させており、接合界面に合金層がないので高い熱伝導率が実現できたこと、強固な接合力により1mmの厚銅に対応できることが特長です。こちらも今後、年間1兆円規模の市場規模になることが予想されています。

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小さな工夫から大きな技術へ

これらの製品を開発しているのは、実は津島社長1人。

「決して大それた研究ではなく、燃料電池セパレータは炭素の粉末と樹脂を混ぜただけ、S-CMC半導体ヒートシンクは銅とモリブデンをくっ付けただけ。開発自体はそれほど難しいことではないと思っています。特許を取得するために弁理士に相談に行ったら、『技術的にはちょっとした工夫だが、効果があまりにも大きい』と言われました。お客様は良いものが欲しいと言いますが、お客様が考える良いものとは何かを具体的に一生懸命聞き出すんです。それを実現するために過去の経験や知識を踏まえて知恵をしぼると、アイデアがひらめきます」

今は、第4から第7までの製品がすでに研究されており、社会の要請に従ってそれをリリースするタイミングを測っています。

FJCompojite_11.JPG工場内には、最新の製造機械もたくさんありました

移転当時の社員は4人。今は22人にまで増え、全員が正社員です。正社員採用にこだわる理由を、津島社長はこう答えてくれました。

「私にとって、自分が嫌なことは人にしないというのは、両親から教えられた基本的なこと。自分だったら、非正規社員になったら嫌だと思うからです。私がよく行く韓国も、非正規雇用が多い国です。現地の社長に聞いたら、『そうしないと経済戦争に負けるから』と言います。日本も同様ではないでしょうか。みんなで非正規雇用をやめて、同じ条件にすれば良いのにと思います。決して余裕があるわけではありませんが、ボーナスも少ないながら毎年出しています。辞めずに長く働いてくれる社員が多いので、ありがたいですね」

FJCompojite_15.JPG次世代を担う、若い社員の方もたくさんいらっしゃいました

「社会の役に立つ仕事をする」というのも、津島社長のポリシー。

「利益第一主義だと、他社や周りの情報に惑わされて右往左往することになります。社会の役に立つこと、みんなが喜ぶことを軸に考えれば、他に左右されず事業としてもうまくいくと考えています」

現在、世界中から引き合いのあるFJコンポジットの製品は、いずれも次世代の社会に求められる技術。培ってきた技術を社会に役立てる志が知恵を生み、そこから生まれる経験が、会社の柱をより太く強固なものにしています。

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株式会社FJコンポジット
株式会社FJコンポジット
住所

北海道千歳市柏台南2丁目2-3

電話

0123-29-7034

URL

https://www.fj-composite.com/

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