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Friday, June 3, 2022

アングル:アフリカ新興DXは「地元密着」、巨大ITの追随許さず - ロイター (Reuters Japan)

[ダーバン/カイロ 1日 トムソン・ロイター財団] - 葬儀プランの策定、汚職の告発、事業の立ち上げ――いずれも、風習や言語が多岐にわたり識字率が低いアフリカでは、欧米の巨大IT企業ですら手に負えない分野だ。しかしハイテクに精通したアフリカ各地の起業家は「地元密着」を武器に、こうした難しい分野で成果を上げている。

 6月1日、葬儀プランの策定、汚職の告発、事業の立ち上げ――いずれも、風習や言語が多岐にわたり識字率が低いアフリカでは、欧米の巨大IT企業ですら手に負えない分野だ。写真は2月、マリの首都バマコでスマートフォンを手にする男性(2022年 ロイター/Paul Lorgerie)

タンザニアの技術者のマクセンス・メロ氏は、一連の疑わしい巨大プロジェクトの契約を調査するようメディアに訴えたが無視され、そのいら立ちをバネに匿名のオンライン内部告発プラットフォーム「ジャミーフォーラムズ」を2006年に立ち上げた。アフリカの富裕層や権力者の不透明なカネの流れを暴露し、今では1日当たりの閲覧件数は300万余りに上る。

革新的技術の導入に積極的な人々によると、アフリカには巨大IT企業には不可能な、国内のニーズに合わせたオーダーメイドの課題解決策を作り出しているデジタルプラットフォームが数十件あり、ジャミーフォーラムズはその1つだ。

メロ氏はトムソン・ロイター財団とのビデオインタビューで「地元こそがキング(王様)だ。私たちは自分たちの環境でこそ必要とされる地元に密着したソリューションが分かっている」と話した。

アフリカの起業家はインターネットの不十分なアクセス、資金不足、停電の頻発など困難に見舞われながらも、デジタル世界の可能性をわが物にしている。

カメルーンのデジタル著作権研究者、キャサリーン・ノドングモ氏はビデオインタビューで「国内の技術革新で海外の技術への依存を減らすことができる」と指摘。「地元生まれのこうしたソリューションは雇用創出にも貢献し、人材を海外に流出させず、国内にとどめることができる」と述べた。

<デジタルで葬儀プラン>

エジプトの起業家、アハメド・ガバラー氏(40)は、自分が葬儀業界に足を踏み入れるとは思っていなかった。しかし友人が葬儀の計画を立てるのを手伝ってストレスを感じたのをきっかけに、葬儀業界を見直すようになった。

「埋葬許可の取得に時間がかかり、埋葬地に向かう途中で道に迷った。悔しい経験だった」というガバラー氏は、遺体の身支度から移送、訃報掲載の手配まで、ワンストップでできるウェブサイト「SOKNA(アラビア語で「平穏」の意味)」を2019年に立ち上げた。今では顧客が約3000人、従業員76人の企業に成長した。

ガバラー氏は、主に資金不足やお粗末なインターネット接続環境から数多くのデジタル新興企業が倒産するのを目にしてきた。「フェイスブックやツイッター、インスタグラムのようなIT大手は急成長に欠かせない要因をすべて備えている」としつつ、こうした大手は地元の状況に精通していないと強気だ。「地元の起業家の多くは、自分たちが経験済みの課題を解決している」という。

<会話優位の文化>

ローカルイノベーションを推進するもう一つの要因は言語で、特に2000以上の言語が存在するアフリカ大陸でその傾向が顕著だとノドングモ氏は指摘する。

マリの技術開発者ママドゥ・シディベ氏は2017年に音声SNSサービス「レナリ」を立ち上げた際に、土着の言語によるコミュニケーションの力を目の当たりにした。

レナリは画像が添付できる簡単なツールで、国内で多くの人々に新しい地平を開き、孤立し、読み書きのできない人々が声を上げるのを助け、新市場から切り離された小規模なビジネスにチャンスをもたらした。

「革新的であるためには、欧米をまねるのではなく、自分たちの文化的な現実にすべてを合わせる必要がある」とシベディ氏。世界銀行によると、マリの国民で読み書きができるのは3分の1弱にとどまる。

シベディ氏によると、レナリはブラジル、スリランカ、ロシアなど118カ国で15万回ダウンロードされている。

<データ所有権>

巨大IT企業は国際決済銀行や、アルゴリズムによる偏見や人種差別に反対する活動家から、ユーザーのデータを採取し、販売しているとして非難を浴びている。

メロ氏は政府から繰り返しジャミーフォーラムズのデータを提出するよう求められているが、内部告発者のデータを保護するために10年以上にわたり法廷闘争を続けている。

ノドングモ氏は、アフリカのイノベーションの未来にとって最大の懸念は、政府がネット上の抵抗勢力を取り締まることだと指摘。「抑圧的な政策の下で技術革新を起こすことはできない」と言う。

ジャミーフォーラムズもレナリも、ユーザーのデータの権利を保護し、プライバシーを保証するために厳格なポリシーを設けている。

メロ氏は「巨大IT企業がビッグデータに関心があるのは顧客のデータを使ってビジネスができるからだ。彼らが興味を持っているのは真実ではなく利益だ」と話した。

(Kim Harrisberg記者、Menna A. Farouk記者)

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