がんの中でも特に早期発見が難しく、生存率が低い「膵臓がん(膵がん)」。これまでの常識では、がんが膵管内にとどまる「ステージ0期」で膵臓がんを見つけることは現実的には難しく、ステージ0期の膵臓がんは“幻のがん”とも呼ばれてきた。しかし近年、その常識は覆されつつある。膵臓がんを超早期の段階で発見するためにはまず、膵臓がんになりやすいのはどんな人か、どんなときに膵臓がんが疑われるのかを知っておくことが重要だ。特集第2回では、膵臓がんの危険因子について詳しく解説していく。
危険因子は「家族のがん」「膵のう胞」「膵炎」「糖尿病」
がん治療で最も大切なのは、できる限り小さなうちにがんを見つけて取り除くことだ。しかし、膵臓がんでは最も早期の「ステージ0期」での診断が非常に難しく、ステージ0期の膵臓がんは“幻のがん”とも呼ばれている(第1回参照)。
膵臓がんでは「がんが膵臓にとどまり、大きさが2cm以下、かつリンパ節への転移が見られない」場合に、「ステージⅠ期」と評価される。一般に、がんではステージⅠ期が早期がんと考えられているが、膵臓がんの早期診断法の確立に尽力している東京女子医科大学消化器内科准教授の菊山正隆氏は「膵臓がんにおける早期がんは、がん細胞が膵管の粘膜(上皮)にとどまっているステージ0期だと私は考えています」と話す。それはなぜなのか。
「膵臓がんは、一般的に早期がんと呼ばれる2cm以下のサイズで見つかることはまれです。そして、膵臓がんはわずか数ミリでも他の臓器への転移を起こすので、たとえ2cmの段階で見つかっても、膵臓の外へと滲み出して進行がんになっているケースが少なくないのです。だからこそ、膵臓がんではステージ0期での診断が重要です」(菊山氏)
とはいえ、膵臓がんの診断に用いられるCT(コンピューター断層撮影装置)検査で膵臓がんが確認できるのは2cmから、MRI(磁気共鳴画像装置)検査でも1cmからだという。「それよりも小さながんは基本的に、通常の画像検査では見つけることはできません」(菊山氏)
膵臓がんが転移を起こしやすいのは、がんが発生する膵管の直径がわずか1mm程度しかなく、膵管の内側を覆う粘膜はその100分の1の10μm(マイクロメートル)ほどしかないからだ。胃や大腸であれば、粘膜にがんが発生しても、その外側には「筋層」と呼ばれる筋肉の層があるために、周辺の臓器に広がるまでには時間がかかる。しかし、膵管には防波堤の役割を果たす筋層がないため、がんは薄い粘膜をやすやすと突き抜けていってしまう。
ほかの臓器への遠隔転移や全身転移を起こせば、がんを切除して取り除くことはできなくなり、5年相対生存率(がんと診断されて治療を受けた人が5年後に生存している割合)は著しく低下する。実際、がん全体の5年相対生存率は64%であるのに対し、膵臓がんはわずか8.5%しかないのが現状だ。
これほど見つけにくく、進行も早い膵臓がんになる可能性があるのはどんな人か。どんなときに膵臓がんを疑っていち早く受診すればいいのだろうか。菊山氏が「特に注意すべき膵臓がんの危険因子」として挙げるのは、「血縁者が膵臓がん、あるいはそのほかのがんにかかっている(がんの家族歴)」「膵臓がんが発生する場所である膵管に、膵のう胞や膵管拡張がある」「膵炎などの膵臓の病気がある」「50歳以降に糖尿病を発症したか、急激な悪化があった」の4つだ。
- 親・兄弟姉妹・子どもをはじめ、血縁のある近親者に膵臓がんの患者がいる
- 近親者に大腸がん、乳がん、卵巣がんの患者がいる
- 本人に大腸がん、乳がん、卵巣がんの既往がある
- 超音波(エコー)やCT、MRIなどの画像検査で、膵臓の中や周囲に液体の入った袋が出現する「膵のう胞」や、膵管が太くなる「膵管拡張」を指摘されている
- 慢性膵炎がある
- 40歳以降で急性膵炎を経験した
- 家系に膵炎患者が多い(遺伝性膵炎)
- 50歳以降で急に糖尿病を発症した、あるいは治療中の糖尿病が急激に悪化した
それぞれの危険因子について、菊山氏に詳しく解説していただこう。
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