米国(おそらく世界中)の医療における最も深刻な問題の1つが、医療データの断片化とタコツボ化だ。この状況の主たる原因は、現在使われている電子健康記録(EHR、電子カルテ)システムにおびただしい種類があるためだ。EHRとは個人の医療データ、病歴、過去の治療記録などが含まれているシステムだ。ある患者に治療の機会があると、その人の情報はEHRシステムを通じてアクセスされ、医師は患者の病歴や背景に基づいた治療を施すことができる。
しかしながら、問題は世間には数多くのEHRや医療ITシステムが存在していることで、これは患者の記録が異なる医療機関を横断してアクセスできない場合があることを意味している。これは大きな問題だ。もし誰かが、何らかの理由でかかりつけでない病院に行くと、その病院がたまたま同じ情報システムを使用していない限り、担当医が同氏の過去の医療履歴にアクセスすることは困難あるいは不可能である。これは、患者の最適な治療法を決めたり、過去の健康履歴を見たり、患者を総合的に理解するうえで無数の問題を起こす原因となる。
長年にわたり、これは患者の予後を改善するための大きな障害であると医事評論家たちにより指摘されており、それに応じて多くの人がその解決策として、あらゆる医療機関が導入可能な共通システムを作ればいいのではないかと提案してきた。
これは、世界に名だたるテクノロジー企業、オラクルの共同創業者ラリー・エリソンが解決しようとしている問題そのものだ。同会社は医療分野のパイオニア的存在であり、そのクラウドコンピューティング技術と高度なシステムソフトウェアは複数の世界最大級の保健機関を支えている。
2021年末、オラクルは医療への影響力を高める同社のビジョンをさらに進めるべく、サーナーを約280億ドル(約3兆8000億円)で買収した。サーナーはEHRシステムの世界最大手の1つで、世界中の医療機関に利用されており、大量の患者記録と診療記録を管理している。これは、オラクルはこのデータのアクセスが可能になっただけでなく、このコンセプトを業界にとってより効果的なものにスケールアップするまたとない機会を得たことを意味している。
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